憲法施行70年 先駆性を考える 第1部 9条は生きている⑧ 平和主義の先駆的到達点
各国との比較
「憲法の条文上で戦争放棄と戦力不保持をともに明示する国として、日本が他国とは異なる位置にある」
東北大学名誉教授で憲法研究者の辻村みよ子氏は、著書『比較憲法新版』で、こう指摘します。辻村氏は、各国憲法の平和条項を比較検討して七つに分類(表)。日本国憲法の徹底した平和主義は、世界で画期的意義をもつとしています。
平和主義の国際比較
(辻村みよ子『比較憲法 新版』をもとに作成)
“惨害”の反省
9条は世界の平和主義の先駆的到達点です。
戦争違法化の世界的流れが本格化するのは、第1次世界大戦(1914~18年)後です。国際連盟(1920年)の規約や28年の「パリ不戦条約」で、それまでの「戦争は国家の権利」とする考え方を改め、「国家の政策の手段としての戦争を放棄する」(パリ条約)と宣言しました。
戦争違法化の歴史に詳しい小林啓治京都府立大教授は、第1次大戦後、国際連盟で毒ガスなどの残虐兵器や空爆の禁止など、今日的にも重要な課題が議論されたことに注目します。
戦争違法化の流れに反し逆流を持ち込んだのが、31年の日本軍による「満州事変」と33年のド罐イツでのヒトラー内閣の成立でした。日本、ドイツ、イタリアは日独伊三国(軍事)同盟を結び、第2次世界大戦の放火者となり、第1次大戦をはるかに上回る惨害をもたらしました。その反省から生まれたのが戦後の国際秩序と日本国憲法です。
小林氏は、「家族の死、極端に統制された生活、戦争末期の物資不足の悲惨。戦時体制の体験による国民の厭戦(えんせん)感は大きかった。単に憲法の条文ができただけではなく、軍事的制度が解体し、社会への軍事的抑圧がなくなったということは、国民にとって歓迎すべき変化でした」と述べます。9条2項の戦力不保持は、国民の生活と自由の基礎でした。
小林啓治京都府立大学教授
派兵への警告
小林氏は、安倍政権による戦争法強行や改憲の動きを「戦前と同じ質の、軍事的価値を容認し、ある場合には優先するもの」と批判。それに対抗するため「(日本の)憲法を守り発展させる運動を、さらに国際的に展開することも必要」と強調します。
辻村氏は著書『比較憲法新版』で、最も徹底した平和主義憲法といいながら、「れっきとした軍隊としての自衛隊が、日米安全保障条約のもとで海外派遣されている実態がある」と警告。“実態に合わせ憲法を変えるべきだ”という主張に対し次のように述べます。
「世界の多数の国が平和条項を憲法に明記し、非核や軍縮の方向性を明らかにしている現在であるからこそ、日本国憲法がそのもっとも徹底した理想型を世界に示していることの意味を重視すべきであろう」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年1月12日付掲載
世界各国の憲法を見ると、第1次世界大戦後の「パリ不戦条約」に端を発して、程度の差こそあれ「戦争はいけないよ」って書かれてある。
しかし、戦争放棄・戦力不保持を明示する国は日本しかない。
各国との比較
「憲法の条文上で戦争放棄と戦力不保持をともに明示する国として、日本が他国とは異なる位置にある」
東北大学名誉教授で憲法研究者の辻村みよ子氏は、著書『比較憲法新版』で、こう指摘します。辻村氏は、各国憲法の平和条項を比較検討して七つに分類(表)。日本国憲法の徹底した平和主義は、世界で画期的意義をもつとしています。
平和主義の国際比較
(辻村みよ子『比較憲法 新版』をもとに作成)
抽象的な平和条項を置く国 | フィンランド、インド、パキスタンなど |
侵略戦争・征服戦争の放棄を明示する国 | フランス、ドイツ、大韓民国など |
国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、国際協調を明示する国 | イタリア、ハンガリーなど |
中立政策を明示する国 | スイス、オーストリアなど |
核兵器等の禁止を明示する国 | パラオ、フィリピン、コロンビアなど |
軍隊の不保持を明示する国 | コスタリカなど |
戦争放棄・戦力不保持を明示する国 | 日本 |
“惨害”の反省
9条は世界の平和主義の先駆的到達点です。
戦争違法化の世界的流れが本格化するのは、第1次世界大戦(1914~18年)後です。国際連盟(1920年)の規約や28年の「パリ不戦条約」で、それまでの「戦争は国家の権利」とする考え方を改め、「国家の政策の手段としての戦争を放棄する」(パリ条約)と宣言しました。
戦争違法化の歴史に詳しい小林啓治京都府立大教授は、第1次大戦後、国際連盟で毒ガスなどの残虐兵器や空爆の禁止など、今日的にも重要な課題が議論されたことに注目します。
戦争違法化の流れに反し逆流を持ち込んだのが、31年の日本軍による「満州事変」と33年のド罐イツでのヒトラー内閣の成立でした。日本、ドイツ、イタリアは日独伊三国(軍事)同盟を結び、第2次世界大戦の放火者となり、第1次大戦をはるかに上回る惨害をもたらしました。その反省から生まれたのが戦後の国際秩序と日本国憲法です。
小林氏は、「家族の死、極端に統制された生活、戦争末期の物資不足の悲惨。戦時体制の体験による国民の厭戦(えんせん)感は大きかった。単に憲法の条文ができただけではなく、軍事的制度が解体し、社会への軍事的抑圧がなくなったということは、国民にとって歓迎すべき変化でした」と述べます。9条2項の戦力不保持は、国民の生活と自由の基礎でした。
小林啓治京都府立大学教授
派兵への警告
小林氏は、安倍政権による戦争法強行や改憲の動きを「戦前と同じ質の、軍事的価値を容認し、ある場合には優先するもの」と批判。それに対抗するため「(日本の)憲法を守り発展させる運動を、さらに国際的に展開することも必要」と強調します。
辻村氏は著書『比較憲法新版』で、最も徹底した平和主義憲法といいながら、「れっきとした軍隊としての自衛隊が、日米安全保障条約のもとで海外派遣されている実態がある」と警告。“実態に合わせ憲法を変えるべきだ”という主張に対し次のように述べます。
「世界の多数の国が平和条項を憲法に明記し、非核や軍縮の方向性を明らかにしている現在であるからこそ、日本国憲法がそのもっとも徹底した理想型を世界に示していることの意味を重視すべきであろう」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年1月12日付掲載
世界各国の憲法を見ると、第1次世界大戦後の「パリ不戦条約」に端を発して、程度の差こそあれ「戦争はいけないよ」って書かれてある。
しかし、戦争放棄・戦力不保持を明示する国は日本しかない。