古市憲寿「誰も戦争を教えてくれなかった」(講談社、2013)。いやあ、突っ込みどころはいっぱいあると思うが、まあ1800円の価値はある。是非読んでみて欲しい本。
古市さんは東大大学院博士課程在学中だが、本を出して売れっ子になりNHKにもレギュラー出演。今日ニュース見たら、消費税増税どうする意見聴取メンバーの60人に入ってた。いや、そんなエライ役やってたの。僕は前に「上野先生、勝手に死なれちゃ困ります」を紹介し、上野千鶴子、古市憲寿師弟対談を聞きに行ったことがある。今度は戦争に関する本かあと思ったら、世界の戦争、平和博物館めぐりの旅行記で、最後に「ももクロ」との対談付き。なかなか商魂たくましい。一部で「炎上」してるらしいけど。
この中で僕が行ったことがある場所は数少ない。東京や沖縄の博物館はある程度行ってる。知覧の特攻平和会館には行った。広島も高校生の時の人生初の一人旅で寄った。シンガポールは行ったような気がする。79年のことであまり覚えてない。韓国の独立記念館は開館当日に韓国にいたので見に行ったけど、超満員で道が動かず行きつけなかった。中国やヨーロッパ、ハワイなどはそこ自体に行ったことがない。僕も関心があるテーマなんだけど、誰かがお金を出してくれないと行けません。恵まれてるなあ。
ハワイでたまたま戦艦アリゾナの記念館を見に行って、そこからこの平和博物館巡礼を思い立つ。そして、世界中で、博物館のディズニー化、そして決して熱心に見てはいない「連れられてきた若者」を見出している。今の国家は戦争を潜り抜けて体制を確立したという国が多い。そういうところでは、国家のアイデンティティを誇示する装置として、博物館は不可欠である。でも、展示品が並んでいるだけでは、まあ一回は見に来ても二度は来ない。箱ものを作ったら維持費がかかるし、見に来てもらう方策として、日本ではジオラマがあるくらいだが、世界各国ではゲームなど体験型博物館が増えているらしい。
だから、巻末に「戦争博物館ミシュラン」なるガイドが付いているが、その採点の最上位は「エンタメ性」なのである。オ~ッと。それでいいのかなあ。戦争や平和を考える施設に一番必要なものは、エンタメ性ですか??他に、「目的性」「真正性」「規模」「アクセス」を採点。総合1位は、ベルリンのザクセンハウゼン記念館・博物館というところで、得点88点。日本では意外なことに、茨城県の予科練平和記念館が特別賞ということになっている。その場所の得点は64点で、点だけなら広島平和記念資料館・原爆ドームの72点の方が上なんだけど。そこはエンタメ性が一つ星だけど、目的性、真正性、規模、アクセスがすべて4つ星。予科練の方はエンタメ性が4つ星なのに、アクセスが2つ星。こういう採点にどの程度意味があるかはともかく、一応紹介だけしておくと、沖縄平和祈念資料館=68点、知覧特攻記念館=52点、遊就館=56点、昭和館=52点、東京大空襲・戦災資料センター=56点、記念館三笠=64点、アウシュビッツ博物館=84点、侵華日軍南京大遭難同胞紀念館=72点、戦争記念館(韓国)=84点、アリゾナ・メモリアル=76点…とまだまだ続くので後は本書で。
アクセスと目的性とエンタメ性を同列で評価して意味があるのかなあ。大体エンタメ性ってあるだけで、怒り出す人もいるかも。でも、概して日本の博物館はつまらない。それは平和博物館に限らない。だから、日本人の戦争認識が確定していない、と言うだけの問題でもないだろう。この本で一番面白いのは、沖縄から平和をアピールするという場所である「沖縄平和祈念資料館」と、靖国神社内にあって日本の自衛戦争を主張していると思われている「遊就館」、実はこの2つの施設を作った業者が同じという事実を見つけたことである。「乃村工藝社」というところである。日本の多くの博物館を作っている会社で、他にもいっぱい平和博物館を手掛けている。だから、主義主張は多少違ってくるとしても、何となくどこも同じような演出空間に見える理由がこれで判った。
