あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

松村正直編「戦争の歌」を読んで

2020-09-14 13:38:13 | Weblog

照る日曇る日第1464回


佐佐木信綱、森鴎外、与謝野晶子、斎藤茂吉、北原白秋、宮柊二などによる日清、日露から太平洋戦争までの戦争歌のアンソロジーを編者の松村選手が1首1首丁寧に解説を加えていく好個の企画である。

 にくにくしロシア夷を片なぎに薙ぎて尽さね斬りてつくさね 伊藤左千夫
 石しろき中国戦歿将士の墳草には咲ける撫子の花 土屋文明
 たたかひは上海に起り居たりかり鳳仙花紅く散りゐたりけり 斎藤茂吉
 戦争のたのしみはわれの知らぬこと春のまひるを眠りつづける 前川佐美雄
 泥濘に小休止すわが一隊すでに生きものの感じにあらず 宮柊二
 照らされてB二十九は海にのがれ高きホームに省線を待つ 近藤芳美
 大き骨は先生ならむそのそばに小さきあたまの骨あつまれり 正田篠枝
 水のへに到り得し手をうち重ねいづれが先に死にし母と子 竹山広

これらの歌と戦争責任の問題は三密四密に隣り合っているが、歌の値打ちは人の責任とはおのずから別の領分に属すから、うんと離して論じなけれいばならないのだろう。
しかしこういう超人居士のはどう評せばよろしいのだろう。困ったもんじゃ。

 よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむ  明治天皇


   よもの人みな体制に跪くなど波風に抗いさわぐや 蝶人
コメント
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