尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

龍神温泉と川中温泉、「美人の湯」の魅力ー日本の温泉④

2021年04月22日 23時07分40秒 |  〃 (日本の山・日本の温泉)
 温泉の話4回目。「美人の湯」と言われる温泉がある。「日本三大美人の湯」も選ばれているけど、知っているだろうか。しかし、その前に疑問もあるだろう。そもそも温泉に入るだけで美人になるなんてあるのか。もちろん、温泉へ行っただけで「美人」になるわけがない。でもお湯に浸かった瞬間に「おっ、肌がスベスベになったぞ」と声をあげたくなる温泉は間違いなくある。

 検索してみると、泉質的には「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「硫黄泉」が主に「美人の湯」と言われるらしい。さらに「アルカリ性単純温泉」を加えて、「四大美人泉質」なんだそうだ。炭酸水素塩泉はクレンジング効果を持つとされ、硫酸塩泉では肌の蘇生効果が期待、硫黄泉はシミの予防効果があると出ている。

 アルカリ性温泉の場合は肌がスベスベになった気がする。「アルカリ性」とは水溶液中の水素イオン濃度が高いことで、アルカリ水溶液は石けんのようにヌルヌルする。脂肪やタンパク質を分解する。水素イオン濃度をPHで表わし、PH7が中性、数値が高くなるほど水素イオン濃度が高くなる。中にはPH10を超えてPH11にもなる温泉もある。石けん水やアンモニア水並みで、そこまで行くとヌルヌルし過ぎの感じがする。そんなアルカリ性水溶液にどっぷりと身を漬けるわけだから、一浴すれば美肌効果を期待できそうだ。

 さて、元に戻って「日本三大美人の湯」とは、和歌山県龍神温泉群馬県川中温泉島根県湯の川温泉である。多くの人は名前を知らないだろう。龍神温泉は温泉ファン、あるいは文学ファンには知られているが、他の二つは相当の温泉通でも行ってない人が多いと思う。僕も湯の川温泉には行ってない。函館にも同名の温泉があって、そっちなら行ってるけど。島根の湯の川温泉は宍道湖の西南部、出雲空港のすぐ近くに数軒の宿があるという。

 龍神(りゅうじん)温泉は僕が温泉好きになった場所だ。新婚旅行で行ったのである。学期途中だったので、あまり休めず国内で南紀地方を回った。それまでも温泉に入っていたけど、家族旅行とか合宿などの場合である。伊豆の温泉鬼怒川温泉などが多い。大体単純温泉だから、宿に付いてる大きなお風呂程度の認識しかなかった。若い時に京都や北海道、中国地方などへ行った時も、温泉宿に泊まろうという発想はなかった。
(龍神温泉の風景)
 ところが龍神温泉は大違いだった。その前に泊まった川湯温泉も素晴らしかった。熊野本宮の近くで、川を掘ればお湯が出るというところである。時期的に川の大露天風呂は入れなかったけど、熊野自体がすごい霊気に満ちた場所だった。そして次の日が龍神温泉である。ここは中里介山のあの大長編小説「大菩薩峠」で、机龍之介が眼を治すために湯治した場所だ。長野県の白骨温泉と並んで、「大菩薩峠」を知ってる人なら一度は行きたい場所である。

 龍神温泉には「上御殿」「下御殿」という紀州藩主向けに作られた宿があるが、旅行社に頼んだら「有軒屋」という宿になった。そこも雰囲気はあったけど、とにかくお風呂の泉質がすごい。入るとすぐに、体にまとわりつくような泉質に驚いた。確かにこれは「美人の湯」だと納得した。炭酸水素塩泉で、PH7.8。だから強アルカリ泉ではない。しかし、この程度の弱アルカリ泉の方が体に優しい感じがする。お湯を集中管理していると聞いたが、その後に出来た宿もあるようだし、日帰り施設「元湯」は源泉掛け流しだという。あの泉質の素晴らしさは行ってみないと判らない。
(龍神温泉元湯)
 一方、群馬県の川中温泉の「かど半旅館」は首都圏でもあまり知られていない一軒宿の温泉。群馬と言ったら、草津伊香保四万水上など有名温泉が綺羅星のごとく湧き出る温泉県である。その中で川中温泉の知名度は今ひとつだ。東吾妻町にある小さな宿で、草津などへ行く途中になる。そこにある年の冬に行こうと思った。寒いときには温泉だと思ったが、天気予報は雪。それでも何とか行きたいと思っていたが、朝起きたら首都圏全体が珍しいぐらいの大雪だった。高速道路も鉄道も完全に止まってしまって、とても行けない。何とか行きたいと前日に電話していたが、やむなく当日キャンセルとなった。残念。
(川中温泉かど半旅館)
 それでは申し訳ないから、少しして改めて出掛けた。しかし、1回目の大雪があまりにも印象深くて、本当に行けたときの想い出が今ひとつなのは皮肉だ。硫黄泉、石膏泉で、PH7.4と出ている。弱アルカリ泉だが、かなり弱である。だから思ったよりヌルヌル感が低かった。上州名物のおっきりこみうどんが宿の自慢にもなっている。それを頂いて帰ってきた次第。群馬県では四万温泉が大好きすぎて、最近他の温泉に行かなくなってしまった。首都圏に住んでる人はコロナ禍が一段落したら、この関東にある「美人の湯」に行ってみては。
(川中温泉のお風呂)
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