尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

国民民主党代表選、自民党支持へ向かう労働組合

2023年09月11日 22時27分40秒 | 政治
 9月2日に国民民主党の代表選挙が行われ、玉木雄一郎代表が再選された。国民民主党に関心はあまりないが、この代表選の背景にある事情は重大だと思う。当初から玉木氏優勢と報道されていたが、玉木氏が80ポイントを獲得したのに対し、対立候補の前原誠司代表代行は31ポイントと2倍以上の差が付いた。玉木氏の圧勝とみて良いだろう。

 玉木代表は「対決より解決」をスローガンにして、「政策本位」の名の下に野党連携ではなく与党との協議を優先させてきた。特に2022年度の当初予算に賛成したのは、野党の対応として極めて異例のことだった。ガソリン税の「トリガー条項」問題の取引を狙ったのかと思うが、結果として全く成果を得られなかった。2023年度予算には反対したものの、前年度の印象は強く残っている。今回対立候補として立候補した前原氏は「強烈な違和感を持った」と言っていた。

 今回は国会議員(42)と国政選挙公認予定者(13)が1人1ポイントで、合計55ポイント。地方議員(270人)が28ポイント、党員・サポーター(36682人)が28ポイントの合計56ポイント。これらはそれぞれ両候補の得票割合でポイントを割り振る。総計111ポイントとなる。詳しく得票を見てみると、国会議員は玉木(28)、前原(14)と2対1。公認予定者は玉木(6)、前原(7)で前原優勢。ところが、地方議員が玉木23、前原5、党員・サポーターも同様に、玉木23,前原5と玉木圧勝の原動力となった。国会議員だけならある程度勝負になったが、党員は圧倒的に玉木路線を支持していたのである。

 では国民民主党の「党員・サポーター」とは誰だろうか。それはいろんな人がいるんだろうけど、やはり圧倒的に多いのは「支援する労働組合員」なんだと思う。国会議員でも労組出身議員は皆玉木支持である。川合孝典(UAゼンセン)、磯崎哲史(自動車総連)、浜野喜史(電力総連)と、連合傘下の労組が擁立した参議院議員は玉木陣営の推薦人になっている。当然組合員のサポーターは圧倒的に玉木氏に投票しただろう。それが代表選の結果を決定づけたのである。

 ここで判ることは、国民民主党支持の労働組合は、かつての「民主党政権」のような「野党連合による政権交代」を求めていないということだ。立憲民主党と一緒に政権構想をまとめるとなると、当然政策的な歩み寄りが必要になる。だが、電力総連や自動車総連などの大労組にとって、立憲民主党よりも自民党政権の方が近いのである。まだ完全に「自民党支持」は打ち出せない。立憲民主党支持の労組も抱える「連合」も、自民党との連立は認めない。しかし、ホンネではずっと自民党の方が近いんだろう。

 代表選直後には、自民党筋からだと思うが、国民民主党の連立入り検討という報道も流れた。これは現実にはなかなか難しく、13日に予定されている内閣改造には間に合わない。与党同士が小選挙区選挙で争ったらおかしいが、すでに各党の候補が固まりつつある中で自民候補を下ろすのは不可能に近い。小選挙区で当選した国民民主党の衆院議員にも、同じ選挙区に比例当選した自民議員がいるケースが多い。ここで「連立」報道があったのは、公明党への牽制が大きいと思う。その後、すきま風が吹いていた東京の自公関係も修復の動きが見えてきた。

 代表選後には玉木氏も「ノーサイド」と言って、前原氏は代表代行に留任した。しかし、今回の代表選は全く方向性が違う路線争いだった。すぐに修復できるというものじゃないだろう。労組からすれば、民主党政権よりも安倍政権の「官製春闘」の方が得るものが多かったんだろう。労働組合が自らの力量を高めるのではなく、強大な与党に頼って賃上げを求める。それで良いのかと言っても、とにかくそういう方向に向かっていて、事実上の政権支持勢力になりつつある。つまり、政権交代は当面は起こらないという冷厳な現実がある。そこから出発するしかないのである。
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