my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

どこまでしんじられるかー

2010-03-18 16:11:10 | 好きな本
買ってから、ずっとそのままにしてあるのは知っていたのですが、
もう1年もたっていたなんて‥
昨日、確かめたら、末盛さんのセミナーの最終回で紹介されて、
その日に買って帰った本だったのです。


スノーグース
   ポール・ギャリコ 作   矢川澄子 訳


いいわけですが‥すぐに読み終わってしまいそうだったので、なんだかもったいないような
気がしていたのです‥ページも通常の文庫本より白くて上質の紙だったし。
でも、読み終わった今は、なんでもっと早く読まなかったのだろうと思っています。


表題作の「スノーグース」の他に、「小さな奇蹟」と「ルドミーラ」の合計3篇が
おさめられていて、3作は、場所も時代背景も違うのだけれど、共通しているのは
人間ともの言わぬ動物との、深い繋がりです。
そして、その底にあるのは、自分が信じていることを、どこまで本気で
信じていかれるか(いられるか)ではないかなあと思っています。


「スノーグース」は、とても美しくて、哀しいはなしでした。

主人公のラヤダーは、「燈台に住みついている、あのけったいな絵かきのやつ」
周囲の人から呼ばれていたのに、なぜ、同胞を助けるために危険極まりない場所へ、
自ら出かけていったのでしょう。
それは人の役に立つことができる自分自身を、信じていたからではないか、と思いました。
傷ついた白雁(スノーグース)を抱きかかえてやってきた少女、フリサと、白雁とラヤダー。
白雁がもの言えぬことがもどかしいような、だからこそいいような、そんな気持ちです。


「小さな奇蹟」は、信じる気持ちがどれほど大切かを教えてくれます。
ろばのヴィオレッタを助けたい一心のペピーノは、一度や二度、断られたくらいでは
決して諦めません。

ヴィオレッタは、とてもステキなろばなんです。
口の両端あたりにある独特の表情があって、なにかこう愉快なたのしいものを
目にしてこのろばがにっこり微笑んでいるみたいに見えたのです。


「スノーグース」の舞台はイギリス、ペピーノは、聖フランチェスコ寺院がある
アッシジに住んでいました。
「ルドミーラ」の話は、リヒテンシュタイン公国が舞台です。

山下りの行事のクライマックスに向けて、話は進みます。
夏中、アルプスの山の中で過ごした乳牛の、乳やクリームやチーズの出来を争い
それを皆が讃えあうとても大切なお祭りで、ある年おこった「奇蹟」です。
でも、奇蹟はぴかっと光った啓示とともに起こるのではなく、地道に信じ続けた気持が
うまい具合に重なり合って、作用しあって、起こるのかもしれないと思わせてくれます。




もう何十年も前、同じ作者の『ジェニィ』とか、『雪のひとひら』を
読んだような気がしているのですが、まったく思い出せません。
再読のチャンスですね・笑。

最後になりましたが、矢川澄子さんの日本語訳がとてもいいなあと思いました。


コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする