尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「維新の会」と右派勢力②

2012年07月01日 00時50分07秒 | 政治
 「維新の会」と右派勢力の接近が目立ってきたと思うけど、そのことについて。橋下氏は「人権派弁護士批判」で売り出したし、自民党から府知事選への出馬をオファーされて政界に入った人である。その後も教員組合や公務員組合を敵視してきたので、もともと「右」の陣営に属しているのは間違いない。しかし、右とか左というのは政治思想や政治運動の概念で、思想や運動というのは「損得抜き」で少数派になってもやり抜かなければならない。参議院選の比例区なんかだと今も右翼の政党が立候補している。昔は新左翼の立候補なんかもあった。(「革命」で現体制を打倒することを目指す左翼の「革命党派」は立候補しないはずだけど、政見を合法的にテレビで訴えられる利点もある。)

 でも橋下氏は「勝てる戦いしかしない」という人もいる。教員組合や公務員組合は今や昔日の力はないことを承知の上で、「水に落ちた犬をたたく」ような攻撃をしていると僕も思う。卒業式の国歌不起立とか公務員の入れ墨とか、もともと多数の問題ではないことを取り上げて「一人でもいることが公務員として問題ではないか」と問題設定していくわけである。しかし、石原氏や河村氏のような中国と不用意な摩擦を起こすような発言はしていない。日本の第2経済圏である大阪のリーダーが、反中、反韓、反米の発言をできるわけない。脱原発の方向で関西電力にかみついたが、これも「原発は昔の日教組のようなもので、凋落していく存在なのだ」という発想が背景にあるのだと僕は思っている。

 だから思想的に「右翼運動」をするタイプと言うよりは「体制派」であって、権力を握って「強い者のための政治を行う」という方向で進んで行くと僕は思っている。でも、そこに右派がすり寄ってくるわけである。今後全国的に政治進出をするとなると、候補者に公募してくるのはどういう人か。労働組合や市民運動をやってた人は近づいてこない。同志だと勘違いして維新の会に接近する反原発派もいるかもしれないが、ほとんどは右翼的な政治運動に関わってきた人になるだろう。

 それを予見するのが、「歴史問題」と「公募区長」である。すでに「大阪市特別顧問」に山田宏前杉並区長、中田宏前横浜市長が就任している。この二人は2010年参院選で「日本創新党」を作って立候補して惨敗したが、大阪で橋下氏に拾われた形である。区長選任にも関わったらしい。山田氏が在任中に、杉並区は扶桑社の中学教科書を採択した。中田氏の退任後ではあるが、中田氏が任命した教育委員は昨年横浜で育鵬社の中学教科書を採択した。このような、もとをただせば「新しい歴史教科書をつくる会」大好き系の政治家が大阪で力を握っている。そういうこともあるからか、前に書いた「ピース大阪」の問題では、橋下氏は「子供たちが近現代史を学ぶための施設を大阪府市で設置する」ために、「『新しい歴史教科書をつくる会』のメンバーら有識者に協力を求めていく」と言っている。育鵬社の教科書についても、「教育現場は全然採択しないが、教科書検定を通った教科書。しっかり子供たちに出さないといけない」と言ってるらしい。やはり橋下氏の根っこは「歴史修正主義」でヨーロッパ基準では「極右」に近いということがわかる。

 一方、公募で選ばれた区長にも要注意の右派政治家も選ばれているという。北区長の中川暢三氏(前兵庫県加西市長)は、松下政経塾一期生であちこちの選挙に立候補したのち郷里の加西市長に当選したが、職員組合ともめて2回不信任案を通されたりしたという。6月9日付のツイッターでは、「普天間の移転問題に加えオスプレイ配備の反対運動が沖縄で強まっている。地元新聞の世論誘導、自治労・日教組など左翼の反米闘争のみならず、尖閣領有や台湾侵攻を狙う中国共産党工作員の暗躍も念頭に置くべきだろう。」なんて書いている。自民党も含めて県議会で全会一致で決議したオスプレイ配備反対を、自治労、日教組はまだしも「中国共産党工作員の暗躍」ととらえる感性のぶっ飛び具合がすごい。他にも、住吉区長吉田康人氏も高槻市議として右派的な活動をしてきた人らしい。西成区長の臣永正廣(とみなが・まさひろ)氏は徳島県那賀川町長時代に町議が懇親会に忘れた携帯電話を盗み見たとして裁判沙汰になったという人。経営者から応募している人はどういう人か判らない人が多いが、公募すると右派的な人物が応募するし、それを採用するということがわかる。

 大阪の問題を書くのはこれで一段落として、落穂ひろい的に少し「スピンオフ」を書きたいが、まずは7月市会に注目したいと思う。(なお、大阪、京都、名古屋、横浜、神戸では歴史的に「市会」と呼んで「市議会」とは言わないのだという。僕は今回初めて知ったけれど、東京の人は知らないだろう。)橋下市長は、強烈な発信力で「パワハラ」的に政治を行うので、部下である公務員や、例えば「今まで補助金をもらっていた団体」などは大変な思いをすることになるだろう。見てるだけでも辛くなるニュースが多い。
 なお、まだ行ったことがない人は、「リバティ大阪」と「ピース大阪」に早めに言っておくことを強く勧めたい。全国基準で「なくしてはならない」施設で、大阪以外でも(存続問題とは別にしても)見る価値がある施設である。「大阪の誇り」と言える場所だと思う。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする