尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

登別温泉の第一滝本館ー日本の温泉⑳

2022年08月26日 22時36分05秒 |  〃 (日本の山・日本の温泉)
 前回は鹿児島県・指宿温泉の「白水館」という大旅館を取り上げた。大旅館というつながりで、北海道・登別温泉第一滝本館を取り上げたい。ここはとても有名な温泉で、僕の世代だとザ・ドリフターズ版いい湯だな」の一番最初に「ここは北国 登別の湯」と歌われている。登別、草津、白浜、別府と続く一番初めである。この歌はもともと永六輔作詞、いずみたく作曲、デューク・エイセス歌の「にほんのうた」シリーズの一曲だった。京都の「女ひとり」、宮崎の「フェニックス・ハネムーン」なんかと同じ。元は群馬県の歌だから、草津、伊香保、万座、水上の4つが出てくる。ドリフ版で初めて全国ヴァージョンになった。
(第一滝本館の大浴場)
 なんて知ってたみたいに書いたけれど、実は今調べて知ったのである。そうか、この歌は二つの歌詞があったのか。その登別温泉だけど、江戸時代末には探検家松浦武四郎なども訪れ、知られるようになった。語源はアイヌ語の「ヌプル・ペツ」(水色の濃い川)とされる。湧出量1日1万トン、9種類の泉質から「温泉のデパート」と言われる北海道随一の温泉地として有名だ。しかし、僕が訪れたのは北海道の温泉の中では遅い方だった。北海道旅行は登山目的だったので、百名山にたくさん選ばれている道東、道央に行くことが多かった。だけどまあ、一度は登別にも行きたいと計画に入れた年がある。
(第一滝本館全景)
 その時はどの宿を予約するか調べて「第一滝本館」だなと思った。登別最初の旅館で、1888年に滝本金造という人が開いたという歴史ある宿である。少し大きすぎる気がしたが、何より良いなと思ったのは「泉質の多さ」である。登別温泉は9つの泉質があるというが、第一滝本館だけで、そのうちの5つに入れるのである。大浴場は「芒硝泉」で酸性度が一番高い。露天風呂は「硫黄泉」で、これも酸性度が高い。大浴場の中に、他の「酸性緑ばん泉」の緑の湯、アルカリ性の「重曹泉」、そして「食塩泉」の浴槽がある。
(重曹泉の浴))
 登別温泉には他に明礬泉、鉄泉、酸性鉄泉、ラジウム泉もあるというが、全部入るのは大変。一つの旅館に5つもまとまっているのは有り難い。全部入るのが大変なぐらいだ。そしてもう一つ、「地獄谷」と言われる温泉が噴出する源泉を大浴場から一望できるのである。箱根の大涌谷などと同じような風景である。しかし、多くの温泉では宿から歩いて見に行く。登別でも歩いて見られるけれど、同時にお風呂から見えるのがすごい。これは他の温泉にはないだろう。温泉なんだからお風呂が大事である。いろんな素晴らしいお風呂に入ったけれど、こんなに多彩な泉質を一軒の宿で経験できるところは稀だ。それに飲泉もできる。
(地獄谷を一望する)
 大旅館は宿泊費も高い。例えば1万円の宿に対して、2万円の宿に泊まったら、2倍の満足度を得られるだろうか。僕の経験だと、そうはいかない場合が多いと思う。大きい宿は客も多いから、客の扱いが雑になったり、料理も作り置きばかりになったりする。部屋の大きさだけは、確かに大旅館の方が広い。法師温泉鶴の湯温泉など、泉質は素晴らしいけど、狭いなあという部屋だった。しかし、部屋だけ広くても仕方ない。一般的な傾向では、大旅館も時々いいけど、小さくて安い宿の方が面白いことが多いと思う。でも第一滝本館の料理は満足だった。あれだけの大旅館なのに高いレベルを維持していたのは立派。
(のぼりべつクマ牧場)
 登別にはロープウェイで行く有名な「のぼりべつクマ牧場」がある。ヒグマを飼育するというとんでもない発想だけど、ここは行く価値あり。観光地のこの手の施設は不満足も旅情のうちと思うけど、ここは純粋に面白かった。というか、野生ではヒグマに会いたくないから、ここで見てスゴいなと思ってしまった。「マリンパーク・ニクス」という水族館にも行った。一時経営危機が伝えられたが、今も何とかやっているようである。登別は一度は行きたい温泉だが、高くても第一滝本館が良いと思う。
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