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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

おとしものしちゃた

2006-06-26 16:30:53 | ひらきよみ(読み聞かせ)
 すこし前になってしまいますが‥6月16日(金)5年生のクラスでの「読み聞かせ」で、この絵本を読みました。
 よーく、文字を見てください。「おとしものしちゃった」ではなく、「おとしものしちゃた」なんです。


おとしものしちゃた

『おとしものしちゃた』

  中山千夏 文
  長新太  絵







 私がこの絵本を知ったのは、今から1ヶ月くらい前。珍しくメモも見ず、目当ての本もなく、ただ絵本の棚を端から見ていて、偶然見つけ、ひとめぼれしてしまったのです。

 何がそんなによかったのかというと‥何と言っても、長新太さんが描くこの絵がよかったのです。
 
 表紙の中の四角いピンク色の子は、シャキットまちのサッサさんという名前なんですが、このサッサさんが抜群にかわいい!!と思ったのです。
 長新太さんの数多くの作品の、きっとまだ半分も読破してないと思うのですが、そんな状況で、断言してしまうのもどうかなあとは思うのですが。それでも言い切ってしまうと、私が出会った長新太作品の中で、これほど、自分の好きな色にぴったりの作品は初めてだったのです。開いたどのページの色も、形も、どれもみんな、私の気持ちの大きさにぴったりあったというか‥まるで知らない人がカゴにたくさんのフルーツを入れて持ってきてくれて、そのフルーツのどれもが、私の好みのものだったみたいな、そんな嬉しい驚きさえ感じました。

 サッサさんのピンク色もいいし、月がのぼったときのオレンジ色の空もいい。
 とおりかかったロケットの色も、ロケットから出る迫力ある煙の色もいい。
 ページ半分埋ったたんぽぽの黄色も、そこから出てくるでんでんむしの渦巻きの色もいいのです。

 テキストは、中山千夏さん。自由国民社から出ている「中山千夏の絵本」シリーズのうちの1冊のようです。ほかにも長谷川義史さん絵の『となりのイカン』や、和田誠さん絵の『どんなかんじかな』、安西水丸さん絵の『あげたらおはなし』などが出ています。

 『おとしものしちゃた』は、なんでもてきぱきパッパとやらないと気がすまないサッサさんが、いろんなものを片付けすぎて、小さい「っ」をどこかへ落としてきてしまうというお話です。

 のはらでたんぽぽかたづけた
 はまべでかいがらかたづけた
 とおりでのらねこかたづけた
 ひろばでかみくずかたづけた
 ついでにほしくずかたづけて
 そこでたいへんきがついた

 
なぜ、サッサさんは紙屑と一緒に星屑も片付けてしまったのでしょう?
 なぜ、そのときに小さい「っ」を落としてしまったのでしょう??

 ちょこっとそのあたりがひっかかっているのですが、それよりも、「っ」をなくしたサッサさんの困りようがかわいそうで‥。
 何かをなくしてしまうということは、その原因を何で、何でと探ったところでどうにかなるわけではなく、ないものはもうないのだから、ただひたすら探し求めるしかないじゃないかと、いつか自分自身に向って言い聞かせてみたことを思い出し、そして尚更サッサさんが不憫に思えてくるのです。

 だから、でんでんむしやってきて、

 ゆっくりゆっくりかおだして
 「あなたはどなた?どうしたの?」

と言ってくれたときは、それはそれはサッサさん、嬉しかったことでしょう。

 でんでんむしは、サッサさんの話をがんばって100回聞いて、たんぽぽをもう片付けないでくれたらの条件付きで、わたしのちいさいつをあげます 思わずサッサさんが頷くと‥

 そのとたん
 ちいさいつがつつつともどったんだ

 
でんでんむしはこう言いながら去って行きます。

 「めでたいですね」
 でんでんむしもじょうきげん
 「わたしはなくてもいいんです」
 のんびりはなせばいいんだし
 かたづけなければならないときも
 はしらなければいいんだし
 のろのろそろりでいいんだし
 ほらね
 ちいさいつなしで
 なんとかなりますだいじょうぶ」
 たんぽぽのあいだを
 しあわせそうにはってった

 
いろんなことがこの言葉に集約されていて、いろんなことを汲み取ることができる言葉です。

 私は、ここの箇所が読みたいばっかりに、この本を、5年生の読み聞かせに選んだのかなと、自分でも思っています。このゆったりとしたことばのリズムがなんとも言えず心地よく、お風呂の中でつらつら考えている時に、ふと浮かんできたりしたのです。



 今日この絵本のことを書くつもりはなかったのですが。kayoさん や、miyacoさん のところで長新太さんの記事を読み、「今日」書くことに意義があるように思えてきたので、そうすることにしました。
コメント (2)
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