あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

マギー・オファーレル著・小竹由美子訳「ハムネット」を読んで

2021-12-30 11:09:13 | Weblog

照る日曇る日第1691回

 

昔からシェークスピアにまつわる謎は多いが、彼の家族についての謎はもっと多い。

そこで作者はこの小説でもっぱら後者、とりわけ彼の妻アン・ハサウェイについての誤解を払拭しつつ、全く新しい女性像を力強い想像力を駆使して再創造しようとしている。

 

その結果は目覚ましいもので、“未来の大劇作家を篭絡した8歳年上の悪女”という従来のアン像は、知的で原初的な生命力に溢れ、海のものとも山のものとも知れぬ一介のラテン語教師を芸術の檜舞台に押し出す「愛の精霊」のごとき存在へと一変したのであった。

 

また愛児ハムネットのペストによる急死に大きな衝撃を受けた彼は、異名同義の名作「ハムレット」を創造することによって、2人の愛の結晶に永遠のいのちを付与したのであった。

 

        面舵をいっぱいにして日本丸師走の海に沈みゆくなり 

 

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