照る日曇る日第1471回
この本は昔文庫本で出たらしいのだが、アマゾンで結構な高値がついているのでいったいどんな小説なのだろうと長い間気になっていた。ところへ村上春樹の新訳が出るときいたので、得たりやおうと飛びついたわけ。
んで、どんな小説なのかというと、時は欧州でヒトラーやムッソリーニが台頭する1930年代の後半であるが、舞台はアメリカ南部の小さな町である。
そして例えば、作者自身を思わせる魂に音楽を孕んだ女性ミック、ホッパーのナイトホークスの生まれ変わりのような24時間営業の深夜バーの主人ブラノン、アナーキーな活動家ジェイク、黒人の伝道師のような医師コープランド、大天使ガブリエルのように英知に満ちた聾唖の男シンガー、などの個性的な人物が登場して、群像劇さながらの交通関係を繰り広げるのであるが、作者の主眼はもっぱら彼らの内面の孤独を描き尽くすことにある。
しかしてその実体は、文字通り「心は孤独な旅人」という題名の通りの内容なので驚くのだが、もっと驚くのは、そんな微妙で難しい中身を完璧に操って、とうとうゴールまで飛行させるという抜群の創作力を保持する作者が、たった23歳!の女性だということで、これには仰天してしまう。
本当に唯一無二の素晴らしい作家であり、翻訳者が告白しているように、じつに深く心を打たれる作品だ。
大リーグで活躍しているのはダル前田他の選手はみなダメですね 蝶人