あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

西暦2021年弥生蝶人映画劇場その2

2021-03-19 14:11:31 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2508~17

1)伊丹万作監督の「赤西蛎太」
志賀直哉の原作を1936年に伊丹万作が映画化。その洗練された脚色と演出、クラシックを多用した高橋半の音楽は素晴らしい。赤西と原田甲斐の2役を務める片岡千恵蔵の代表作でもある。一部映像が欠けているが鑑賞に支障はない。上山草人が按摩役で出ている。
2)田坂具隆監督の「土と兵隊」
火野葦平の小説を1939年に映画化したもの。大部隊が行軍するシーンはリアルだが、小説を読んでいないとどこでだれがどのように戦っているのかさっぱり分からない。
3)鈴木清順監督の「肉体の門」
田村泰次郎の原作を1964年に映画化。私の好きな富永美沙子と嫌いな野川由美子が出ていて、2人とも素っ裸でしばかれる。
4)野村芳太郎監督の「砂の器」
1974年製作の松本清張原作の映画。出雲地方にもズーズ―弁があるという事実に立脚した前半部分はスリリングだが、後半の犯人加藤剛の人物像が明快に浮かび上がらず、お涙頂戴のハンセン病になだれ込んで行く展開やラフマニノフもどきの3流ピアノ協奏曲の演奏などにいたく鼻ジロむ。
5)佐伯清監督の「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」
1966年の健さんのこのシリーズ第2弾のヤクザ映画。最初から義理と人情に縛られた殴り込みと敵討の世界なので、ともかく斬って斬って斬りまくるしかないのだが、この種の映画ではなんでもっと拳銃やライフルを活用しないのだろう。と子供の時から思っていた。
6)若松節朗監督の「空母いぶき」
かわぐちかいじの原作を大きく改編した2019年製作の架空海戦サスペンス。敵が中国から謎の某国に変わったのはそれこそ政治的配慮からだろうが、尖閣を巡る最近の情勢を頭に置きながらこれをみると、現場での感情的現実的流れの中でたちまち戦闘が戦争に拡大してしまう危険がいっぱい。これが恐らく現実だと思うとすごく怖い映画だ。
7)溝口健二監督の「雪夫人絵図」
丹羽文雄の原作を1950年に映画化。男の男性にどうしようもなく崩れてゆく弱い女の女性を木暮三千代があえかに演じて出色であるが、あれほど暴君だった夫(柳永二郎)が突如としてぐにゃぐにゃになってしまうのが不可解ずら。
8)矢崎充彦監督の「Go!」
ピザ屋の高校生の主人公が好きになった女性に会いたいと新宿から長崎まで突っ走る2004年のオートバイムービー。時々出てくる山崎努のライダーが面白い。
9)沖田修一監督の「モリのいる場所」
熊谷守一の晩年の暮らしを描いた2018年の作品。有名なアリの歩き方の観察が出てくるのはいいが、もっと大きなアリでないと見分けられないだろう。草むらの傍の小道にイモリがいるのもおかしい。
10)濱口竜助監督の「寝ても覚めても」
柴崎友香の小説を2018年に映画化したものだが、退屈かつ陳腐。今回のベルリン映画祭で賞をとったそうだが、いったいどこがいいんだか。

 セクハラで指揮棒折られしジェームズ・レヴァイン尾羽打ち枯らし77で死す 蝶人
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