1回目にオリヴィア・デ・ハヴィランドだけで長くなった。次は妹のジョーン・フォンテインについて。姉は理知的な美女という感じだが、妹は一見して「可愛い」タイプで、主人公が一目惚れしてしまうようなヒロイン役が多かった。この姉妹は仲が悪かったらしい。原因は判らないが、母が姉の方をより愛していたとよく言われる。そのためかジョーンだけ再び東京に帰って、聖心インターナショナルスクールを卒業した。帰国後に舞台に出た後に映画会社と契約した。
(「レベッカ」)
ジョーンはヒッチコック監督のハリウッド第一作「レベッカ」(1940)で成功した。「レベッカ」は今見ても鮮烈なサスペンス映画で、この一作でアカデミー作品賞を受賞してしまった。ジョーンも主演女優賞にノミネートされた。富豪の夫ローレンス・オリヴィエに請われて結婚したものの、先妻の謎の死に怯えるサスペンスが怖い。ゴシック・ホラーの傑作だ。そして続いてヒッチコックの次作「断崖」(1941)に主演して今度はアカデミー主演女優賞を受賞した。結果的にヒッチコック映画で俳優がアカデミー賞を受賞したのはジョーンだけである。
(「断崖」)
シネマヴェーラでは今まで2回ヒッチコック特集をやっているが、「断崖」の上映はなかった。僕もテレビで見ただけなので期待して見たんだけど、あまり面白くなかった。日本では1947年に公開されてベストワンになっているが、ヒッチコックの最高傑作とは言えない。フランシス・アイルズのミステリーの映画化で、ケーリー・グラントが列車の中でジョーン・フォンテインを見初める。ジョーンは舞い上がって結婚するが、男は無職の一文無しだった。夫は全然仕事に就く感じもなく、妻はやがて夫に殺されるのではないか…と疑心暗鬼になっていく。ケーリー・グラントがひどすぎて、ジョーンに同情できない。確かに魅力的なんだけどという映画だった。
(「忘れじの面影」)
1943年の「永遠の処女」で三度目のアカデミー賞ノミネート。しかし上映はなく見たこともない。同年の「ジェーン・エア」は有名な原作の映画化で、前に見てるからパス。夫がオーソン・ウェルズに代わっただけで、ジョーンの役柄は同じような感じ。夫や先妻を気にする若い妻である。1948年の「忘れじの面影」(マックス・オフュルス監督)はアパートの隣に引っ越してきたピアニストに恋した娘の哀しいロマンスを描く。思い続けてある一夜に結ばれたが。監督の語り口が絶妙で見せるんだけど、ジョーンの役柄は似たようなもので観客はジョーンを見るだけ。
ジョーンの役柄は似たようなものが多い。その中でもジョーンの美貌だけに頼っているのが「旅愁」(1950)だ。テーマ曲の「セプテンバー・ソング」が有名で昔から名前は知っていたが初めて見た。飛行機が故障でナポリに降りる。修理の間に、機内で知り合ったジョゼフ・コットンとジョーン・フォンテインはナポリ見物に出かける。どうせすぐ直らないと油断したら、空港に戻った時飛行機はもう出発していた。二人はもう離れられなくなっていたが、その飛行機が地中海で墜落したことを知って…。いくら当時だって遅れた乗客はチェックしているだろう。
(「旅愁」)
女はピアニストで、先生を戦前のフランス映画の大女優フランソワーズ・ロゼーがやっている。男の妻はジェシカ・タングで、脇役は面白かった。当時のアメリカ人の「イタリア幻想」がよく判る観光映画。映画としてはなるほどジョーンとだったら、死んだことになってもいいかなとは思うかも。女は有能なピアニストで、結婚せずに生きてきて一世一代のロマンスに巡り会う。ジョーンも30を過ぎて、このような役が回ってくるのも終わりかかっていた。それでもジョーンは確かに魅力的だ。映画としてはデヴィッド・リーンの「旅情」には全く及ばない。
その後の「生まれながらの悪女」(1950)や「二重結婚者」(1953)では少し違った役をやっている。しかし、映画としてはともかく、女優として成功したとは思えない。こうして見てくると、姉のオリヴィアの方が演技の幅が広い演技派だったと言えるだろう。それは偶然ではなく、オリヴィアは自分の望む役を求めて闘った人だった。当時は契約期間内にオファーされた役を断った場合、その分だけ契約が延びる慣行があった。これに対して訴訟を起こして勝訴したのである。ハリウッドではプロデューサーが絶対的な権力を持つことが多かったが、それに対して俳優の権利を主張したのである。これは「デ・ハヴィランド法」と呼ばれている。
当時のことだから、女優は30を過ぎると主役に恵まれなくなる。オリヴィアは映画界に2年間干されたこともあった。二人とも結婚して育児に時間を取られたこともある。やがて二人とも脇役で映画にも出るが、それ以上に舞台やテレビで活躍したようである。舞台公演で各地を回れば、昔の知名度で長く人気を得られるし、クローズアップもない。日本でも映画が斜陽になった60年代に、映画女優の多くは舞台やテレビで活躍した。オリヴィアは「アナスタシア」というテレビドラマのロシア皇太后役で、ゴールデングローブ賞を受賞している(1986年)。それにしても30年以上前のことで、何しろ姉妹とも長命だったから知らない人も多いだろう。
