モイーズの「ソノリテについて」を見てみると、初めは2音だけ。4分音符と、全音符。2音符はいくら伸ばしても良い。伸ばした後すばやく息を吸い、良いと思った音を出来るだけ再現しながらもう一度。
長い音を出来るだけ均等に、美しく伸ばすことは、とても難しいです。フルートは息を吹き込まないと鳴らない楽器です。均等に鳴らすということは、息を吹き込み続けるということ。息は肺と気道、口を通って出てきて、当然ながら身体を止めては息を吹き続けることはできません。
次の「低音の柔軟性」の課題では、4分音符が4つ書いてあって、その課題が音を変えていくつも。この4つの音を60の速度で4拍づつクレッシェンド、ディミュニエンドで。これもやはりロングトーンの練習で、できるだけなめらかに増幅し、減衰する。
単純なことほど、ごまかすことができず、難しい。
陶芸家は、同じ器を同じサイズでいくつも作り続けることが出来てこそ一人前と言われるそうです。
ラリューさんが、「フルーティストが技術に費やす時間は、ピアニストほど取らなくても良い、その分ソノリテに時間を費やすべきだと思う。」と先日言っておられました。
最近、ソノリテをしているとチベットの瞑想のための楽器シンギングボールが、イメージにあがってくることがあります。
シンギングボールの金属の器の周りを木の棒でこすりながら回すと、金属が共鳴して音が鳴ります。ワイングラスの口に水をつけて回すと、音がするのと同じ原理です。力を入れすぎたり、離れてしまったりすると音は全く出ません。ちょうど良い微かな一定の力で触れるくらいで回していると、かすかな音がして、そのうち共鳴が共鳴を呼び、腹の底に響くような音がしてきます。
一瞬何処でなっているのかわからないけれど、確かな響く音です。
心や体がゆさぶられて、すっきりする。お風呂に入ったみたいな感じ。
フルートで再現すれば、身体を緩めて共鳴を、さえぎらないようにする。しかし、手放しで緩めるではなくて、細心のコントロールで微かに力を入れる。…もうホンノ少し。