安倍政権と金融ビジネス① 濡れ手で粟の国債売買
群馬大学名誉教授 山田博文さん
アベノミクス(安倍政権の経済政策)のもとで国債や民営化株を使った金融ビジネスが過熱しています。群馬大学名誉教授、山田博文さんに寄稿してもらいました。
アベノミクスは、株式バブルや国債バブルを発生させ、内外の金融機関と投資家に、巨額の利益を提供しています。
1京円の取引
アベノミクスの異次元金融緩和政策によって供給される過剰なマネーは、不況脱出の要となる国民生活や地域経済に向かわず、国債や株式などの証券市場に流入し、バブルを発生させ、ぬれ手で粟(あわ)のマネーゲームを横行させています。
国債の売買高は1・2京円という天文学的な規模に達しました。株式の売買高は約3000兆円ですから、その4倍の売買取引が行われていることになります(いずれも、2014年度の現物・先物の合計金額)。
近年、経済が金融化し、さらに金融が証券化すると、株式や国債などの価格変動にビジネスチャンスを見いだす取引が活発になりました。とくに政府が後ろ盾になる国債市場は、金融機関や投資家にとって、願ってもない大口のマネーゲームの舞台になっています。
なぜこれほどまで国債市場が膨張するのでしょうか。その背景は次のようになっています。
第一に、国債は、政府が発行しますから、株式のように、発行元の会社が倒産して紙くずになるリスクはまったくありません。したがって、最も安心して購入できる金融商品であり、投資物件です。
政府は、どんなに景気が悪化しても、税金に支えられ、国債の利子を遅延なく年2回支払い、元本も全額償還します。私たちの支払う税金は、景気が悪くても、生活が苦しくても、安くしてもらえません。この安定した税収を支えに、国債の利子と元本が支払われます。本年度は、一般会計から、約23兆円が国債所有者(最大の所有者は民間金融機関)に、支払われました。
第二に、発行額が巨額にのぼる国債という金融商品は、数兆円という大口の投資マネーを運用するのに、最適な市場だからです。
国債の発行残高は、日本のGDP(国内総生産)の2倍になり、900兆円に達しました。異次元金融緩和政策に支えられ、国債が増発されることは、金融機関や投資家サイドの手持ちのマネーに、新たな有効な投資物件と市場を提供します。
とくに先行き不透明な低成長下、国債は、内外の金融機関や投資家(ヘッジファンド、政府系ファンド、機関投資家など)の資金運用の受け皿になり、活発な売買取引が展開され、1京円を超す巨大市場になりました。
国債を発行する財務省=東京・霞が関
大銀行に巨利
1京円の国債売買市場から巨額の利益(国債売買益)を得ているのは、三菱UFJ・三井住友・みずほの3大フィナンシャル・グループです。3グループの国債売買益の合計額は年間1000億円を超え、重要な収益源泉になっています。この利益は実体経済の成長とは無関係のマネーゲームによるものです。
「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざす安倍政権は、大盤振る舞いする「景気対策」の財源調達のため国債を増発し、財政赤字と国民負担を深刻化させています。
国債の発行は税金の先取り消費であり、最終的に税金で返済されます。国債が累積してくると、国債投資家(所有者)への国債の元利金の支払いが増大していきます。その結果、国民生活関連予算が削減され、消費税率の引き上げが繰り返される、といった国民の「1億総債務者」への転落をどう回避するのか、応能負担をどう実現するか、それが問われています。
(つづく)(4回連載の予定です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月3日付掲載
国債残高が900兆円に対して国債の取引額が1京円(10,000兆円)ってことは、国債残高の約11倍が常に売買されているってこと。
その売買で、1000億円を稼ぐ。取引のわずか0.1%ですが美味い利益です。
群馬大学名誉教授 山田博文さん
アベノミクス(安倍政権の経済政策)のもとで国債や民営化株を使った金融ビジネスが過熱しています。群馬大学名誉教授、山田博文さんに寄稿してもらいました。
アベノミクスは、株式バブルや国債バブルを発生させ、内外の金融機関と投資家に、巨額の利益を提供しています。
1京円の取引
アベノミクスの異次元金融緩和政策によって供給される過剰なマネーは、不況脱出の要となる国民生活や地域経済に向かわず、国債や株式などの証券市場に流入し、バブルを発生させ、ぬれ手で粟(あわ)のマネーゲームを横行させています。
国債の売買高は1・2京円という天文学的な規模に達しました。株式の売買高は約3000兆円ですから、その4倍の売買取引が行われていることになります(いずれも、2014年度の現物・先物の合計金額)。
近年、経済が金融化し、さらに金融が証券化すると、株式や国債などの価格変動にビジネスチャンスを見いだす取引が活発になりました。とくに政府が後ろ盾になる国債市場は、金融機関や投資家にとって、願ってもない大口のマネーゲームの舞台になっています。
なぜこれほどまで国債市場が膨張するのでしょうか。その背景は次のようになっています。
第一に、国債は、政府が発行しますから、株式のように、発行元の会社が倒産して紙くずになるリスクはまったくありません。したがって、最も安心して購入できる金融商品であり、投資物件です。
政府は、どんなに景気が悪化しても、税金に支えられ、国債の利子を遅延なく年2回支払い、元本も全額償還します。私たちの支払う税金は、景気が悪くても、生活が苦しくても、安くしてもらえません。この安定した税収を支えに、国債の利子と元本が支払われます。本年度は、一般会計から、約23兆円が国債所有者(最大の所有者は民間金融機関)に、支払われました。
第二に、発行額が巨額にのぼる国債という金融商品は、数兆円という大口の投資マネーを運用するのに、最適な市場だからです。
国債の発行残高は、日本のGDP(国内総生産)の2倍になり、900兆円に達しました。異次元金融緩和政策に支えられ、国債が増発されることは、金融機関や投資家サイドの手持ちのマネーに、新たな有効な投資物件と市場を提供します。
とくに先行き不透明な低成長下、国債は、内外の金融機関や投資家(ヘッジファンド、政府系ファンド、機関投資家など)の資金運用の受け皿になり、活発な売買取引が展開され、1京円を超す巨大市場になりました。
国債を発行する財務省=東京・霞が関
大銀行に巨利
1京円の国債売買市場から巨額の利益(国債売買益)を得ているのは、三菱UFJ・三井住友・みずほの3大フィナンシャル・グループです。3グループの国債売買益の合計額は年間1000億円を超え、重要な収益源泉になっています。この利益は実体経済の成長とは無関係のマネーゲームによるものです。
「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざす安倍政権は、大盤振る舞いする「景気対策」の財源調達のため国債を増発し、財政赤字と国民負担を深刻化させています。
国債の発行は税金の先取り消費であり、最終的に税金で返済されます。国債が累積してくると、国債投資家(所有者)への国債の元利金の支払いが増大していきます。その結果、国民生活関連予算が削減され、消費税率の引き上げが繰り返される、といった国民の「1億総債務者」への転落をどう回避するのか、応能負担をどう実現するか、それが問われています。
(つづく)(4回連載の予定です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月3日付掲載
国債残高が900兆円に対して国債の取引額が1京円(10,000兆円)ってことは、国債残高の約11倍が常に売買されているってこと。
その売買で、1000億円を稼ぐ。取引のわずか0.1%ですが美味い利益です。