きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

伊方原発避難訓練 検証形だけ 不安消えず 「再稼働のアイバイづくり」

2015-11-11 21:25:17 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
伊方原発避難訓練 検証形だけ 不安消えず
「再稼働のアイバイづくり」


四国電力伊方(いかた)原発(愛媛県伊方町)の重大事故を想定した原子力総合防災訓練が8、9の両日、住民と、国や県、四電など100余の機関が参加して行われました。愛媛県や伊方町は訓練を前に再稼働に同意しています。避難計画に実効性はあるのか「検証を行う」などとされた訓練。行政の手順の確認ばかりが優先され、住民避難の具体的な検証とは程遠いものでした。(砂川祐也、三木利博)


四国電力伊方原発=11月9日、愛媛県伊方町



原発の横を!?
訓練は、震度6強の地震が発生し、伊方原発で原子炉の冷却機能が失われ、最終的に放射性物質が外に漏れ出すという想定で行われました。
国や県の計画では、伊方原発で重大事故が発生した場合、原発から5キロ圏(PAZ)に住む伊方町の約5500人は放射性物質が放出する前に即時避難し、5~30キロ圏(UPZ)の5市3町の約11万8千人は放射線量に応じて避難します。伊方原発の西側5キロ以遠の佐田岬半島に住む約4900人も、陸路での避難に半島の付け根にある原発の真横を通らなければならないため、5キロ圏と同じタイミングで避難する「予防避難エリア」になっています。
半島は細長く長さ50キロに及びます。原子炉から放射性物質が漏れ出し、陸路での避難が難しくなった場合、計画では「予防避難エリア」は、大分県の佐賀関港まで船で片道70分かけて住民を運ぶとしています。
9日午前中、佐田岬半島の先端近くの三崎港から海上自衛隊の艦船と定期運航されているフェリーを使った大分県への避難訓練が行われました。
港では、松山市の市民団体「原発さよなら四国ネットワーク」が「津波で海路避難できません!」の横断幕を持って抗議行動をしていました。「伊方原発をとめる会」の和田宰事務局次長は、港を出ていく海上自衛隊艦船で訓練参加者が外に出ているのを見ながら、「被ばくするという臨場感もないし、緊迫感がないこと甚だしい」と指摘します。



一時終結所の体育館でヨウ素剤を受け取る訓練参加者の住民=11月9日、愛媛県伊方町


避難先の佐賀関港に到着し、フェリーから降りてくる訓練参加者と誘導する自治体の職員=大分市

県外へ船で!?
フェリーには11地区から51人が放射能汚染の検査をして乗船。港に来る前の一時集結所で被ばくを防ぐヨウ素剤を配布されました。「こういう事態を想定しないといけないということ自体が大変なことです。でも、大きな地震が起きたら、家からほんとうに港に来られるのかどうか。伊方原発の再稼働には反対です」と長山松子さん(69)は話します。「非常用持出袋」を背負っていました。
フェリーは70分で大分県の佐賀関港に到着。住民はさらに大型バスに乗り換えて1時間ほどで大分市内の仮避難所に移動し、健康状態の確認がありました。
「初めて県外避難の訓練でしたが、実際の事故があった場合、県外にどれだけの期間、避難することになるのか、今日はとんぼ返りでしたから。訓練では分刻みで行動しましたが、トラブル、事故など想定できないことに不安が残ります」と話すのは塩崎幸生さん(57)。地区から4人が参加したという中村孝さん(67)は「原発の方へ向かって逃げるのは無理。逃げるなら海しかない。もし伊方原発で事故が起きたらどうなるのか心配。その心配を解消するのが訓練だと思うが、今回、大きく役立つことはなかったです」といいます。
佐田岬半島には、小さな地区が離れて点在しています。避難の際には地区ごとに集まり、さらに複数の地区が集まる一時集結所へ移動します。そこから半島を出る避難経路を進み、またさらに大きな避難所へ移動します。
9日の訓練では、陸路をバスで避難する訓練も行われました。各地区の区長や役員ら43人が一時集結所の瀬戸総合体育館に集合。バス5台に分乗して70キロ余りの道のりを約1時間半かけ、松山市に近い松前(まさき)公園体育館まで移動しました。
訓練に参加した元三机(みつくえ)区長の川田健二さん(67)は「この一時集結所に集まるまでが大変」だといいます。地区内に住む何百人という住人を4、5人の地区の役員で集めるよう計画されているといい、「どうやって何百人という住人を集めて、さらにここまで移動してくればよいのか、実際に動いてみないとわからない」と話していました。
また、地区と地区をつなぐ車道は「一本道と考えていい」といいます。その道を走ると、傾斜に囲まれ、「急傾斜地崩壊危険区域」の看板が複数ありました。
「放射能が漏れ出すような災害が起きれば、孤立する可能性の方が高い。実質、屋内退避しかないのでは」
2日間の訓練を視察した日本共産党の田中克彦愛媛県議は「今回の訓練は、行政が手順を確認するだけの形だけの訓練だったとみてとれます。一番肝心な住民の避難は呉体的に検証されていません。特に佐田岬半島の住民は、被災状況に応じた複数ケースの避難指示に対応せねばならず、難しい状況に立たされています。大規模な訓練といいながら、実態は再稼働のアリバイづくりといっても過言ではないと思います」と話していました。
今回の訓練の指針となった避難計画は10月6日の原子力防災会議で「具体的かつ合理的」だとして安倍首相の了承を得ていました。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月10日付掲載


