今月MAKIKYUは南九州へ出向く機会があり、「MAKIKYUのページ」でも既にその際に遭遇したリバイバル急行列車「最南端」号などを取り上げていますが、今回の旅行は昨年秋に宮崎県のJR日南線で走り始めた特急「海幸山幸」号への乗車が最大の目的でした。
「海幸山幸」号は宮崎~南郷間を、土日祝日や長期休暇期間のみ運転する臨時特急列車で、日南線の非電化区間(宮崎空港アクセスが関連する南宮崎~田吉の1駅間以外)では唯一特別料金を必要とする列車にもなっています。
「特急」を名乗りながらもワンマン運転を行い、途中駅でわざと多めに停車時間を確保するなど、通過駅は多数存在するものの速達性は全くなく、特急らしくない列車というのも大きな特徴です。
そのため特急料金は実質的に設備料金化しており、列車の性質は同じJR九州の鹿児島県内を走る特急「はやとの風」号などと同様に、完全に観光向けに特化していると言えます。
「はやとの風」号では、内装を大改造したとはいえ、デッキなし一般型気動車を抜擢した事が、運転開始時に大きな話題となりましたが、「海幸山幸」号は2005年の台風被害によって、壊滅的な被害を受けてそのまま復旧することなく廃線となってしまった高千穂鉄道において、観光向けトロッコ列車「トロッコ神楽号」として運行していた気動車を、JR九州が購入・改造して使用しているのが大きな特徴です。
第3セクター鉄道→JRへの譲渡車両というだけでも異色ですが、この様な車両を優等列車へ抜擢するのは前例がなく、「海幸山幸」号の運行形態や使用車両の異色ぶりは、JR各社で数多く走る在来線特急の中でも、非常に際立っていると言えます。
こんな列車ですので、運行形態や車両の経歴だけでも非常に興味深いもので、JR九州では既存の一般型気動車・キハ125形の一部に編入し、高千穂鉄道での形式(TR400形)を意識してか、400番台という番台区分がされているのも注目点です。
これに加えJR九州らしく某デザイナーの手によって、内外を派手に改装しており、英語標記やロゴマークを多用した外観や、木材を多用した内装などは、最近の某デザイナーが手がけた車両全般に見られる傾向が強く見られますが、車両幅が狭い事を逆手にとって、車内だけでなく車両側面にまで木材を貼り付けている事も大きな特徴となっています。
木材を貼り付けた側面を見ると、遂にここまでやったか…と感じる程強烈な印象を受け、個性の強い車両になっていますが、こんな車両が今後他でも登場する機会があるのかも気になる所です。
当初TR400形として導入された高千穂鉄道では、観光列車としての活躍が期待されながらも、災害によって僅か2年程度しか活躍できず、MAKIKYUも高千穂鉄道時代の姿は延岡駅で一度目撃した事があるものの、トロッコ列車はおろか高千穂鉄道自体に乗車する機会もなく、廃線を迎えてしまったのは非常に残念でしたが、「トロッコ神楽号」から「海幸山幸」と名称を変え、活躍の舞台を南に移しながらも、引き続き宮崎の地を走り続ける機会に恵まれたのは幸いで、今度こそは末永い活躍を期待したいと感じたものでした。
写真は特急「海幸山幸」号(キハ125形400番台)と、ロゴマークや木材を用いた側面が目を引く中で、意外過ぎる程シンプルに感じてしまう行先・号車標記の様子です。
異色な経歴や外観に劣らず、強烈な印象を受ける車内の様子に関しては、近日中に別記事で取り上げたいと思います。
あと高千穂鉄道で以前TR400形として活躍していた時代の様子を取り上げた記事もありますので、興味のある方はこちらをクリックして下さい。