尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

東京の「スピーキングテスト」実施と多くの疑問

2022年08月03日 22時15分59秒 |  〃 (東京・大阪の教育)
 教育に関する問題をしばらく書いてなかったので、幾つか書いておきたい。東京都教育委員会英語のスピーキングテスト(ESTAT-J)を実施して、都立高校の受験成績に加点される。この問題は方針が打ち出されたときに、「スピーキングテストに見る都教委の「原理主義」」(2017.12.18)を書いた。このテストに関しては、反対や疑問を訴える動きがあるものの、もちろんいつも批判に答えない都教委は、そのまま実施に向かって進んでいる。すでに申し込みが始まっていて、11月27日に実施される予定
(2021年に行われたプレテスト)
 今、「申し込み」と書いたが、これは東京都の公立学校に通う全中学生を対象にしているのに、別途申し込みが必要になる。11月27日は日曜日で、学校の授業の一環ではないのである。受験に加点されるから、逆に私立中学から都立高校を希望する生徒も受けられるんだろうか。一方で私立高校進学を希望する生徒も受ける必要がある。このテストは「受験」ではなく、「授業改善」が目的だからである。「授業で学ぶ」→「試す(ESTAT-J受験)」→「知る(ESTAT-J結果)」→「目標を立てる」→「学び続ける」というサイクルだそうである。「PDCA」みたいな発想がつくづく好きだよね。
(テストの概要)
 疑問点は幾つもあるが、まずは欠席者の問題。あるいは「障害」を持つ生徒の場合。ウェブ申し込みに当たっては、「特別措置」の申請が出来る。視覚、聴覚、きつ音、上肢不自由、下肢不自由、日本語の補助とかいろいろとある。全生徒対象だから、様々な事情のある生徒向けに特別措置が必要になる。それは大事なことだけど、いくらそんな措置を取ったとしても、当日コロナに感染したらどうする。一応、予備日があって、12月18日にもう一回ある。でも、不登校の生徒はどうなってしまうのか。

 もちろん、どんな対策を取ったとしても、中学3年生全員が受けるなんて不可能である。東京の公立高校には約8万人もの中学3年生がいる。受験にも使うというなら、不受験だった生徒は大きな不利益を被るのだろうか。ケガや病気で受験出来なかった場合の対応が5月末に発表されている。それが実に驚きなのだが、「来年2月に行われる英語の筆記試験で、同じ点数を取った同じ高校を受ける生徒たちのスピーキングテストの平均点を算出して、加点する」というのである。筆記試験の点数から、スピーキングテストの点数を導けるんだったら、わざわざ別にスピーキング能力を測定する意味がどこにあるんだろうか。
(入選における活用)
 では実際の入選では、どのように扱うのか。東京都の入学者選抜では、当日の筆記テストと中学の各教科の成績を総合評価する。現在のところ、筆記テストを700点に換算し、調査書点を300点に換算し、合計1000点満点にして上位から合格とする。スピーキングテストの点数は、これと別にして20点を上限にして加点するのである。つまり、1020点満点になる。

 これは各教科の中で英語だけ120点になるようなものである。スピーキングテストの点数はAからFの6段階に区分けされる。80点から100点の人がA段階で、20点加点。65点から79点が16点加算。50点から64点が12点加算。35点から49点が8点加算。1点から34点が4点加算。最後のFは0点の場合である。何で80点以上と最上位は20点で区切るのに、35点以上の場合は、15点ずつ区切るのか全く意味が判らない。スピーキングテストの採点は、どうしても公平性が問題となるが、64点と65点に1点の差しかないわけなのに、それが3点の差になってしまう。何でこんなことをするのか、よく判らない。
(問題例の絵)
 以上のことは、テストを行い、入選でそれを利用することに対する疑問である。しかし、そもそもスピーキングテストを行うことに、どのような意味があるのだろうか。もちろん、英語では「4技能」を学習するというタテマエで言えば、スピーキング能力だけ測定しないのはおかしいという考え方は出来る。しかし、限りあるテスト時間の中で、どのようなテストを行うのだろうか。テストには専用のタブレット端末・イヤホンマイク・防音用イヤーマフの3点を使用する。そして、例文の読み上げ質問を聞いて答える絵を見てストーリーを英語で話す自分の考えを述べるの4問について、答えるようになっている。

 まあ、最初にある「英文朗読」は理解出来る。英単語の読み方を知らなければ、上手に読めないだろう。でも、それは筆記テストでも判定はある程度可能だ。もし、英語独自の発音を厳しく採点するならば、確かに意味はあるだろうが、それが全中学生に可能だろうか。僕がよく判らないのは、「絵を見て答える問題」である。絵そのものの判断が(絵が小さくて)難しい。それに何が問題になっているのか、もうこういうテストをやるわけじゃないから難しい。でも自分が中学生なら判ったと思う。何故なら、問題にはパターンがあって、準備して臨めば出来るからである。つまり、スピーキングテストとは究極の暗記問題なんだろうなと思う。日常生活では使わない英語の発音を「過去問を繰り返してパターンを理解して覚えこむ」という能力を測るテストになるのである。
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