まさに、「いちよう訓練しました」と言うだけのアリバイ作りですね。
伊方原発に重大事故が起こるということは、地震や津波で海上ルートの避難は困難。がけ崩れで陸上ルートの避難も困難。
なかなか訓練どうりにはいかないと思います。

「国民連合政府」提案で見える面白さ 小林節・慶応大学名誉教授

2015-11-10 17:02:24 | 平和・憲法・歴史問題について
「国民連合政府」提案で見える面白さ 小林節・慶応大学名誉教授

憲法学者の小林節・慶応大学名誉教授は全国各地で行っている講演で、日本共産党が提案した「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」と、その実現のための野党の選挙協力などについて語っています。3日、高知市内で開かれた「高知九条の会」と「女性九条の会」主催の講演会での講演(要旨)を紹介します。


講演する小林節・慶応大学名誉教授=11月3日、高知市

憲法9条2項は、陸海空軍を持たないだけでなく、交戦権を持たないと規定している。交戦権は国際法上の戦争ができる資格をいうわけであり、交戦権がない以上、戦争を切り結ぶ法的資格はありません。
戦争できない国が、戦争する国になる法律をつくった。これを「戦争法」と呼んでどこが悪いのか。一番わかりやすいじゃないですか。何でこれが「平和安全法」なんですか。それこそレッテル貼りですよ。
(共産党の)「国民連合政府」の提案で、他の野党党首や幹部、地方の幹部、連合の幹部の人たちと話をすると、面白いものが見えてきます。
いま民主党の細野豪志政調会長は「政策が違う政党と連立を組むことはできない」といっています。けれども、戦争法案が騒ぎになり始めたとき、公明党の山口那津男代表は“自民党と公明とは別の党だから、政策が違って当たり前”といいました。しかも、(自公)連立合意の中には「憲法」という合意がありません。憲法観が違っても、自民党と公明党は(連立で)権力の座についている。少なくともわれわれはプライドがありますから、そこまでは許されない。権力のために権力を求めることはしません、ちゃんとした大義がいります。

政策をうんぬんいう前に、国の憲政の仕組みそのもの、政策を論じる前提が壊されている。主権者国民のものである仕組みが、自公連立政権に奪われてしまっている。それを取り返す。われわれは憲法を、主権を、まず取り戻すために団結する。これ以上の大義はないではないですか。
それに対して「政策が違う党とは…」なんて、何かっこつけているのですか?といいたい。政治というのは、妥協・調整の業じゃないですか。互いに議論し合って、5割・5割、あるいは3割・3割で手を打つのが政治です。
まずは、議会が機能するように連立で政権を取り戻したあと、政権を壊さないように、みんなが見ている前で議論をして、政策を詰めていけばいい。
私の教え子に、長島昭久代議士がいます。民主党の中で「一番安倍総理に近い」といわれ、(彼は)“共産党と手を組むと保守層が逃げる”という。民主党は「第2自民党」として出発した。つまり政権交代可能とは、自民党と基本的な国策が変わらないという前提。しかし、民主党が政権を失ったときに、保守層は民主党から去り、自民党に戻りました。だから“共産党と組むなと保守層が逃げる”というのはデマです。言らわれたら言い返してください。
いま「安倍ちゃん、気持ち悪い」という風が吹いている。いままで政治にかわらなか
かった層、選挙で棄権していた層が、アンチ安倍で投票する。民主党が共産党と手を組めば「これは政権がとれる」と、さらに勢いがつくと思います。
労働組合の大幹部には、「共産党とつきあうと、組織をとられちゃう」という人もいました。すごい実感があった。それで僕は「いいじゃない、とられたら」と言いました。
だって人間には結社の自由がある。誰と手を組むかは自由。自由競争で負けたら仕方がない。取り返せばいいじゃないかと。でもやられた体験があり、やり返す自信がないのですね。そのとき一言。
「安倍ちゃんに日本をのっとられているのだから、それを取り返すために、苦手な共産党でも、もっと楽な相手でしょ」といいました。すると、「ああ、なるほど」となりました。

