尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

足立紳監督「14の夜」

2017年01月21日 18時32分22秒 | 映画 (新作日本映画)
 足立紳監督「14の夜」はなかなか面白かったけど、恵まれない公開だったので、ちょっと紹介しておきたいと思う。足立紳(1972~)という人は、「百円の恋」の脚本を書いた人。「14の夜」は自作脚本を初監督した。テアトル新宿のお正月公開作品だったんだけど、「この世界の片隅に」の大ヒットの余波で、上映回数が少なくなってしまった。肝心の正月興行もお昼と夜だった。

 1987年の地方都市。(北関東の各地でロケされたようだ。)中学3年生の夏休み、「性」に餓え翻弄される少年たち。「クソみたいな日常」の中で、「呆れるほどに、バカだった」日々を描いている。そして、ある日「AV女優」の「よくしまる今日子」のサイン会が開かれるという情報が…、特に夜12時を過ぎたら、スペシャルなことがあるらしいというんだけど。この情報にかき乱される柔道部の少年4人組。

 ありそうな話だんだけど、そういえば最近ここまでストレートなおバカ少年映画もなかったかも。そして、少年たちの世界にも、もっと強いグループもあるし、年上の暴走族もいる。映画を撮ってるグループもある。その上、4人組の中にも、実はいろいろの思惑があると判ってくる。一方、主人公タカシの家ももめてばかり。父の高校教師(今は情けない父親役一番手の光石研)は、交通事故時の酒が検出されて停職中。何度応募しても一次審査にも通らない文学賞に応募し続けている。そこに姉が婚約者を連れて帰ってくるんだけど…。

 婚約者を迎えて大混乱の家庭を飛び出し、タカシは夜の中学に集まるんだけど…。とんでもないことが連続する「14の夜」をタカシはどう乗り切るか。「ちょっとやり過ぎ」や「事前に読める」シーンもけっこうあるけど、大いに楽しめる作品だった。快調な演出に、中学生男子たちも頑張っている。その場にいる感じがする。町中にレンタルビデオ屋がいっぱいあった時代の話。そういえば、そんな時代もちょっと前にあった。お店のビデオは、白井佳夫氏提供とクレジットされている。元キネ旬編集長の映画評論家。

 テアトル新宿公開作品は、「そこのみにて光り輝く」「恋人たち」「この世界の片隅に」と3年連続でキネ旬ベストワンを獲得している。その代り、「14の夜」のように上映が限られる作品もあるわけで、不運な映画になってしまった。今後、映画観を変えて、どこかでやって欲しいなあと思う。見るべきチャンスが少ないまま埋もれてしまうのは惜しい。そういう勢いのある佳作。
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