尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

不思議な不思議な「石丸新党」ー政策なしの政党ってあり?

2025年01月16日 21時48分14秒 | 政治

 2025年1月15日に、石丸伸二氏が地域政党「再生の道」設立を発表した。石丸氏は2024年7月の都知事選に立候補して第2位となって注目された。開票日の会見では「衆院選広島1区」の名を挙げて国政へのチャレンジも示唆していたが、結局立候補しなかった。その後沈黙していたが、今年になって都議選に向け地域政党を作る方針を明らかにしていた。

(石丸新党は「政策は候補者まかせ」)

 記者会見そのものにも問題はあったが、それはさておきこの会見で明らかにされた「再生の道」の方針は非常に不思議なものだった。何しろ政党を結成するというのに、「党として実現する政策は出さない」というのである。良くも悪くも、政策を掲げるから政党のはずである。党議拘束は一切せずに予算案や条例案への賛否は各議員の判断に任せるというのでは、「無所属連合」と同じである。議会内の「会派」ならあるだろうが、このやり方は果たして受けるんだろうか。こういう「社会実験」が「ブーム」になるならば、自分もずいぶん時代とズレてしまったということだろうか。

(議員任期は「2期8年まで」)

 候補者が別の国政政党に所属していても構わないとまで言う。これも理解出来ない。一般的には他の政党は「党議拘束」を掛ける。予算などで各議員がバラバラの対応をするのはおかしいからだ。選挙の時に同じ公約を訴えて、当選したらその実現を目指す。それが普通の政党だから、どこかの国政政党に所属していたらその党の政策実現に努力しなければならない。地域政党「再生の道」から出馬して、当選したら自分の考えで賛否を決めると言っても、もう一つ属する政党の方針に従えば良いということか。

 「よく分からない力学で議員になり、しまいに議員の椅子にしがみつく。日本が衰退している原因だと断罪します」と言っているのをどう考えるべきか。「議員のイスにしがみつく『政治屋』の一掃が新党の目的」とも言う。まあそういう考えもあるかもしれない。だけど新党の候補者選考はどうなるのか。今後立候補希望者を募り、書類審査や面接で決めるらしいが、それは「よく分からない力学」とは何が違うのか。政策もはっきりしない「新党」の公募に応じるのは「政治屋」と何が違うのか

 僕にはこういう「怪しい公募」こそ「政治屋」を生み出すのではないかと思う。「2期8年まで」という議員任期は地域政党「生活者ネットワーク」と同じだが、そのような地域活動を基盤している党以外は不可能じゃないか。そうじゃないと「8年まで」と期限付きの政治活動を行えるのは、(医師や弁護士など)有力な資格を持っている人に限られてしまう。若い人は「実績」がないから選ばれにくい。壮年期の人は8年と区切られると、2期目は次の仕事探しに忙しくなる。

(国民民主党とは近い?)

 僕も今までの政党のあり方がベストとは思っていない。諸外国に比べ日本の党議拘束は厳しすぎる。一端議席数が決まってしまえば、後は議会の審議をいくらやっても結果が変わらない。そういう議会のあり方が日本社会の停滞感を招いているのも確かだ。だけど、「党議拘束をしない」だけでは政党の方向性が判らない。「政策の細部」までは要らないが、「世界観」は示してもらわないと選びようがない。「イデオロギー」を左右で測れる時代は終わったかも知れないが、それでも政治家に「イデオロギー」が不要なわけではない。何も語らなければ左右からの批判を受けないかもしれないが、それは逃げてるのと同じだ。

 「逃げてる」と言えば、直前になって「記者会見場」が変更になった。記者会見の告知がネット上に掲載され、その結果誰が来るか不明な会見は困るということだった。実際、一部のフリー記者らの参加は拒否された。これもどうかなと思う。今度選挙に出るんだから、誰でも来て何でも聞いてくださいというのが普通じゃないか。「記者選別」というのは、何だか気になる。そういうことをしていた政治家は大体何か問題を抱えていた。批判されては困る問題があるんだろうか?

 ということで、「批判」以前に「批判材料がない」という問題である。具体的政策を語らないことで、財源がどうのとか伝統がどうのとか世界ではどうのとかいう批判が起きない。それを「頭のいい」」やり方だと思う人がいると困るなと思う。国政じゃないけど、都政のあり方でもいくつかの問題はある。政党として都議選に臨むなら、大きな政策的方向性が必要だと思う。

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