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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安倍政権と金融ビジネス④ 外国人支配がモノ作り壊す

2015-11-07 19:00:59 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍政権と金融ビジネス④ 外国人支配がモノ作り壊す
群馬大学名誉教授 山田博文さん

「株式会社ニッポン」の最大株主は、いまや外国人投資家です。その所有比率は発行済み日本株の31・7%(2014年度)に達し、日本の金融機関(27・4%)や企業(21・3%)の所有比率を上回りました。しかも、外国人投資家のターゲットは日本の代表的な企業や金融機関の株式です。経団連役員の出身母体である大企業や金融機関の株式の30%台は外国人投資家に保有されています。
最大株主が誰になるかは、企業経営のあり方、ひいては経済社会のあり方に大きな影響を与えます。
財閥の持ち株会社が解体された戦後日本の最大株主は個人株主でした。高度経済成長期をへて、金融機関と企業との間で株式の相互持ち合いが進展し、六大企業集団の結束と経済支配が強化されると、最大株主は金融機関になりました。
しかし、1990年代後半のアメリカ主導のビッグバン改革によって、日本の金融開国とアメリカ型金融経済システム(「カジノ型金融資本主義」)が浸透すると、外国人投資家の対日投資も活発化し、その流れは安倍政権下で加速します。
その結果、企業経営のあり方も変容してきました。



東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区

株主を最優先
第一に、外国人投資家は、「物言う株主」(アクティビスト) として、株主総会で企業経営のあり方について積極的に発言し、終身雇用や年功序列といった日本的経営を非効率的だとして退け、ROE(株主資本利益率)を最大化する経営を要求します。
企業利潤の配分では、株主への配当金と役員報酬を増やすために、賃金が削減されます。6200万人の働く日本国民に成果主義と競争原理が強要され、労働条件が悪化し、貧困と格差が拡大していきます。最近の日本の貧困率(16・1%)は、経済協力開発機構(OECD)諸国の中でもトップグループになった「貧困大国ニッポン」を象徴しています。
このような野蛮な資本主義的経営は、利潤追求を最優先する日本の大企業や金融機関の望むところでもあり、賃金を削減し、非正規雇用を拡大し、株主への配当金と経営者の報酬、企業の内部留保金などが増大しました。
株主への配当金や役員報酬など、短期的な目前の利益を優先するようになると、品質のよいものづくりに不可欠の長期的な設備投資が停滞します。これは、「モノづくり大国ニッポン」の崩壊をもたらします。

カジノ型市場
第二に、株式売買市場の主役も外国人投資家になりました。
株式売買高の60~70%は、ファンドや欧米の大口投資家などの外国人投資家が占めています。ウォール街経由でやってきた外国人投資家は、元本が保証される安全な預貯金をえり好みする日本人の個人金融資産を、株式や債券など価格変動リスクにさらされるアメリカ型の投資の世界へ誘導しようとしています。
情報通信技術を利用した現代の金融ビジネスは、最大の国際金融センターのアメリカ・ニューヨークを拠点に、コンピューターのグローバルなネットワークを利用し、国境を越えて展開されています。取引速度も1000分の1秒といった超高速取引(HFT)が株式売買高の60%台のシェアを占めています。
日経平均株価すら、わずか数分で乱高下し、株式市場はまさに「カジノ型金融資本主義」を映し出し、マネーゲームの大舞台になっています。
野蛮な資本主義を容認し、対米従属的な安倍政権は、ドイツとならぶ「モノづくり大国ニッポン」の崩壊を加速させています。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月6日付掲載


日本の大企業の多くは株式を外国資産家に牛耳られています。
モノ作り日本を応援するのではなく、いかに短期に利益を上げるかにかかっています。