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昨日は、「がん放置療法のすすめ」から、前立腺がんに関する情報でした。
今日は、同上、子宮頸がんについてです。
P.74 イタリアで行われた臨床試験で、1b~2a期の患者を二グループに分け、
片方に広汎至急全摘術、他方に放射線(単独)治療を行いました。
結果、両者の生存期間や再発率は同じで、
合併症は放射線治療のほうが少なかったのです。(Lancet 1997;350:535)
なお、2b期以上(つまり、3期、4期まで)は、その臨床試験の対象となっていません。
これは欧米では、2b期以上のスタンダードは放射線(単独)治療だからです。
欧米では、3期、4期はもちろん、2b期も手術不能とされています。
手術手技自体は実行可能なのですが、がん細胞を取り残してしまうからです。
ところが日本では、2b期でも広汎子宮全摘術を行う婦人科医が圧倒的多数です。
しかし、がん細胞は取りきれない。そのために術後に、放射線を骨盤全体に照射する。
それでようやく放射線(単独)治療と同等程度の再発率や生存期間になるのですが、
ただでさえ甚大な手術の合併症(術後肺炎、骨盤内膿瘍、腹壁ヘルニア、腸閉塞など)は、
放射線を併用したことにより、一層ひどいことになります。(たとえば、リンパ浮腫)
P.75 要するに子宮頸がんの手術は、術後に放射線を照射して、
ようやく放射線(単独)と再発率や生存期間が同じになるわけです。
だったら、最初から放射線(単独)治療にすべきです。
イタリアの試験結果が出てから、もう15年になろうとしています。
しかし日本ではいまだに1b期にも 2a期にも広汎子宮全摘術がスタンダードとされている。
しかも術後に放射線照射をする頻度も高い。
そこまで患者を危険にさらし、現実に数多くの合併症をつくっているのです。
P.76 なぜ日本だけが前述のような科学的根拠=エビデンスを無視し、
1b期~2a期の子宮頸がんに手術を行っているのでしょうか。
しかも患者に手術のみを勧める、というのは犯罪的ですらあります。
広汎子宮全摘術を続ける婦人科医たちは、
医学的良心をどこかに置き忘れているのではないでしょうか。