新しい政治を迎えるときに何が起きるか。
「第三極」への期待はもうなくなっています。最近の地方選挙を見てみると、「共産党がんばるね」「あの頑固さが良い」と。私のまわりにも、「共産党だけはいや」といっていた人が、「冷静に考えたら共産党のほかに入れるところない」と言い出している人がいます。「安倍政権気持ち悪い」「共産党がんばれ」というのが続いています。
来年7月の参院選挙で32ある1人区では、がまんして各党の取り分を決め、何回も議論して、全力でささえあう。そこで20もとれば、参議院が逆転できます。参議院の問責決議は、法的拘束力はないが政治的拘束力はあるので、やめなかった閣僚はいないのです。そういう形で追い込んで、どこまで逃げても3年以内に総選挙はくる。参院の1人区で野党共闘が成功した実感を持って、衆議院の295の小選挙区で野党が共闘すれば、もっととりこぼしが少なくなると思います。政権交代です。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月10日付掲載


共産党アレルギーに対して、小林さんの「安倍ちゃんに日本をのっとられているのだから、それを取り返すために、苦手な共産党でも、もっと楽な相手でしょ」という対応は的を得ていますね。
参院選挙の1人区で選挙協力が成功すれば、総選挙での小選挙区でも協力できる。

安倍政権と金融ビジネス④ 外国人支配がモノ作り壊す

2015-11-07 19:00:59 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍政権と金融ビジネス④ 外国人支配がモノ作り壊す
群馬大学名誉教授 山田博文さん

「株式会社ニッポン」の最大株主は、いまや外国人投資家です。その所有比率は発行済み日本株の31・7%(2014年度)に達し、日本の金融機関(27・4%)や企業(21・3%)の所有比率を上回りました。しかも、外国人投資家のターゲットは日本の代表的な企業や金融機関の株式です。経団連役員の出身母体である大企業や金融機関の株式の30%台は外国人投資家に保有されています。
最大株主が誰になるかは、企業経営のあり方、ひいては経済社会のあり方に大きな影響を与えます。
財閥の持ち株会社が解体された戦後日本の最大株主は個人株主でした。高度経済成長期をへて、金融機関と企業との間で株式の相互持ち合いが進展し、六大企業集団の結束と経済支配が強化されると、最大株主は金融機関になりました。
しかし、1990年代後半のアメリカ主導のビッグバン改革によって、日本の金融開国とアメリカ型金融経済システム(「カジノ型金融資本主義」)が浸透すると、外国人投資家の対日投資も活発化し、その流れは安倍政権下で加速します。
その結果、企業経営のあり方も変容してきました。



東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区

株主を最優先
第一に、外国人投資家は、「物言う株主」(アクティビスト) として、株主総会で企業経営のあり方について積極的に発言し、終身雇用や年功序列といった日本的経営を非効率的だとして退け、ROE(株主資本利益率)を最大化する経営を要求します。
企業利潤の配分では、株主への配当金と役員報酬を増やすために、賃金が削減されます。6200万人の働く日本国民に成果主義と競争原理が強要され、労働条件が悪化し、貧困と格差が拡大していきます。最近の日本の貧困率(16・1%)は、経済協力開発機構(OECD)諸国の中でもトップグループになった「貧困大国ニッポン」を象徴しています。
このような野蛮な資本主義的経営は、利潤追求を最優先する日本の大企業や金融機関の望むところでもあり、賃金を削減し、非正規雇用を拡大し、株主への配当金と経営者の報酬、企業の内部留保金などが増大しました。
株主への配当金や役員報酬など、短期的な目前の利益を優先するようになると、品質のよいものづくりに不可欠の長期的な設備投資が停滞します。これは、「モノづくり大国ニッポン」の崩壊をもたらします。

