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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

NHKと政治を問う⑤ 改革は市民の視線で~会長選考に各層の声を

2014-02-15 15:01:07 | 政治・社会問題について
NHKと政治を問う⑤ 改革は市民の視線で~会長選考に各層の声を

醍醐 聰(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表、東京大学名誉教授)

就任記者会見で公共放送に関する無知をさらけ出した籾井勝人氏のような人物がなぜNHK会長に選ばれるのか?その背景を探っていくと、会長候補に選ばれる側の問題と、会長候補を選ぶ側の問題がそれぞれあることがわかる。

財界人は不適格
まず、選ばれる側の問題から考えよう。近年、会長任命機関である経営委員会の委員がおのおの候補者を推薦し、その中で経営委員会が合意し、かつ、就任を受諾した人物を会長に任命するという手続きが踏襲されている。このように経営委員が会長候補者の推薦権を独占すると、財界に太く広い人脈を持つ経済界出身の経営委員が推す候補者が選考に残り、「大きな組織を動かした手腕」が高く評価され、その結果、公共放送に疎い人物が会長に任用されることになる。
しかし、財界人は個人的資質以前に、二つの意味でNHK会長職には不適格と考えられる。一つは、利益最大化という単一の目的達成のためにトップダウンで組織を率いた力量が評価される財界人の資質は、「異なる意見の出会いの場」としてのNHKのトップにはなじまないという点である。もう一つは、財界は法人税の減税、消費税の増税等の税制改革や原発再稼働などをめぐって強大な利害団体として行動する。他方、NHKは特定の利害に左右されない自主自律を生命線としている。
となると財界人をNHKの会長に選べば、深刻な利益相反が生じ、政治的公平・公正が求められるNHKの土台が揺らぐことになる。



放送の自主・自立を守ろうとNHK前で職員にビラを配る「放送を語る会」の人たち=1月14日、東京・渋谷区

システムの欠陥
他方、選ぶ側の問題とは、衆参両院の同意を経て内閣総理大臣が会長任命機関の構成員である経営委員を任命するという仕組みが抱える自己矛盾である。
なぜなら、議院内閣制を採るわが国では国会の同意は政府与党の意思を意味する。安倍首相の親密者が経営委員に選ばれてしまうのも、国会の同意という形式のもとで政府与党の意向が貫徹された証左である。そもそも権力を監視するメディアの議決機関の構成員を、メディアによって監視されるはずの政府与党が選ぶのは自己矛盾である。
以上のような現在のNHK会長選考を改める第一歩は会長候補者推薦権を法的根拠もなしに経営委員が独占している状況を打破することである。かといって、いきなり数千万人の視聴者に他薦自薦を募るわけにもいかない。まずはメディアに関係の深い団体(関連学会、日弁連、各種文化団体など)に推薦を求め、その中から当面は経営委員会が会長を選考するという仕組みにしてはどうかというのが目下の私見である。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月13日付掲載


「そもそも権力を監視するメディアの議決機関の構成員を、メディアによって監視されるはずの政府与党が選ぶのは自己矛盾」と指摘されるのはごく自然の事。
国民の中からといっても、雲をつかむような感じなので、「まずはメディアに関係の深い団体(関連学会、日弁連、各種文化団体など)に推薦を求め、その中から当面は経営委員会が会長を選考するという仕組み」という提案も一理ある。



NHKと政治を問う④ 制作現場の抵抗に期待~良心に従う番組作りを

2014-02-14 13:24:56 | 政治・社会問題について
NHKと政治を問う④ 制作現場の抵抗に期待~良心に従う番組作りを

戸崎 賢二(元NHKディレクター)

「従軍慰安婦は戦争地域にはどこにもあった」、秘密保護法は「これが必要だとの政府の説明だから、とりあえず受けて様子を見るしかない」など、政権に近い考え方を持つ人物が、膨大なニュース、番組を作り続けるNHKのトップに座ったとき、制作現場はどうなるだろうか。NHKを注視する市民にとって、これは目下最大の関心事である。
1月31日の衆院予算委員会で、籾井勝人NHK会長は、質問に答えて「NHKの放送番組の編集権は会長にあります」と答えた。
そのあと、「個人の考えを番組に反映させることはない」、と述べたが、欺隔的な発言Mである。会長が持つとされる放送番組の最終的な「編集権」に、会長個人の考え方が反映しないなどとは誰も信じないであろう。



