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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

日米安保をどうするのか-「9条改憲」論④

2017年05月17日 21時23分33秒 | 政治
 憲法9条は「押しつけ」で、自衛隊が書いてないのは怪しからんとよく保守系の人は言うわけだけど、一回目の不要論で書いた通り、他の行政機関もみな書いてない。もし「9条は最小限度の戦力保持を認めている」と解釈した場合、その解釈に基づき「自衛隊」を設置することに憲法的の問題はないように思う。だけど、日本の防衛問題に関しては、もっと重大な「書き落とし」があるではないか。つまり「日米安全保障条約」である。こっちは憲法に書かなくていいのだろうか?

 個別的自衛権に関して、政府は憲法制定時には字義通りに「個別的自衛権も認めない」と解釈していた。では当時は、「日本の防衛」はどう考えられていたのだろうか。それは「国際連合」の枠組みに完全に依拠するということだったと思う。日本に対する侵略行為があった場合、国連安保理で「国連軍」を組織して対処するということである。でも、冷戦開始により、この構想は戦後史に置いてあまり意味を持たなくなってしまった。現在のシリア内戦を見れば判るように、安保理常任理事国中に対立がある場合、安保理は有効に機能しないことが多くなる。

 ところで、日本が「戦力を有しない」と憲法上規定されていることが、アメリカに日本防衛を依頼する根拠ではないか。憲法に自衛隊を明記すれば、日本の防衛は一義的には日本が自ら行うことになるわけで、当然のこととして「日米安保」はいらなくなるはずである。そのことの是非は別にして、安倍首相はその問題に波及することを意識して提案しているのだろうか?

 さて、自衛隊さえ想定されていなかったんだから、憲法制定当時に「日米安保」など全く誰も想定していなかっただろう。外国と条約を結ぶことは当然ある。憲法では、内閣が締結、国会が承認、天皇が認証と規定されている。日米安保条約も、制定当時、あるいは60年の改定当時、大きな反対があったけれど、最終的には以上のような経過をたどって結ばれた。内閣と国会にその権限はある。

 だけど、日本国はどのような条約でも結べるのだろうか。憲法98条には、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と条約遵守義務を定めているが、どんな条約にも適用されるのだろうか。極端なことを言えば、日本に租借地をもうける、つまり、国土の一部を外国に貸し出すといったことをも条約で決められるのだろうか。もちろん、それが国会で承認されなければ効力がないわけで、国民の代表に決定をゆだねればいいとも言える。

 そのような「どんな内閣や国会でも、こんな条約は結べない」という規定は憲法に必要ないのだろうか。僕がこのように言うのは、もちろん「日米安保」の現状に関する問題意識がある。戦後72年を迎えて、日米安保は「当然の前提」になってしまい、政治の世界では問い直す動きはない。その間に米軍はほとんど日本の主権を超越したような「超権力」になってしまった。

 米兵や米軍属による犯罪行為があっても、基地に逃げ込めば日本の捜査を逃げられる。米軍機などに事故が起こっても、日本の警察や消防が捜査できない。騒音被害や飛行差し止めを訴えても、米軍に対する司法判断の権限がないとされる。(米軍基地の騒音に対して、日本政府の賠償責任は容認されている。飛行差し止めは自衛隊や民間機でも認められていない。ただ、米軍機の場合、飛行差し止めができない法的検討以前に、そもそも米軍に司法判断が及ばないとされる。)

 そのようなことが今も時々報じられる。これでは主権侵害ではないだろうか。いつも「国を愛する心」などを強調する人は、このような状況を憂うることはないのだろうか。いま、書いていることは日米安保の是非論ではない。そういう選択肢もあるだろうとは思う。だけど、アメリカであれ、他のどの国であれ、このように日本国の主権を侵害されているような条約はおかしいのではないか。そのことを憲法に書いておく必要はないのか。「自衛隊」は憲法に書くというんだから、「戦後の国体」とまで言われる「日米安保」の方こそ、憲法で許されること、許されないことを明確化しておく必要を感じる。

 安倍首相が「自衛隊明記」を言い出した。当然、では日米安保は廃棄ですか? と誰かが質問するべきだろう。違うと言われたら、日米安保は憲法に書くべきじゃないのですかと続いて質問するべきだ。いま、「北朝鮮危機」や「中国の強大化」の中で、日米安保に波及させるべきではないというかもしれない。それならば、「自衛隊明記」もするべきではない。そこから発しているのだから。
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