カジノ型市場
第二に、株式売買市場の主役も外国人投資家になりました。
株式売買高の60~70%は、ファンドや欧米の大口投資家などの外国人投資家が占めています。ウォール街経由でやってきた外国人投資家は、元本が保証される安全な預貯金をえり好みする日本人の個人金融資産を、株式や債券など価格変動リスクにさらされるアメリカ型の投資の世界へ誘導しようとしています。
情報通信技術を利用した現代の金融ビジネスは、最大の国際金融センターのアメリカ・ニューヨークを拠点に、コンピューターのグローバルなネットワークを利用し、国境を越えて展開されています。取引速度も1000分の1秒といった超高速取引(HFT)が株式売買高の60%台のシェアを占めています。
日経平均株価すら、わずか数分で乱高下し、株式市場はまさに「カジノ型金融資本主義」を映し出し、マネーゲームの大舞台になっています。
野蛮な資本主義を容認し、対米従属的な安倍政権は、ドイツとならぶ「モノづくり大国ニッポン」の崩壊を加速させています。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月6日付掲載


日本の大企業の多くは株式を外国資産家に牛耳られています。
モノ作り日本を応援するのではなく、いかに短期に利益を上げるかにかかっています。

安倍政権と金融ビジネス③ 年金使い株価つり上げ

2015-11-06 22:05:03 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍政権と金融ビジネス③ 年金使い株価つり上げ
群馬大学名誉教授 山田博文さん

経済成長と不況脱出に失敗した安倍政権は、株高を求める大企業・海外投資家・富裕層の期待をつなぎとめるため、さまざまな株価つり上げ策を繰り出しています。
第一に、安倍政権の異次元金融緩和政策は、国債市場だけでなく、株式市場にも日銀マネーを大量に供給しています。日銀は、株式市場にマネーを供給する株価指数連動型上場投資信託(ETF)を年間約3兆円も買い入れ、株価つり上げ策を実施しています。これは、中央銀行による株価操作の疑いがもたれています。
しかし、日銀の株価つり上げ策には限界があります。株価に連動するハイリスク商品のETFが日銀のバランスシート(貸借対照表)に累積(約6兆円)すると、中央銀行と日本円に対する信認を殿損(きそん)します。国債の場合は、期限が来れば、政府が100%償還しますが、ETFの場合は、日銀が市場で売却しなくてはバランスシートからリスク資産を消すことができません。日銀が大量のETFを売りに出せば、株価は暴落してしまいます。

市場に17兆円
そこで、第二に、株価頼みの安倍政権が目をつけたのは、国民の年金積立金です。年金積立金は、インフレとも無縁の長期貯蓄性資金です。資金規模も巨額であり、大口の株式需要を発生させ、長期間にわたって、株価をつり上げることができるからです。
2014年10月、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用委員会は、137兆4769億円の積立金運用の基本ポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を見直し、リスク資産の株式への運用割合を、国内外ともに従来の12%から25%へ大幅にアップしました。
この見直しによって、国内株式市場へ投入される年金マネーは17兆8720億円ほど増額されるので、株式へ大口の需要が発生し、株価がつり上げられました。
事実、15年3月末現在で、国内株式への年金積立金の運用割合は、すでに22%まで上昇し、金額にして31兆6704億円の株式投資が行われています。まさに「クジラ」と言われる年金積立金などの株式投資マネーであり、株価のつり上げに大きく貢献しています。



安心できる年金を求めてデモ行進する年金者一揆の参加者=10月16日、東京都千代田区

下落のリスク
しかし、株価が暴落すると国民の老後の資金も枯渇します。
実は、年金積立金を利用した株価つり上げ策は今に始まったことではありません。年金積立金は、1990年の株式バブル崩壊で、不良債権を抱えこんだ銀行を救済するために利用されました。
日経平均株価が1万8000円を下回ると、年金積立金が、日経平均株価を構成する225の銘柄を指値(さしね団株式の売買を委託する際に顧客が指定した希望の価格)で購入し、株価が上昇すると、すかさず銀行が保有株を売却し、株式の含み益を実現し、株式売却益を獲得しました。この売却益が不良債権の償却に使用されました。大手銀行21行の株式売却益は、93年度、約3兆円でしたが、不良債権の償却額も同額の3兆円でした。
株価つり上げ策に利用され、価格変動リスクのある株式を抱え込んだ年金は、株価が下落すると巨額の累積赤字(2002年度2兆5877億円、08年度9兆3481億円)を抱えこんでしまいました。
その結果、将来の老後の暮らしすら脅かされることになりました。保険料率が引き上げられ、年金支給年齢は65歳に先延ばしされつつあります。
(つづく)