僕は最初「誰も戦争を教えてくれなかった」という書名に強い違和感を持った。じゃあ、何を教えてもらって来たの?という感じである。(まあ書名は上野千鶴子さんが選んだと出てるけど。)初中等教育は、基礎基本と常識である。高校までの勉強では、戦争だけを詳しく教えないのは当たり前である。それでも「日本史A」という科目が高校に出来ているので、昔よりは学校教えているはずだと思う。それに、僕もそうだけど、大事なものはみんな自分で勉強したものだ。自分で勉強してきた日本の近現代史だからこそ、生徒にも教えられるのである。それと同時に「家庭教育」でも戦争は教えられていないと思うが、親が戦争未体験世代になってると言うだけの理由でもない。親がいろんな問題にはっきりした意見を持っているという方が少ない。「ひと様に迷惑をかけないように」が親の教えで、つまりは「多数派が何なのかを見極めて、多数派の一員であってほしい」ということである。近現代史に入れ込んで、戦争に詳しくなって貰っても困るのである。でも、一応テスト前には覚えるべきことは覚えるけど、それはすぐ忘れる。歴史に限らない。どの教科であっても同じ。
戦争のあり方はどんどん変わっている。「命の大切さ」で平和教育なら、ロボット同士で人命が失われない戦争ならいいのか。そうなりつつある社会を描く最終節が刺激的。「ももクロ」のところは自分で読んでください。僕の感想は一言で言えば、懐かしかった。知識レベルはメチャクチャだけど、やる気と素直さが取り柄っていう生徒をずっと教えてきた。そういう人々が日本を支えている。このような若い世代を相手に教える教員の苦労を考えて欲しい。でも、こういう子たちと文化祭やったりするのは楽しそうでしょ。そうなんだよね、それが面白いなんだなあ。
古市さんは東大大学院博士課程在学中だが、本を出して売れっ子になりNHKにもレギュラー出演。今日ニュース見たら、消費税増税どうする意見聴取メンバーの60人に入ってた。いや、そんなエライ役やってたの。僕は前に「上野先生、勝手に死なれちゃ困ります」を紹介し、上野千鶴子、古市憲寿師弟対談を聞きに行ったことがある。今度は戦争に関する本かあと思ったら、世界の戦争、平和博物館めぐりの旅行記で、最後に「ももクロ」との対談付き。なかなか商魂たくましい。一部で「炎上」してるらしいけど。
この中で僕が行ったことがある場所は数少ない。東京や沖縄の博物館はある程度行ってる。知覧の特攻平和会館には行った。広島も高校生の時の人生初の一人旅で寄った。シンガポールは行ったような気がする。79年のことであまり覚えてない。韓国の独立記念館は開館当日に韓国にいたので見に行ったけど、超満員で道が動かず行きつけなかった。中国やヨーロッパ、ハワイなどはそこ自体に行ったことがない。僕も関心があるテーマなんだけど、誰かがお金を出してくれないと行けません。恵まれてるなあ。
ハワイでたまたま戦艦アリゾナの記念館を見に行って、そこからこの平和博物館巡礼を思い立つ。そして、世界中で、博物館のディズニー化、そして決して熱心に見てはいない「連れられてきた若者」を見出している。今の国家は戦争を潜り抜けて体制を確立したという国が多い。そういうところでは、国家のアイデンティティを誇示する装置として、博物館は不可欠である。でも、展示品が並んでいるだけでは、まあ一回は見に来ても二度は来ない。箱ものを作ったら維持費がかかるし、見に来てもらう方策として、日本ではジオラマがあるくらいだが、世界各国ではゲームなど体験型博物館が増えているらしい。
