温泉の話を始めると、あの温泉はいい、いやあっちもといった体験自慢のようになる。そういう中で、より客観的な基準で「良い温泉」を考えてみようというのが、石川理夫「本物の名湯ベスト100」という本である。(「本物の」には点が振ってあるけど。)とても面白い本で、役立つことが多かった。
温泉は日本にものすごくたくさんある。(日本温泉総合研究所というところのサイトを見ると、2014年度に3088の温泉地があると出ている。一軒宿も一つ、大温泉地も一つで数ええた数である。近年は閉める宿が多く、漸減している。)たくさんある温泉も、当然ながら玉石混交である。温泉に入って気持ちよくなって帰りたいのに、かえって肌が荒れてしまったようなお湯に行ったこともある。
温泉というものを考えてみるには、「温泉とは何か」という定義がいる。日本には「入湯税」という間接地方税もあるから、温泉の定義は大事である。温泉じゃない沸かしの大きな風呂なら税金はかからないけど、温泉旅館あるいは温泉施設を利用すると税金がかかるのである。(1人150円。なお、これは一般財源ではなく目的税。温泉の保護や観光振興などに限って使われる。)
温泉法という法律で「温泉の定義」が決められている。それは温水、鉱水または水蒸気等のガスで、以下のようなものというのである。(水蒸気ガスが噴出する温泉もかなりある。)条件は「源泉の温度が25度以上」または「以下の成分のうち一つ以上を含む」というものである。以下の成分は19あるが、「1㎏中の溶存物質が、総量で1000mg以上含まれている」とか「遊離炭酸(CO2 )が250g以上」とか、その他さまざまな金属イオンが決められた以上含有されているというものである。
成分表が風呂場に貼ってあっても、大体ちゃんと見ない。でも、こういう法律的な根拠を示しているわけである。この規定は温泉ファンにはよく知られているけど、ちょっとおかしい。後半はともかく、前半は成分じゃなくて温度の規定である。地下の方が温度が高い。地温勾配というらしいが、100m掘ると3度上昇するという。今の技術では1000mぐらいまで掘れるから、地下深くボーリングして地下水が湧出すれば、それは成分に関わらず、必ず「温泉」になる。でも、それっておかしいでしょ。
温泉はやはり効能あってのものだろう。石川氏の本を読んでなるほどと思ったんだけど、単純温泉と呼ばれるようなものでも、ちゃんとした成分を含む温泉だと非常に濃厚である。家庭の風呂で言えば、入浴剤を5袋一度に入れたほどの濃い成分になるという。そんなことをする家庭は普通はないだろう。大きい風呂だから何となく入ってしまうけど、ちゃんとした温泉はすごく濃厚なのである。
また石川氏の本で改めて思ったけど、「療養泉」というものを知っておかないといけない。温泉の名前が2014年に変わって、10種類に整理されている。列挙すると、単純温泉、塩化物泉、炭酸水素温泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉というものである。単純温泉といっても、特に何かの成分が突出して多いわけではないというだけで、各種成分が濃厚に含まれているのは変わらない。肌にマイルドだから、特に特定の疾患がなくて疲労回復が目的なら、一番いいかもしれない。こういった療養泉の扱いを受けている温泉がいいんだと思う。
温泉もそれなりの湧出量がないといけない。もっともそれは宿の数、あるいは宿のお風呂の大きさや数にも関係する。一軒宿なら少なくてもいいし、大旅館が林立しているような大温泉地では湧出量が多くないとダメである。というか、本来はお湯がたくさん出るから旅館が立ち並んだはずである。でもバブル期に巨大化したホテルでは、露天風呂を作り、大浴場も複数作り…ということで、お湯が足りなくなる。大体、客が多すぎると、お湯が汚れるから、循環させないとやっていけなくなる。循環して殺菌したお湯は、確かに温泉力が低くなると思う。
もっともお湯が少ない温泉や、あまりに巨大な旅館などでは循環がやむを得ない場合もある。事前にわかって泊まるなら、やむを得ない時もある。ところが「あれ、ここって温泉だったっけ」というような観光地が、温泉を名乗っていることが最近は多い。これらは地下深くからの湧出だろうけど、循環、塩素殺菌が激しくて、何のための風呂なのか判らない旅館も多い。沸かしの方が良かったところもある。
20年ぐらい前から、「源泉かけ流し」という言葉がよく聞かれる。(松田忠徳氏が特に主張した。)僕もそれが温泉の基本だと思う。その方が絶対に気持ちいい。でも、かけ流しならいいのかというと、必ずしもそうでもない。源泉からどう運んできたのか、加温加水の状況、それに掃除などメンテナンスがしっかりしてるかという問題もある。かけ流しでも掃除がきちんとされてなければ、台無しである。立ち寄り入浴者が多くて、せっかくこっちは宿泊しているというのに、もうかなりお湯も汚れていたような宿もあった。
ホンモノの温泉を探すには、ホンモノじゃない温泉にも山ほど行く必要がある。それは映画や本なんかと同じで、身銭を切っていろいろ学ぶしかない。ガイドは参考になるけど、絶対ではない。ネット情報も同じ。そんな中で、自分なりにどんな温泉がいいのかを考えてみた。自分なりの温泉基準を考えてみると、それは人生観、教育観につながると思った。そういう話は次回以後に書いていきたい。