「問われる戦時性暴力」番組改変で開かれた緊急会見=2005年1月18日、国会内

表に出ない判断
たとえば、仮に、日本軍「慰安婦」のような制度が、戦争地域にどこにもあった、というのなら、それが本当かどうか、証言や歴史研究の成果をもとに検証する番組を作りたいと、気骨あるディレクターやプロデューサーが企画したらどうだろう。特定の右翼政治家と同じ主張を持つ会長が認めるはずがないではないか。
実際には、会長から権限を分掌された放送総局長や局長ら幹部が判断するだろうが、その判断は会長の意向にそったものになるはずだ。こうした経過は決して表面には出ず、市民は監視できない。となれば、この特異な会長が職にとどまる間、現場の見識と抵抗が重い意味を持ってくる。
2001年の教育テレビ番組「問われる戦時性暴力」には、安倍晋三官房副長官(当時)ら右派政治家の圧力がかかり、NHK幹部がその意図を忖度(そんたく)して日本軍「慰安婦」証言を大幅に削除するなどした。
のちにこの事件を審議したBPO放送倫理検証委員会は、その「意見」(09年4月)の中で、「内部的自由」(現場制作者の思想信条の自由)の議論の必要性を強調している。
この番組では、「慰安婦」の真実を番組で伝えることが現場制作者の倫理であり良心だったが、「意見」は、こうした放送倫理を根拠に業務命令を拒否できるのか、という重大な問題を提起した。その上で、「通例、事業体の最終的な意志決定は、経営者や上司に属するとされているが、言論・報道・表現活動にかかわる組織において、そのまま当てはめることができるのか」という傾聴すべき疑問を提出している。

「編集権」に抗し
右翼が経営委員に任命され、政権寄りの人物が会長になる、というかつてない状況の中で、NHKにおける「内部的自由」の保障は、きわめて切実かつ緊急の課題にならざるを得ない。
そもそも「編集権」とは、戦後、民主化を求める新聞労働者を抑圧するために考え出された概念で、筆者は有害無益と考えている。放送法上にも「編集権」という語句はなく、ましてや会長が持つなどという規定はない。現場制作者は、ニュース担当であれ、番組担当であれ、取材した現実から学んで到達した認識をニュースや番組に結実させる。ここに揺るがぬ強さが生まれる。
今の政権も卑小なトップもいつかは退場するだろう。形式的な「編集権」などに屈せず、自らの良心にしたがって番組を作り続ける自覚を今こそ持ってほしい。この自覚は視聴者市民の知る権利に対する崇高な義務でもあるからだ。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月12日付掲載



実際に、番組を制作するスタッフたちが、良心に基づいて、不偏不党で、真実を伝え、問題点を検証する番組を作ることは、「編集権」なるもので制限できないはずだ。
上層部の圧力に屈せずに、番組を制作する気概が求められる。

NHKと政治を問う③ 「独立性」外務省と覚書~世界で信頼されるBBC

2014-02-13 13:45:25 | 政治・社会問題について
NHKと政治を問う③ 「独立性」外務省と覚書~世界で信頼されるBBC

門奈 直樹(立教大学名誉教授、ジャーナリズム論)

公共放送にはもともといくつかの構成要件があります。「あらゆる地域の人にまんべんなく届く」「社会的弱者に特別の関心を払わなければならない」ことのほか、特に重要なのは「政府と距離を置かなければならない」ことです。
籾井勝人会長は就任会見で、「国際問題、領土問題では」と断りながらも「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と述べました。NHKを公共放送とはみなさず、「国営放送」ととらえているに等しい認識です。
籾井氏の領土間題を含む「国際放送」論は、「国策宣伝放送」観に立脚しています。放送をプロパガンダ(特定の政策などの宣伝)、宣伝戦の一環としてとらえているところに大きな危険性があります。そうであれば国際的信用は得られません。公共放送が行う国際放送の理念を考え直す必要があります。



