2017年度予算案の焦点④ 雇用 「働き方改革」唱えるが
厚生労働省の2017年度予算案(一般会計)社会保障関係費のうち、雇用関連は433億円です。同省の社会保障費のわずか0・1%。16年度比では1271億円減、74・6%減の大幅な削減です。雇用保険の国庫負担率を大幅に引き下げたためです。
雇用保険の国庫負担率は、失業給付の場合、雇用保険法の本則で25%と定められています。現在「暫定措置」として13・75%に下げられていますが、さらに17年度から3年間、2・5%に引き下げます。16年3月、早期に本則に戻すよう国会で付帯決議があがったにもかかわらず、安倍晋三政権は国庫負担を大幅に削減します。
また、17年度予算案で労働保険特別会計は3兆5469億円(16年度比201億円増)です。
朝、職場へ向かう人たち=東京都内
事業主助成も 生涯派遣に道
予算案は、安倍政権が掲げる「働き方改革」に重点を置いています。「非正規雇用労働者の正社員転換・同一労働同一賃金の実現に向けた待遇改善の取り組み」に608億円(232億円増)を計上しました。事業主に対するキャリアアップ助成金の拡充が主な内容です。
その一方で、安倍政権は労働者派遣法を改悪し「生涯派遣」「正社員ゼロ」に道を開きました。また、「多様な働き方」の名で不安定な非正規雇用を拡大しています。「待遇改善」を言うのであれば、雇用のルール破壊をやめるべきです。
予算案は「多様な働き方の普及・拡大」に7・5億円(0・2億円増)をあてます。勤務地や職種を限定した「限定正社員」や短時間正社員などを増やすため、企業向けセミナーの開催、就業規則の作成支援などを行います。
「長時間労働の是正」には85億円(8億円増)を計上しました。月80時間を超える残業が疑われる事業所への監督強化や「三六協定」の「適切な締結」の徹底などに10億円をあてます。労働基準監督官は50人の純増です。
勤務間インターバルを導入する中小企業に助成金を出しますが、対象は就業規則の作成やタイムカードの改修など導入費用への補助金にすぎません。その一方、安倍政権は、残業代を払わずに長時間働かせることができるよう労働基準法の改悪を狙っています。
最賃引き上げ抜本策はなし
「最低賃金・賃金引上げ等の支援強化」として100億円(73億円増)を盛り込みました。人事評価を改善して2%以上賃上げした中小企業に50万円を助成する制度を新設するなど「環境整備」をめざします。ただ、助成は「経営力強化・生産性向上」への支援が中心です。「いますぐどこでも時給1000円以上の最賃」を求める労働者の要求にこたえるにはほど遠いものです。最賃引き上げには社会保険料の負担減免や賃金助成など思い切った中小企業支援が欠かせません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年1月20日付掲載
最低賃金引き上げのための中小企業支援も限られた予算になっている。
その一方で、「多様な働き方」の名で不安定な非正規雇用を拡大しています。
厚生労働省の2017年度予算案(一般会計)社会保障関係費のうち、雇用関連は433億円です。同省の社会保障費のわずか0・1%。16年度比では1271億円減、74・6%減の大幅な削減です。雇用保険の国庫負担率を大幅に引き下げたためです。
雇用保険の国庫負担率は、失業給付の場合、雇用保険法の本則で25%と定められています。現在「暫定措置」として13・75%に下げられていますが、さらに17年度から3年間、2・5%に引き下げます。16年3月、早期に本則に戻すよう国会で付帯決議があがったにもかかわらず、安倍晋三政権は国庫負担を大幅に削減します。
また、17年度予算案で労働保険特別会計は3兆5469億円(16年度比201億円増)です。
朝、職場へ向かう人たち=東京都内
事業主助成も 生涯派遣に道
予算案は、安倍政権が掲げる「働き方改革」に重点を置いています。「非正規雇用労働者の正社員転換・同一労働同一賃金の実現に向けた待遇改善の取り組み」に608億円(232億円増)を計上しました。事業主に対するキャリアアップ助成金の拡充が主な内容です。
その一方で、安倍政権は労働者派遣法を改悪し「生涯派遣」「正社員ゼロ」に道を開きました。また、「多様な働き方」の名で不安定な非正規雇用を拡大しています。「待遇改善」を言うのであれば、雇用のルール破壊をやめるべきです。
予算案は「多様な働き方の普及・拡大」に7・5億円(0・2億円増)をあてます。勤務地や職種を限定した「限定正社員」や短時間正社員などを増やすため、企業向けセミナーの開催、就業規則の作成支援などを行います。
「長時間労働の是正」には85億円(8億円増)を計上しました。月80時間を超える残業が疑われる事業所への監督強化や「三六協定」の「適切な締結」の徹底などに10億円をあてます。労働基準監督官は50人の純増です。
勤務間インターバルを導入する中小企業に助成金を出しますが、対象は就業規則の作成やタイムカードの改修など導入費用への補助金にすぎません。その一方、安倍政権は、残業代を払わずに長時間働かせることができるよう労働基準法の改悪を狙っています。
最賃引き上げ抜本策はなし
「最低賃金・賃金引上げ等の支援強化」として100億円(73億円増)を盛り込みました。人事評価を改善して2%以上賃上げした中小企業に50万円を助成する制度を新設するなど「環境整備」をめざします。ただ、助成は「経営力強化・生産性向上」への支援が中心です。「いますぐどこでも時給1000円以上の最賃」を求める労働者の要求にこたえるにはほど遠いものです。最賃引き上げには社会保険料の負担減免や賃金助成など思い切った中小企業支援が欠かせません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年1月20日付掲載
最低賃金引き上げのための中小企業支援も限られた予算になっている。
その一方で、「多様な働き方」の名で不安定な非正規雇用を拡大しています。