温泉は日本にものすごくたくさんある。(日本温泉総合研究所というところのサイトを見ると、2014年度に3088の温泉地があると出ている。一軒宿も一つ、大温泉地も一つで数ええた数である。近年は閉める宿が多く、漸減している。)たくさんある温泉も、当然ながら玉石混交である。温泉に入って気持ちよくなって帰りたいのに、かえって肌が荒れてしまったようなお湯に行ったこともある。
温泉というものを考えてみるには、「温泉とは何か」という定義がいる。日本には「入湯税」という間接地方税もあるから、温泉の定義は大事である。温泉じゃない沸かしの大きな風呂なら税金はかからないけど、温泉旅館あるいは温泉施設を利用すると税金がかかるのである。(1人150円。なお、これは一般財源ではなく目的税。温泉の保護や観光振興などに限って使われる。)
温泉法という法律で「温泉の定義」が決められている。それは温水、鉱水または水蒸気等のガスで、以下のようなものというのである。(水蒸気ガスが噴出する温泉もかなりある。)条件は「源泉の温度が25度以上」または「以下の成分のうち一つ以上を含む」というものである。以下の成分は19あるが、「1㎏中の溶存物質が、総量で1000mg以上含まれている」とか「遊離炭酸(CO2 )が250g以上」とか、その他さまざまな金属イオンが決められた以上含有されているというものである。
成分表が風呂場に貼ってあっても、大体ちゃんと見ない。でも、こういう法律的な根拠を示しているわけである。この規定は温泉ファンにはよく知られているけど、ちょっとおかしい。後半はともかく、前半は成分じゃなくて温度の規定である。地下の方が温度が高い。地温勾配というらしいが、100m掘ると3度上昇するという。今の技術では1000mぐらいまで掘れるから、地下深くボーリングして地下水が湧出すれば、それは成分に関わらず、必ず「温泉」になる。でも、それっておかしいでしょ。
温泉はやはり効能あってのものだろう。石川氏の本を読んでなるほどと思ったんだけど、単純温泉と呼ばれるようなものでも、ちゃんとした成分を含む温泉だと非常に濃厚である。家庭の風呂で言えば、入浴剤を5袋一度に入れたほどの濃い成分になるという。そんなことをする家庭は普通はないだろう。大きい風呂だから何となく入ってしまうけど、ちゃんとした温泉はすごく濃厚なのである。
また石川氏の本で改めて思ったけど、「療養泉」というものを知っておかないといけない。温泉の名前が2014年に変わって、10種類に整理されている。列挙すると、単純温泉、塩化物泉、炭酸水素温泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉というものである。単純温泉といっても、特に何かの成分が突出して多いわけではないというだけで、各種成分が濃厚に含まれているのは変わらない。肌にマイルドだから、特に特定の疾患がなくて疲労回復が目的なら、一番いいかもしれない。こういった療養泉の扱いを受けている温泉がいいんだと思う。
温泉もそれなりの湧出量がないといけない。もっともそれは宿の数、あるいは宿のお風呂の大きさや数にも関係する。一軒宿なら少なくてもいいし、大旅館が林立しているような大温泉地では湧出量が多くないとダメである。というか、本来はお湯がたくさん出るから旅館が立ち並んだはずである。でもバブル期に巨大化したホテルでは、露天風呂を作り、大浴場も複数作り…ということで、お湯が足りなくなる。大体、客が多すぎると、お湯が汚れるから、循環させないとやっていけなくなる。循環して殺菌したお湯は、確かに温泉力が低くなると思う。
もっともお湯が少ない温泉や、あまりに巨大な旅館などでは循環がやむを得ない場合もある。事前にわかって泊まるなら、やむを得ない時もある。ところが「あれ、ここって温泉だったっけ」というような観光地が、温泉を名乗っていることが最近は多い。これらは地下深くからの湧出だろうけど、循環、塩素殺菌が激しくて、何のための風呂なのか判らない旅館も多い。沸かしの方が良かったところもある。
20年ぐらい前から、「源泉かけ流し」という言葉がよく聞かれる。(松田忠徳氏が特に主張した。)僕もそれが温泉の基本だと思う。その方が絶対に気持ちいい。でも、かけ流しならいいのかというと、必ずしもそうでもない。源泉からどう運んできたのか、加温加水の状況、それに掃除などメンテナンスがしっかりしてるかという問題もある。かけ流しでも掃除がきちんとされてなければ、台無しである。立ち寄り入浴者が多くて、せっかくこっちは宿泊しているというのに、もうかなりお湯も汚れていたような宿もあった。
ホンモノの温泉を探すには、ホンモノじゃない温泉にも山ほど行く必要がある。それは映画や本なんかと同じで、身銭を切っていろいろ学ぶしかない。ガイドは参考になるけど、絶対ではない。ネット情報も同じ。そんな中で、自分なりにどんな温泉がいいのかを考えてみた。自分なりの温泉基準を考えてみると、それは人生観、教育観につながると思った。そういう話は次回以後に書いていきたい。