英国公共放送のBBC

「最初に選択」
近年、英国を中心にパブリック・デプロマシー(広報外交)の重要性が叫ばれています。
英国の公共放送の国際放送であるBBCワールドは、「正確さと独立性、権威ある、偏りのないニュースで世界の放送局の中で最初に選択される」という大きな目標を掲げています。臭体的には、「信頼性、開放性、公共性、創造性…の推進」「文化、言語、国境を越えた考えの交換の場を提供」などです。
その達成のため、BBCと英国外務省は、次のような覚書を交わしています。その主な点は以下です。
①BBCワールドサービスは編集・経営について完全な独立性を持つ②BBCは外務省が規定する対外放送サービスを提供する上で、最も効果的方法を独自で決定するー。これらのうち特に重要なのは「編集の独立性」です。
BBCワールドサービスの世界における影響力の源泉は、これまでの活動で培われた信頼であり、公平という評価です。
BBCが世界的信頼を得ているのは理由があります。米英を中心とした2003年からのイラク戦争をめぐっては、政治権力からさまざまな攻撃を受けましたが、「真実と正確さ、公共の利益への貢献、公正と見解の多様性、独立性、説明責任」の五つの原則を掲げた報道で、ジャーナリズムの価値を高めたことはその一例です。

大きな岐路に
いま国際放送のあり方を、BBCの精神とも比較して考えることは、籾井発言で揺れるNHKが、どういう道を歩むべきかの方向を探る大きな参考となるでしょう。
放送法が定める「健全な民主主義の発達」「放送による表現の自由の確保」をどう実現していくのか、いまのような体制やシステムでいいのか、NHKは大きな岐路に立たされています。(談)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月11日付掲載


NHKは、公共放送で「政府と距離を置く」必要があるのですが、視聴者の方が「国営放送」と言われても、「そうかな」って思ってしまうほど企画や放送内容が変質してきていると思います。
視聴者が直接NHKへ意見を上げて、NHKを本来の公共放送の立場に立たせていくことが大事でしょうね。

NHKと政治を問う② 強引手法に反撃世論を~政府介入・干渉の歴史

2014-02-12 17:44:24 | 政治・社会問題について
NHKと政治を問う② 強引手法に反撃世論を~政府介入・干渉の歴史

松田 浩(元立命館大学教授 メディア研究者)

1973年小野吉郎会長の実現は、前田義徳会長の4選を嫌った田中角栄首相の画策だった。小野会長は、角栄の郵政大臣時代の事務次官。ロッキード汚職で保釈中の田中被告を自宅に見舞った責任を問われて任期半ばで辞職した。
このときは日放労(NHK労組)と市民団体が小野の罷免を求め経営委員会に百万を超える署名を突きつけ、工藤信一良経営委員長(毎日新聞顧問)は市民団体代表の「政治的輸入人事を絶つため、今後、会長はNHK内部から起用を!」という申し入れを“受け止め”ている。以後、坂本朝一、川原正人とNHK内部から会長を選ぶ流れができたのは、このたたかいの成果だった。



NHK放送センター

財界人の会長
だが、今回同様、政権の画策による財界人会長が実現する。88年の池田芳蔵会長(三井物産椙談役)である。推進役は、経営委員長だった磯田一郎(住友銀行会長)。ときの竹下登首相を取り巻く財界人グループ「竹友会」の幹事役をつとめた財界実力者の磯田が重要な役割を演じた構図も今回とどこか似ている。だが、77歳の高齢に加えて放送の公共性に無知な池田は、国会でもトンチンカンな答弁を繰り返し、ついに引責辞任に。磯田も経営委員長を退いた。
ちなみに、このとき副会長として池田会長の補佐役を務めた島桂次は、意図的に池田が国会で失言を重ねるよう仕向けて会長の後釜にすわったが、その島も自民党竹下派と気脈を通じた政治記者出身の海老沢勝二(2代のちに会長)に足をすくわれる形で失脚する。
島会長失脚後、経営委員会は元最高裁判事の伊藤正巳・東大名誉教授を次期会長にいったんは選びながら、政府筋からの反対で「本人から辞退」の形で事態を収拾する醜態を演じている。しかし、代わって選ばれた川口幹夫会長(NHK専務理事)は、就任あいさつで全職員に「タブーを捨てよ」と呼びかけるなど、リベラルなリーダーシップが組織内に自由闊達な気風を生んだ。