{しんぶん赤旗}日刊紙 2015年11月5日付掲載


企業年金基金もリターンの高い株式運用につぎ込む企業が続出。破たんした基金もあるといいます。
国民年金や厚生年金は国が支払いを保証しているとはいえ、積立額が減れば年金支給額も減らされることになりかにません。
リスクのある運用はやめるべきです。

安倍政権と金融ビジネス② 民営化株は「金鉱脈」に

2015-11-05 22:03:51 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍政権と金融ビジネス② 民営化株は「金鉱脈」に
群馬大学名誉教授 山田博文さん

安倍政権下で、郵政民営化が再稼働し、4日、郵政民営化株式の最初の売出が実施されます。財務省の皮算用では、以後何回か実施する株式売出によって、約10兆円の株式売却収入金をもくろんでいるようです。

郵政で10兆円
10兆円といえば、消費税5%分で国庫に納入された税収額に匹敵します。もし、増税というやり方で10兆円を調達すると、国民の反発は避けられませんが、国有資産の郵政事業を民営化し、その株式を売却して集めるなら、目先の国民負担を避け、反発を抑えられる、と判断しています。
各国で民営化株式の売出が盛んになったのは、財政赤字が深刻化し、新自由主義・市場原理主義の「小さな政府」が台頭してきた1980年代後半以降でした。社会保障や福祉を敵視した米国のレーガン、英国のサッチャー、日本の中曽根各政権のもとで、世界的に民営化が加速していきます。
民営化株式の売出が行われる背景は次のようなことです。
第一に、財政赤字に悩む政府が、国民の反発をともなう増税というやり方を避けながら、新しい財源を獲得することです。
わが国では、当時の日本電信電話公社を民営化(株式会社NTT)し、1987~88年にかけ3回実施され、約10兆円を調達したNTT株式の売出です。この10兆円のほとんどは、枯渇していた国債の償還財源に繰り入れられました。
郵政民営化株式の場合、売却収入金合計のうち、4兆円分は、東日本大震災の復興財源とする計画です。
株式売却収入金の多少は、日経平均株価の水準に左右されるため、多額の株式売却収入金を求める安倍政権と財務省は、日本銀行を巻き込んだ超金融緩和政策、年金積立金の株式投資の増額など、多様な株価つり上げ策を展開しています。



日本郵政本社=東京・霞が関

大口の手数料
第二に、郵政民営化株式の売出は、内外の証券会社に、国家相手の大口の株式ビジネスを提供します。株式は、アジア・アメリカ・ヨーロッパで販売され、売出人の財務省は、内外の11社を主幹事証券とし、なかでも野村証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、アメリカのゴールドマン・サックス、JPモルガンの4社を中心となるグローバルコーディネーター(証券取り扱い業務を担う主幹事証券会社の中の中核となる会社)に指名しました。証券会社全体に支払われる初回の引受手数料は、245億円に達するようです。
その後も、証券会社は株式の売出のたび、手数料を獲得します。NTT株式の場合は3000億円を越える手数料を獲得したようです。証券会社は、株式の売買市場でも、各種の手数料を獲得できます。大型の民営化株式の売出は、各国の証券会社にとって、株式ビジネズを活性化する「金鉱脈」になっています。
株式の売出は、証券会社と株式を購入する投資家の意向に沿うことで実現されます。投資家の目的は利益の追求にあります。株式市場に依存した財政資金の調達は、投資家の利益を反映する政策を要望され、また株価に連動する不安定な財政を余儀なくされます。
実体経済の低成長下で、株式バブルを発生させている安倍政権は、民営化株式の売却収入金をもくろむ政府・財務省と、株式の引受、売出、売買などの株式ビジネスから利益を得ようとする内外の証券会社と投資家の利益に貢献しています。
民営化された郵政事業では、市場原理主義が浸透し、リストラとコスト削減が断行され、高い株価と配当金が求められます。これは利用者の国民に、高い手数料負担、地方の小規模郵便局の閉鎖を招いています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年11月4日付掲載


郵政の株式売買。1回限りですが10兆円は政府にとっては美味しい話しでしょうね。
新たに市場に出回る株価の安定した郵政株。証券会社にとっては手数料を稼ぐ絶好のツールでしょうね。