きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

米国従属経済 財界④ 貫かれた経済連携戦略

2013-06-07 21:52:04 | 経済・産業・中小企業対策など
米国従属経済 財界④ 貫かれた経済連携戦略

2000年代に入ると日米の財界・経済界は、両国の経済統合を目指すようになります。
2005年11月、ワシントンDCで開かれた第42回の日米財界人会議は、日米2国間の経済連携協定を締結することを求める共同声明を発表しました。
「政治及び安全保障分野において、両国は、日米安全保障条約を基本に、強固で協力的な同盟関係を維持している」とした上で、次のように述べました。
「日米関係がアジア太平洋地域及び世界で果たすべき重要な役割を考えれば、両国の経済関係が強化され、貿易、投資、金融関係の拡大によって経済関係の一層の緊密化をもたらす枠組みの構築に向けた具体的な施策が実施されることが必要と考える」「日米両国政府が、両国間のあらゆる経済活動を網羅する包括的で戦略的な経済連携協定(EPA)の締結こそが、両国の経済関係の深化を促す最も効果的な方法であると考える」
日米財界人会議が共同声明で日米EPAを求めたのは、このときが初めてのことでした。安倍晋三首相が環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を決める8年も前になります。



第45回日米財界人会議でスピーチする御手洗冨士夫経団連会長(当時)=2008年10月6日

国会議員を非難
45回目の日米財界人会議は08年10月、東京で開催されました。講演に立った経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長、当時)は「(日米EPAは)日米の政治・経済両面での連携関係を将来にわたり維持・発展させるための法的枠組み」と指摘。「東アジア地域と米国との橋渡しとなる」としました。
この会議では、同会議を主催するアメリカ側の組織である米日経済協議会が一冊の冊子をメディア関係者に配布しました。日本語と英語で書かれた冊子の題名は『日米経済統合』。副題に掲げられた言葉は、「競争力強化とアジアでの未来に向けて」でした。
冊子は日米EPAの締結が必要とされる背景について説明しています。
「アジアの現在の経済成長や統合の動き、また地域内における非常に重要な安全保障上の課題等を考えると、世界の長期的な繁栄・安定にとってアジアほど重要な地域はないと言える。
日米両国政府はアジアの重要性を認識し、日米関係―特に安全保障関係―がアジア太平洋の平和と安定の礎石となるよう長きにわたって協力してきた」
アジアでの軍事的緊張を高めている日米同盟をアジアの「平和と安定の礎石」との認識を示したのです。
一方、日米EPA締結に向けた障害についても言及。
「日本の統治機構は、政策決定者が農業のような政治的に困難な問題について合意するのを難しくしており、高水準な日米EPAの障壁となっている。特に日本の縦割行政は、非常に強力な官僚が主導権を握り、非常に限られた一部の利益団体を後ろ盾とする国会議員(たとえば農水族、建設族)の支持を受け、組織的に弱い内閣官房との組み合わせにより、意義ある進展を非常に困難にしている」
一国の行政機構のあり方に難癖をつけ、選挙で選ばれた国会議員をも非難の対象にするという露骨な内政干渉的姿勢です。

「ビジネス機会」
しかも冊子は、日米EPAで「米国企業に投資やその他のビジネス機会を与え競争を助長するため、短期的には国内企業の撤退・再編が生じる」とし、影響を受ける業界は、「EPAに反発するだろう」とまで述べています。たとえ日本国内で企業が倒産し、日本の国民経済に悪影響が出たとしても、米国企業に「ビジネス機会」を与えるために、日米両国の経済統合を推進すべきだと要求していたのです。
日米EPAは、アメリカ政権の思惑からTPPに姿を変形しました。しかし、TPPの本質は日米EPAです。
アメリカの議会調査局が5月1日に発表した日米関係に関する報告書は、「日本のTPPは、もし合意が達成されれば、事実上の日米経済連携になるだろう」と指摘しました。
日米財界人会議の戦略は着実に貫かれています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年6月7日付掲載


まさに、今進められているTPP交渉は、過去の日米EPA交渉の経過を踏まえたのもなんですね。
「たとえ日本国内で企業が倒産し、日本の国民経済に悪影響が出たとしても、米国企業に「ビジネス機会」を与えるために、日米両国の経済統合を推進すべきだ」とは、まさに自らの利益を優先して日本の国の経済を顧みない、まさに「無国籍企業」です。