常に翻弄され
その川口体制が十分、体質改善の成果を上げることなく、海老沢体制に代わったのは、政府・与党対策が重要なウエートを占めるNHK指導部のなかで、芸能畑出身の川口会長が報道出身の海老沢副会長に多くを依存せざるをえなかった事情があったとみるむきも多い。いずれにしても、NHKの歴史はつねに政治に翻弄された歴史だった。
だが、今回の安倍政権ほどの露骨な人事介入の例はみたことがない。経営委員会に息のかかった“靖国派人脈”を組織的に送り込み、それをテコに“お眼鏡”にかなった会長を据えたのだから、やり方が乱暴である。
気がかりなのは、ここまでファッショ的手法を使って集団的自衛権行使や憲法改悪への執念を燃やす安倍政権の強引さだ。秘密保護法の強行成立や今回のようなNHK支配への布石は、その流れの重要な一コマとして、広く反撃の国民世論を起こしていかねばならないと思う。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月9日付掲載


NHKの人事には、常に時の政権の介入があったのですが、安倍政権のあからさまな介入は異常です。
決して許してはなりませぬ。

NHKと政治を問う① 「自律」への見識と気概~放送法が求める資質

2014-02-11 19:37:38 | 政治・社会問題について
NHKと政治を問う① 「自律」への見識と気概~放送法が求める資質

「NHK会長として不適格ではないか」と、辞任や罷免を求める声が広がっています。会長就任会見での籾井勝人(もみいかつと)氏の発言をどうみるのか。NHKと政治の関係はどうあるべきか。識者が読み解きます。

松田 浩(元立命館大学教授 メディア研究者)

今回の「籾井発言」の最大の問題点は、籾井勝人NHK新会長が放送法の求める公共放送の使命とその最高責任者たる会長の重責について、何も理解していないことである。そのような資質と見識を欠く人物を会長に選んだ経営委員会の責任もまた、きびしく間われている。



就任会見する籾井勝人新会長=1月25日

歴史への反省
放送法の求める公共放送の使命とは何か。それは権力からも、また商業主義の論理からも「自立」して国民の「知る権利」に応え、文化・ジャーナリズムの大衆メディアとして、日本に「健全な民主主義」を育てることである。放送法は、国民が受信料を負担して支える非営利の公共放送と、広告収入を財源とする民放の二つのタイプの放送事業体の競争的共存を通じて、上記の放送の公共的機能をより多元的、かつ十全な形で実現させようと意図している。公共放送は、教育チャンネル(Eテレ)を含めてテレビ4波、ラジオ2波を擁する「基幹的全国放送機関」として別格の位置づけを与えられている。
では、その最高責任者であるNHK会長に求められる資質とは何か。それは「不偏不党」「政治的公正」「自律」の見識と気概だといっていい。「不偏不党」と「自律」の核心は、政府からの「独立」にほかならない。
現・放送法の理念の根底には、戦前のNHKが「国家の放送」として政府に支配され、国民を侵略戦争に動員した歴史への反省がある。国民主権のもと、NHKは「国民のための公共放送」として戦後、再出発した。
だから、公共放送が国民の「知る権利」に応え、自由な討論の広場(民主的世論形成の場)として「健全な民主主義に資する」(第-条「目的」)ためには、言論・報道機関として権力からの「自立」が不可欠だし、「政治的公正」が大前提となる。
とりわけ重要なのは、言論・報道機関の担い手としての公共的理念と自覚が、トップから報道・制作現場の末端に至るまで共有されることである。文化創造とジャーナリズムのメディアとして、自由闊達(かったつ)で民主的な職場環境は欠かせない。

信頼性を失墜
放送法第1条が「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」と“放送に携わる者の職責”を明示していることの意味が、ここでは肝要だ。会長には、公共放送の理念の体現者、リーダーとしての資質と高い見識が求められているのである。
その最重要な見識と資質を欠落させ、公共放送NHKへの信頼性を内外で著しく失墜させた籾井会長の責任は重大だ。多くの視聴者団体や市民から辞任勧告や経営委員会への罷免要求(放送法第55条)が突きつけられたのは、当然過ぎるほど当然だった。それはまた、権力の介入に大きく地を残した経営委員やNHK会長の現行選任システムの持つ欠陥を、抜本的に改革することの重要性を緊急の課題として提起している。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年2月8日付掲載


最高責任者であるNHK会長に求められる資質とは何か。それは「不偏不党」「政治的公正」「自律」の見識と気概だといっていい。「不偏不党」と「自律」の核心は、政府からの「独立」だということだ。
その会長が、「政府が右という事を左とは言えない」などという発言をすることは許されない。
NHKは財政的には受信料で支えらてているにも関わらず、経営委員会の構成に政府がかかわっているというシステム自体に問題があると思う。