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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

どうみる改悪派遣法 座談会① 制度の根本を破壊

2015-11-26 13:04:49 | 働く権利・賃金・雇用問題について
どうみる改悪派遣法 座談会① 制度の根本を破壊

先の通常国会で労働者派遣法が改悪され、不安定な働き方の増加が懸念されています。改悪法の内容と問題点、雇用破壊を許さないたたかいの展望などをめぐって、井上久全労連事務局長、小池晃日本共産党副委員長(参議院厚生労働委員)、鷲見賢一郎弁護士に語り合ってもらいました。司会は内藤豊通「しんぶん赤旗」国民運動部長。

―今回の労働者派遣法の改悪は、これまでと比較できない大改悪といわれていますね。
法律の基本原則なくし、企業の野放し利用めざす
井上 労働者派遣には臨時的・一時的な業務に限定するという大原則があります。これを事実上なくして、企業が低賃金の労働者派遣を野放しで使えるようにしました。具体的には派遣制限期間を一応3年に設定していますが、派遣先企業は3年で人を入れ替えればいつまでも派遣を使いつづけることができる。労働組合など労働者の過半数代表の意見を聴取すればくりかえし延長できる。まさに労働者派遇の根幹を変える法制定以来の大改悪だと思います。
鷲見 まさしく法制定以来の大改悪です。労働者派遣法は1985年にできて、99年に対象業務を広げたわけですが、今度は派遣期間制限を事実上なくし、常用代替防止(常用労働に派遣を入れてはならない)という法の原則に正面から手をつけた大改悪ですよ。
私たちは、これまでのたたかいで、99年のときには業務単位で1年の期間制限をつけ、それを超えたら派遣先が派遣労働者を優先的に直接雇用する努力義務をかちとりました(40条の3)。03年のときも、期間制限を1年から3年まで延ばし、製造業務派遣を解禁する改悪がされましたが、1~3年を超えて派遣を使っているときについて、派遣先の直接雇用義務をかちとっています(40条の4)。今回、そういうものをことごとく取り払ってしまったんです。



全労連事務局長  井上 久さん
日本共産党副委員長(参院議員) 小池 晃さん
弁護士  鷲見(すみ) 賢一郎さん


「みなし制度」の施行のがれ、厚労省文書で成立急ぐ
小池 まちがいなく歴史的大改悪です。大原則だった臨時的・一時的業務に限る、常用雇用代替にしない担保をなくした。まがりなりにもかちとってきた派遣先に課せられていた直接雇用義務をほとんど消滅させたということですよね。
違法派遣があった場に派遣先が労働者に直接雇用を申し込んだとみなす、いわゆる「みなし雇用制度」は形のうえでは残ったけれど、ほとんど適用されなくなるようにした。労働者の声でかちとってきた成果を全部奪うという意図が明確な法律だと思います。
井上 「みなし雇用制度」は3年前に派遣法にもりこまれたのですが、施行されるのがことしの10月1日だったわけです。違法派遣に苦しんでいた多くの派遣労働者から施行が待ち望まれていましたが、今回の法改悪で期間制限が事実上牌なくなり、「みなし」制度川帆が適用されなくなりました。厚生労働省が「10・1ペーパー」といわれる文書を出して、施行日前の法案の成立を後押ししたのは許せませんよ。
小池 衆院審議が始まる段階で厚労省が、10月1日の前に法改正されないと「訴訟が乱発する」とか「大量の失業者がでる」といったデマを並べた、いわゆる「10・1ペーパー」をつくって一部国会議員に回し、法律を早く成立させる必要があるとふれ回ったことが明らかになったわけです。
私も国会で「これは派遣業界の、派遣業界による、派遣業界のための改悪だ」と批判したけれども、これだけ露骨なものがあるのかとあきれるぐらい露骨でした。
井上 最終盤に改悪法の施行日を9月30日ぎりぎりに設定して、強引に成立を強行しました。「みなし」制度が施行される1日前です。さんざん期間制限違反をしてきた違法企業を免罪することを厚労省がやった。労働行政のあり方にかかわる大問題だったと思います。厚労省と派遣会社はパートナーだということがはっきりしたように思います。
小池 厚労省と派遣業界のつながりは強いです。人材派遣協会の専務理事ポストは、5代続けて厚労省キャリア官僚OBの天下りで占めていました。それから厚労省がパソナをはじめとする人材派遣業界に100億円規模で事業委託をしている。カネとヒトによる癒着があるんですよね。
鷲見 私は今回のたたかいをふりかえってみて、世論の点ではわれわれは勝ったんじゃないかと思うんです。日経新聞の調査で68%の人が派遣法「改正」に反対だと答えています。大改悪はされましたが、この成果を確信にして改悪派遣法のもとでのたたかいに足早にとりくむ必要があると思っています。



派遣法の大改悪を止めようと唱和する人たち=5月20日、国会前

次につながるたたかいの成果も
労働界と全野党が反対、政府の矛盾つき運動強化

小池 そうですね。法律の中身がひどいから、全労連、連合が最後まで廃案の旗を掲げてたたかいぬいた。法律家のみなさんも反対を貫いた。全労協も含めた雇用共同アクションという形で幅広い人たちがたたかった。最終盤の論戦が戦争法と同時並行でおこなわれたなかで、参院段階では維新も含めて全野党が足並みそろえて反対の態度をとりました。そういう意味で次につながるたたかいになったというのが私の印象です。
井上 法律が成立した後に厚労省がつくったパンフやリーフレットなどをみると運動の成果を感じます。「派遣で働く皆さまへ」という文書があります。最初に「派遣労働という働き方、およびその利用は、臨時的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、常用代替を防止するとともに、派遣労働者のより一層の雇用の安定、キャリアアップを図るため、労働者派遣法が改正されます」と書いています。実際は逆ですが、そう書かざるを得なかったと思います。
鷲見 付帯決議が39項目つきました。そのなかには、私たちの声を無視できなかったと思われるものもあります。第一項の2番に「画接雇用が労働政策上の原則である」といい、派遣元と派遣先のそれぞれに「派遣労働者の正社員化に向けた取組を講じさせる」
と書いています。安倍晋三首相、塩崎恭久厚労相は、正社員化への道が開けるようにすると何回もいっていたから、こう書かざるを得なかった。
小池 安倍首相は「正社員を希望する方にその道が開けるようにするのが、今回の法案だ」「派遣労働者の待遇改善を図るものだ」と繰り返しました。そういうごまかしを繰り返したことによって起こった矛盾が、付帯決議や省令、指針などに出てきているわけです。
井上 よく分析して、改悪法を利用して職場で正社員からの置き換えをすすめさせないとりくみや、派遣労働者を組織化して、均等待遇の実現、直接雇用に切り替える運動を両輪ですすめようと思っています。
(つづく)(4回連載の予定)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月25日付掲載


派遣労働は「臨時的・一時的な業務に限定する」という大原則を根本から取り崩した今回の派遣法改悪。
労働者や法律家の運動により、39項目もの付帯決議。
コメント (2)
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