なじんでいた中央図書館が閉館した後は、線路を越えた、駅の向こう側の図書館を
利用しています。
そこの絵本の棚は、あいうえお順ではなく、出版社別。それまでの図書館とは
勝手がちがうので、戸惑うこともありますが、思いがけない棚で、思ってもみなかった
絵本に出会うこともでき、出版社別もなかなかいいなあと、思いはじめているこの頃です。
先日、そういうふうに出会えたのがこの絵本。大好きなバーバラ・クーニーの作品です。
『すてきな子どもたち』
アリス・マクレラン 文
バーバラ・クーニー 絵
きたむらたろう 訳
原題は『ROXABOXEN』。アリゾナ州ユマ町2番街8番通りの南東端の丘に、
ロクサボクセンという名前で知られていた場所があり、作者アリス・マクレランの
お母さんが、子どもの頃に体験したことをもとにしてできたお話だそうです。
実際の地名がわからなくても、表紙を開き、扉に描かれている山と大地と空、それに
赤い花をつけたひょろっとした木を見たら、そこがとても乾いた土地であることが
すぐわかります。
ジョージア・オキーフの絵が好き、というのと同じように、バーバラ・クーニーの描く絵が
好きな私は、絵本の本文を読み始める前に、絵を先に見たいという誘惑に勝てず、
作品集を見るようにクーニーの描く絵を最後まで見てしまいます。
ロクサボクセンという砂漠の中の限定された場所は、クーニーの目と、感性と、絵筆を
通して、見たこともなければ、行ったこともない場所を、もしかしたら私も知っている所なのでは、
と思わせるほどに身近なものとしてくれる力を秘めています。
なぜなのでしょう‥ 空の色のせいかなと思うのですが。
暗くなるまで。正確には、暗くなる前の、夕焼けが終わった頃まで、外で遊んだ記憶が
残っている人なら誰でも、同じように感じるのではないかしら。
お話を読んでいくと、さらに、小さい頃友だちと遊んだ記憶が甦ってきます。
本の中のロクサボクセンの子どもたちは、白い石を並べて、家や通りの区分けとし、
黒くて小さい石はお金にしました。ほかにも‥
古い木箱は、おのぞみしだいでたなにもなったし、テーブルにもね。
陶器のかけらを、おさらにしたけど、
丸いかけらなら、ぴったりでした。
ロクサボクセンには、ロクサボクセンのルールがあり、私たちには私たちのルールが
あり、きっとあなたたちには、あなたたちだけのルールがあったことと思います。
すべてを思い出すことはできないけれど、断片だけでも、覚えているのなら、持ち続けていたいですね。
無条件で、自分の存在を肯定してくれる人。
無条件で、無償の愛を与えてくれる人。
そういう人の存在が、人間の成長過程で大きな意味を持つのと同様に、小さい頃に遊んだ
記憶の断片ー場所だったり、思い出のものだったり、夕暮れの空だったり、風の匂いだったりーは、
なくてはならない心の糧なのだと思います。
ロクサボクセンの、ひょろっとした枝に赤く美しい花が咲いている木(サボテンのようですが)は、
オコティーヨという名前だそうです。なんだかメキシコの植物っぽい名前で、素敵です。