(「レベッカ」)
ジョーンはヒッチコック監督のハリウッド第一作「レベッカ」(1940)で成功した。「レベッカ」は今見ても鮮烈なサスペンス映画で、この一作でアカデミー作品賞を受賞してしまった。ジョーンも主演女優賞にノミネートされた。富豪の夫ローレンス・オリヴィエに請われて結婚したものの、先妻の謎の死に怯えるサスペンスが怖い。ゴシック・ホラーの傑作だ。そして続いてヒッチコックの次作「断崖」(1941)に主演して今度はアカデミー主演女優賞を受賞した。結果的にヒッチコック映画で俳優がアカデミー賞を受賞したのはジョーンだけである。
(「断崖」)
シネマヴェーラでは今まで2回ヒッチコック特集をやっているが、「断崖」の上映はなかった。僕もテレビで見ただけなので期待して見たんだけど、あまり面白くなかった。日本では1947年に公開されてベストワンになっているが、ヒッチコックの最高傑作とは言えない。フランシス・アイルズのミステリーの映画化で、ケーリー・グラントが列車の中でジョーン・フォンテインを見初める。ジョーンは舞い上がって結婚するが、男は無職の一文無しだった。夫は全然仕事に就く感じもなく、妻はやがて夫に殺されるのではないか…と疑心暗鬼になっていく。ケーリー・グラントがひどすぎて、ジョーンに同情できない。確かに魅力的なんだけどという映画だった。
(「忘れじの面影」)
1943年の「永遠の処女」で三度目のアカデミー賞ノミネート。しかし上映はなく見たこともない。同年の「ジェーン・エア」は有名な原作の映画化で、前に見てるからパス。夫がオーソン・ウェルズに代わっただけで、ジョーンの役柄は同じような感じ。夫や先妻を気にする若い妻である。1948年の「忘れじの面影」(マックス・オフュルス監督)はアパートの隣に引っ越してきたピアニストに恋した娘の哀しいロマンスを描く。思い続けてある一夜に結ばれたが。監督の語り口が絶妙で見せるんだけど、ジョーンの役柄は似たようなもので観客はジョーンを見るだけ。
ジョーンの役柄は似たようなものが多い。その中でもジョーンの美貌だけに頼っているのが「旅愁」(1950)だ。テーマ曲の「セプテンバー・ソング」が有名で昔から名前は知っていたが初めて見た。飛行機が故障でナポリに降りる。修理の間に、機内で知り合ったジョゼフ・コットンとジョーン・フォンテインはナポリ見物に出かける。どうせすぐ直らないと油断したら、空港に戻った時飛行機はもう出発していた。二人はもう離れられなくなっていたが、その飛行機が地中海で墜落したことを知って…。いくら当時だって遅れた乗客はチェックしているだろう。
(「旅愁」)
女はピアニストで、先生を戦前のフランス映画の大女優フランソワーズ・ロゼーがやっている。男の妻はジェシカ・タングで、脇役は面白かった。当時のアメリカ人の「イタリア幻想」がよく判る観光映画。映画としてはなるほどジョーンとだったら、死んだことになってもいいかなとは思うかも。女は有能なピアニストで、結婚せずに生きてきて一世一代のロマンスに巡り会う。ジョーンも30を過ぎて、このような役が回ってくるのも終わりかかっていた。それでもジョーンは確かに魅力的だ。映画としてはデヴィッド・リーンの「旅情」には全く及ばない。
その後の「生まれながらの悪女」(1950)や「二重結婚者」(1953)では少し違った役をやっている。しかし、映画としてはともかく、女優として成功したとは思えない。こうして見てくると、姉のオリヴィアの方が演技の幅が広い演技派だったと言えるだろう。それは偶然ではなく、オリヴィアは自分の望む役を求めて闘った人だった。当時は契約期間内にオファーされた役を断った場合、その分だけ契約が延びる慣行があった。これに対して訴訟を起こして勝訴したのである。ハリウッドではプロデューサーが絶対的な権力を持つことが多かったが、それに対して俳優の権利を主張したのである。これは「デ・ハヴィランド法」と呼ばれている。
当時のことだから、女優は30を過ぎると主役に恵まれなくなる。オリヴィアは映画界に2年間干されたこともあった。二人とも結婚して育児に時間を取られたこともある。やがて二人とも脇役で映画にも出るが、それ以上に舞台やテレビで活躍したようである。舞台公演で各地を回れば、昔の知名度で長く人気を得られるし、クローズアップもない。日本でも映画が斜陽になった60年代に、映画女優の多くは舞台やテレビで活躍した。オリヴィアは「アナスタシア」というテレビドラマのロシア皇太后役で、ゴールデングローブ賞を受賞している(1986年)。それにしても30年以上前のことで、何しろ姉妹とも長命だったから知らない人も多いだろう。
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