尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

案外低かった投票率、多かった接戦区ー2024衆院選②

2024年10月29日 22時40分52秒 |  〃  (選挙)

 2024年衆院選の話。2回目は、まず投票率を検討したい。今回の投票率は、小選挙区で53.85%比例区で53.84%だった。(少数だけど、比例区だけ投票しない人がいるのである。)前回はそれぞれ、55.93%、55.94%だったから、今回は3.1%ほど低かったのである。全国の比例区票は、54,549,720票だった。日本の人口は約1億2千万人。有権者は約1億人になる。今回の投票率が約54%ということで、全国でおおよそ5400万人が選挙に行ったわけである。

 前回の投票総数は57,465,978人だったから、大体300万人が減ったことになる。この間に亡くなった人、新たに選挙権を得た人などもいるので、何も前回行った人が今回は棄権したということではない。しかし、これほど減ったのには理由があるはずだ。一番先に思いつくのは、「自民党支持者がお休みした」という仮説だ。「裏金」問題で批判が強く、今回は自民党に入れる気がしなかった。しかし、立憲民主党や他の野党に入れちゃうほどの気もしない。そういう人が存在したんじゃないだろうかという予想である。

 前回の自民党比例区票を見ると、19,914,883票だった。今回の自民党比例区票は、14,582,690票である。約533万票も減らしている。300万人より多いが、今回から衆院選に参入した参政党が約187万票日本保守党が約115万票ほどを獲得している。「維新」も約300万票ほど減らしているし、他党の動向を細かく検討する必要があるが、大体の方向として「保守票が自民、新興政党、棄権」に分れ、前回自民票に入れた人たちが減った分、投票率が下がったと考えてよいのではないか。その傍証として、自民党大物議員の得票も減らしている人が多い。(区割り変更の影響があった人もいるだろうが。)

 例えば、岸田文雄(13万4千→10万)、麻生太郎(10万5千→9万2千)、菅義偉(14万6千→12万)、河野太郎(21万→13万)、小泉進次郎(14万7千→13万)、高市早苗(14万2千→13万)といった具合で、これら直接「裏金」に関与したわけではなく、少し減らしても悠々と当選出来る(一人も対立候比例で当選していない)人たちも、軒並み減らしているのである。(河野氏などは激減である。)なお、さすがに石破茂(10万5千→10万6千)首相だけは、少しだけど増やしている。これらの人の選挙区には、有力な対立候補もいないので、どうせ自分が行かなくてもという気になりやすいこともあるだろう。

 ところで、それより気に掛かるのは、広島県と沖縄県で投票率が5割を切っていることだ。広島は前回52.13%が、今回48.40%沖縄は前回54.89%が、今回49.96%である。沖縄の激減ぶりはよくよく考える必要がある。自公政権にも、野党と一部保守系が協力する「オール沖縄」にも、期待出来ない、本土の政権枠組がどうなろうと、沖縄が抱える問題は解決出来ないという「怒り」「抗議」「諦め」のような気分が投票率低下の背景にあるのではないか。

 広島の場合はよく判らないけど、地元の岸田首相を支える意気込みだった人が失望したのかもしれない。あるいは日本被団協のノーベル平和賞受賞にもかかわらず、核禁条約に後ろ向きな自民党への失望が他県より大きいのかも。(長崎県も56.89%から、52.48%へと全国平均以上に減っている。)さらに河井元法相の事件が後を引いていて、地元の保守系地方議員の動きが今も弱くなっているのかもしれない。(7区から6区へ減区され、なじみが少ない候補になった地区が多かったのも影響したかも。)

 続いて接戦区を見てみたい。今回は今まで以上に超接戦が多く、1,000票以内の決着が9選挙区もあった。投票率が低く、与党の勢いが弱いことの影響だろう。また野党乱立の結果、比例区で復活当選する人が2人いて、合計で3人当選者がいる選挙区も多かった。(5つもある。)

和歌山1区 124票差 山本大地(自民、当選=70,869)、林佑美(維新、比例当選=70,745)

愛知10区 162票差 藤原規真(立民、当選=59,691)、若山慎司(自民、比例当選=59,529)

栃木3区 178票差 梁和生(自民、当選=45,546)、渡辺真太朗(無所属、落選=45,368)

群馬3区 214票差 笹川博義(自民、当選=74,930)、長谷川嘉一(立民、比例当選=74,716)

東京28区 336票差 高松智之(立民、当選=50,626)、安藤高夫(自民、比例当選=50,290)

東京10区 591票差 鈴木隼人(自民、当選=93,490)、鈴木庸介(立民、比例当選=92,899)

富山1区 738票差 田端裕明(自民、当選=45,917)、山登志浩(立民、比例当選=45,179)

秋田1区 872票差 冨樫博之(自民、当選=60,387)、寺田学(立民、比例当選=59,515)

神奈川6区 926票差 青柳陽一郎(立民、当選=80,207)、古川直季(自民、比例当選=79,281)

 こんな僅差で決まることもあるんだから、「選挙なんて自分が行っても変わらない」というもんでもない。確かに一票差ではないけれど、名も顔も知らぬ何十万人かの中で、200人以内で決まることもあるのだから。それにしてもこういう選挙区は候補も支援者も大変だろう。痺れるような大接戦、両チームがノーヒットノーランのままで9回を迎えた野球の試合みたいな感じだ。ま「開票速報」を見るのが好きな「選挙観戦ファン」の感想だけど。それにしても以上で勝った9人のうち、6人は自民党。自民はもっと減らすところを数百人の投票行動により、何とか191議席になったわけである。


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