

P.179 芸術というのは、心のかたちが目に見える、ということですけど、
目に見えるものが演者の年齢とともに変化しても、
たとえば悲しい風情だとして、観るほうにもその悲しみは伝わる。
演者の心のかたちに寄り添うことができる。
うまい人っていうのは、心をかたちにする、
心とかたちというものの間の経路のつくりかたがうまういから名人なんですよ。
だから声が出なくたってかまわない。
観るほうも、筋書きは大体わかっていますから。
お能という芸術は、「かたち」というものを通して、
演者の心を観客が受け取るようなものですからね。
桃紅さんは、演者が「老いて声が出なくなったり」「足もよろよろ」していても、
「円熟した演者というものは、こころをかたちにして、観客に伝える」という。
でも、ちゃんと但し書きが……
やっぱり名人になる人はちがう。
まあよほど、観るほうにも心の用意がいるのかもしれません。
そうですよぉ、私のレベルでは、「心の用意」というか、
その分野の「教養」というものが無いので、どうしても、
いわゆる「名人芸」とか「超絶技巧の踊りや歌唱」を求めてしまいます。
なかなか寛容にはなれません。
その出し物の内容を知り尽くし、その作者の意図も知り尽くしていれば、
その日の演者の調子や、技量も分かり、別の楽しみも味わえるのでしょう。
つまり、観る側も、それなりの勉強や修行が必要??
たしかに・・・・・そう思います。(不承不承……)
でも、私のミュージカルは、無垢のこどもや、初めての鑑賞者でも
それなりに楽しんで貰える内容を目指しています。
そして、Repeaterの方々には、前回と比べて、どう感じられたのか?
期待に沿えたのか? 次の作品にも足を運んでいただけるのか?
期待と不安の中で、10月末の蒲田公演に向けて、練習を進めています。