尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

伊豆北川温泉で「ダイヤモンド大島」を見る

2018年01月24日 23時50分35秒 |  〃 (温泉)
 事情があって家を離れられず、半年以上ぶりにやっと温泉旅行に行った。漱石「明暗」を読んだから湯河原はどうかな、あるいは箱根と思ったんだけど、もっと暖かいところの方がいいという連れ合いの要望で伊豆を探すことにした。補助金みたいなのがあって、大手の会社で取れる宿に限られる。一生懸命探して、今まで行ったことがない「北川(ほっかわ)温泉」に、お風呂がいっぱいあって源泉かけ流しの宿を見つけた。それが「つるや吉祥亭」でロケーションも食事も大満足だった。

 ビックリしたのは、真ん前に伊豆大島が見えること。北川というのは、東海岸で伊東と熱川の間。熱川や稲取に泊ったことがないので、この大島のロケーションに驚いた。朝は快晴だったから、太陽が三原山から昇るではないか。まあ山頂より少しずれてるけど、「ダイヤモンド大島」と呼びたい感じ。まず、下の最初の写真がちょうど日が昇るころ。次が日の出前で、次第に日が出る様子。
   
 22日が大雪で、23日朝は交通が乱れた。今回は珍しく行きも帰りも電車の指定席を買ってあった。それが「最後の大ポカ」につながるのだが、それは後で。行きは一度は乗りたい「スーパービュー踊り子」で、帰りは小田原から「東京メトロ乗り入れのロマンスカー」。雪で遅れるのを心配して早く出たから東京駅に早く着いた。でも肝心の列車が来ない。線路が詰まって車庫から回送するのが遅れているとのこと。結果的に35分の遅延だったが、その間の吹きさらしの東京駅の寒いこと。

 せっかくの「スーパービュー」だけど、寒くて眠い印象のまま、さらに遅れて伊豆熱川に。もうまっすぐ宿へ向かうことにして待っている送迎バスに乗る。宿で一番最初の「貸切露天風呂」を予約。4つあって、到着後に先着順で一つ入れる。「大島」という風呂に入ったけど、実に素晴らしい。ロケーションが抜群で、小さいけど塩化物泉が体を温めてくれる。もうここで体も洗ってしまおう。湯の向こうに大島がよく見えてるけど、写真にすると見えなくなる。窓の合間から写すとかすかに見える。
  
 それより北川温泉には名物の「黒根岩風呂」がある。600円するが宿泊客は無料。前から入りたかったが、車だと停めるのが難しい。風があって寒いが何とか夕方行ってみよう。これもとてもいい感じだったなあ。でも、寒いからすぐに退散。岩に「アメリカを見な  入る 野天風呂」と刻まれていた。(空白箇所は削れてるけど、多分「がら」とあったんだろう。)でも、僕には伊豆大島しか見えなかった。伊豆大島はアメリカなのか?!と突っ込みながらさっさと帰って来た。
   
 この宿の特色にはいくつかの特色があった。お風呂に行くときタオルを持って行く必要がない。お風呂に沢山置いてある。「つるや横丁」という休み処があって、射的など「昭和30年代風」のおもてなし。甘酒やビールが無料。夕食では天ぷらが注文制。注文票が置いてあって、海老とか桜海老かき揚げ、明日葉、ナス、カボチャなど書いてある。数を書いて渡せばいくつでも持ってくるという趣向。朝はこれが干物の焼き魚になる。こっちは自分で取りに行く必要があるが。エレベーターがないので足が不自由だとけっこうきついが、食事もとても良かった。こんな感じの宿。

 送迎バスで熱川に戻って「リゾート号」で熱海へ。伊豆急リゾート号は普通料金だけで「スーパービュー」が楽しめる。座席が外を向いてるので、こっちの方がいいじゃないか。熱海が混んでるから小田原に直行。箱根ベーカリーでピザを食べて、小田原文学館へ向かった。お城を歩くには寒風がすごく、一度行きたかった文学館へタクシーで行ってみた。その建物が国登録有形文化財の洋館なのである。1937年建築で、田中光顕(たなか・みつあき)の別荘だった。
   
 その人は誰だと言われるだろうが、明治期の政治家で宮内大臣などを務めた伯爵である。土佐藩出身の「維新の功臣」だが、1937年まで生きてたの? 1939年(昭和14年)に97歳で死んだと出てるから、幕末志士の中でも極め付けの長命だ。もう相当に明治史に関心がある人しか知らないだろう。昔は政治家たちが温暖な小田原に別荘を作ったのである。小田原は北村透谷、牧野信一、川崎長太郎らが生まれ、北原白秋、谷崎潤一郎、三好達治、坂口安吾、岸田國士らが住んだ。館内の展示を見てその名前に驚くしかなかった。各階にあるテラスも面白い。この前読んだ私小説作家尾崎一雄の書斎がちょっと離れた場所にあった。小さい家だったが、これも縁で面白い。

 そこから歩いて戻るが、小田原名物「ういろう」本店はお休み。お堀端が寒く、駅ビルの富士屋ホテルの店でアップルパイの小憩。ここまでは言うことなしの旅行だったのだが、最後の最後で大きなミスをした。帰りの特急の時間を完全に勘違い。悠々間に合うつもりで改札を通ったら、もうずいぶん前に出ちゃってるではないか。そんなことがあるんだ。ちゃんと確認をせずに思い込んでいてはダメだな。多少のお金と時間が余分にかかったが、帰れないわけじゃないんだから、諦めるしかない。
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