だから、巻末に「戦争博物館ミシュラン」なるガイドが付いているが、その採点の最上位は「エンタメ性」なのである。オ~ッと。それでいいのかなあ。戦争や平和を考える施設に一番必要なものは、エンタメ性ですか??他に、「目的性」「真正性」「規模」「アクセス」を採点。総合1位は、ベルリンのザクセンハウゼン記念館・博物館というところで、得点88点。日本では意外なことに、茨城県の予科練平和記念館が特別賞ということになっている。その場所の得点は64点で、点だけなら広島平和記念資料館・原爆ドームの72点の方が上なんだけど。そこはエンタメ性が一つ星だけど、目的性、真正性、規模、アクセスがすべて4つ星。予科練の方はエンタメ性が4つ星なのに、アクセスが2つ星。こういう採点にどの程度意味があるかはともかく、一応紹介だけしておくと、沖縄平和祈念資料館=68点、知覧特攻記念館=52点、遊就館=56点、昭和館=52点、東京大空襲・戦災資料センター=56点、記念館三笠=64点、アウシュビッツ博物館=84点、侵華日軍南京大遭難同胞紀念館=72点、戦争記念館(韓国)=84点、アリゾナ・メモリアル=76点…とまだまだ続くので後は本書で。
アクセスと目的性とエンタメ性を同列で評価して意味があるのかなあ。大体エンタメ性ってあるだけで、怒り出す人もいるかも。でも、概して日本の博物館はつまらない。それは平和博物館に限らない。だから、日本人の戦争認識が確定していない、と言うだけの問題でもないだろう。この本で一番面白いのは、沖縄から平和をアピールするという場所である「沖縄平和祈念資料館」と、靖国神社内にあって日本の自衛戦争を主張していると思われている「遊就館」、実はこの2つの施設を作った業者が同じという事実を見つけたことである。「乃村工藝社」というところである。日本の多くの博物館を作っている会社で、他にもいっぱい平和博物館を手掛けている。だから、主義主張は多少違ってくるとしても、何となくどこも同じような演出空間に見える理由がこれで判った。
僕は最初「誰も戦争を教えてくれなかった」という書名に強い違和感を持った。じゃあ、何を教えてもらって来たの?という感じである。(まあ書名は上野千鶴子さんが選んだと出てるけど。)初中等教育は、基礎基本と常識である。高校までの勉強では、戦争だけを詳しく教えないのは当たり前である。それでも「日本史A」という科目が高校に出来ているので、昔よりは学校教えているはずだと思う。それに、僕もそうだけど、大事なものはみんな自分で勉強したものだ。自分で勉強してきた日本の近現代史だからこそ、生徒にも教えられるのである。それと同時に「家庭教育」でも戦争は教えられていないと思うが、親が戦争未体験世代になってると言うだけの理由でもない。親がいろんな問題にはっきりした意見を持っているという方が少ない。「ひと様に迷惑をかけないように」が親の教えで、つまりは「多数派が何なのかを見極めて、多数派の一員であってほしい」ということである。近現代史に入れ込んで、戦争に詳しくなって貰っても困るのである。でも、一応テスト前には覚えるべきことは覚えるけど、それはすぐ忘れる。歴史に限らない。どの教科であっても同じ。
戦争のあり方はどんどん変わっている。「命の大切さ」で平和教育なら、ロボット同士で人命が失われない戦争ならいいのか。そうなりつつある社会を描く最終節が刺激的。「ももクロ」のところは自分で読んでください。僕の感想は一言で言えば、懐かしかった。知識レベルはメチャクチャだけど、やる気と素直さが取り柄っていう生徒をずっと教えてきた。そういう人々が日本を支えている。このような若い世代を相手に教える教員の苦労を考えて欲しい。でも、こういう子たちと文化祭やったりするのは楽しそうでしょ。そうなんだよね、それが面白いなんだなあ。
因みに、作家筒井康隆が最初に就職した会社が乃村だったと思います。
フジヤは、その後コンベンション業界に進出したようですが。
今も大して変わっていないのではないかと思いますが。