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奈良交通・八木新宮線(1)~使用車両は長距離路線にも関わらず…

2010-09-10 | バス[近畿]

今月初めに1週間程更新を休止していた「MAKIKYUのページ」ですが、その間の数日MAKIKYUは有効期間終了が迫る青春18きっぷなどを利用し、西日本方面へ出向いていました。

その際には関西まで青春18きっぷを利用し、JRで移動した後に別途運賃を支払い、奈良交通の路線バスを利用する機会があったのですが、その際に利用した路線が「八木新宮線」と呼ばれる路線で、この路線は名前の通り近鉄大和八木駅~JR新宮駅間を結んでいます。

鉄道関係に精通している方や、関西の地理に長けている方であれば想像できるかと思いますが、大和八木~新宮間は相当な距離があり、紀伊半島を縦断する事で鉄道利用よりも距離的に短くなるとはいえ、八木新宮線の路線長は片道160kmを超えています。

この路線長は一般路線バスの中では日本最長の距離を運行する事でも知られており、所要時間も片道6時間半程と、路線バスにしては突出した存在となっています。

八木新宮線は路線バスとしては突出した存在であるだけに、日本一の路線バスという事を奈良交通自体もHPなどで盛んに宣伝している程ですが、MAKIKYUも大型2種免許持ちバスファンの一人として、この路線には是非1度乗車してみたいと以前から乗車を目論んでいたものですが、その念願はようやく今月になって達成できたものでした。

この八木新宮線は一応「特急」を名乗っているだけに、新宮周辺の和歌山県内では熊野交通の路線バスと並行する区間で停車停留所がかなり限られているものの、それ以外はごく一部の停留所を通過するだけとなっており、また超長距離路線であるだけに途中3箇所(五条バスセンター・上野地・十津川温泉)の休憩時間も設けられるなど、特急とは名ばかりといった印象があります。

途中では十津川村内などで狭路を走行し、景観なども素晴らしい事を考えると、個人的には時間をかけて走ってくれる事は大歓迎で、谷瀬吊橋のある上野地の休憩時間をもっと確保しても…と思う程でしたが、種別の実態は「普通」ではないものの、せいぜい「区間快速」か「区間急行」、或いは「準急」程度なのでは…と感じたものでした。
(種別に関してはJRの「海幸山幸」「はやとの風」や、海外に目を向けると「Glacier Express」の如く遅さを売りとする優等列車も存在しますので、これらと同様の考えと
捉えた方が良いかもしれません)

 
この八木新宮線は超長距離の特殊な路線であるだけに、使用車両も八木新宮線専用の車両が用意されているのですが、この専用車も観光タイプの車両ではなく、一般路線でありふれた存在の車両と言える日野BlueRibbonとなっており、あくまでも一般路線バスである事を強調している様に感じられる点は興味深いものです。


ただ日野BlueRibbonとはいえども客用扉は前扉1箇所のみで、装いは奈良交通の観光バスに近い装いとなっている他、側面の行先・経由地表示が字幕やLEDではなく、プレート掲出になっている事も目に付きます。

下回りも高出力エンジン搭載に加えて冷房用サブエンジンを搭載するなど、他の奈良交通一般路線車とは異なっており、一応長距離路線である八木新宮線の専用車としての差別化が図られています。

車内に足を踏み入れると、長距離仕様の前扉のみの車両だけあって、通路を挟んで2人がけの背もたれが大きい座席(最前列の左側のみ1人がけ)がずらりと並び、補助席も設置されているなど、座席定員を最大限確保できる座席配列となっており、路線バスと言うよりも自家用バスを連想する様な雰囲気となっています。

 
ただ座席数こそ確保されているものの、長距離を走り続けるにも関わらず、座席にリクライニング機能を備えていない事は、八木新宮線専用車の大きな特徴となっています。

座席配置こそ高速バスや観光バスに近いとはいえ、八木新宮線が高速バスや観光バスではなく、あくまでも一般路線である事を強調しているかの様に感じられるのは興味深く、リクライニング機能を備えていない座席のバスに6時間以上も乗り続けるというのは、今日の日本では八木新宮線の他に体験できるのだろうか?という程です。

この座席で途中下車せずに乗り通すともなれば、結構ハードな道中という気がする方も居られるかと思いますが、これまたハードな道程で知られる青春18きっぷ利用によるムーンライトながら号(JRの座席指定制快速列車:MAKIKYUは一応最もラクに過ごせる車両を狙い買いしたのですが…)で夜を越した後に乗車したMAKIKYUでも、思ったよりも疲れは感じなかったものです。

この事は八木新宮線の路線自体が車窓の変化に富み、山中の狭い道を走行する様を堪能していれば時間の経過が早く感じると共に、6時間以上の乗車でも高速バスの如くずっと座りっぱなしではなく、途中で3度の休憩が設けられ、実質的に1~2時間程度の路線バス乗車X4となる事も大きいのでは…と感じたものでした。

ちなみに八木新宮線の専属車両は、どれも大阪府内などの大都市圏では既に登録不可能となっている平成4年式の古参車で、しかもシフトレバーもFFシフトを装備していない車両です。


そのため乗客として乗り続けるには非常に興味深い八木新宮線も、幾らエアサス車で長距離路線用の特別仕様車とも言えども古参車である事に加え、随所に存在する狭隘区間をはじめ、長大路線にも関わらず大和八木駅~新宮駅の全区間が乗務員交代なしであるなど、乗務員の方々には相当ハードな道程なのでは…と感じたものです。

八木新宮線専用車の年式や走行距離なども考えると、今のままの状況が続くのもそう長くなく、近い将来に何らかの動きが生じる公算が高いと思いますが、興味のある方は是非一度奈良交通の八木新宮線に乗車してみては如何でしょうか?

また八木新宮線に関しては、近日中に続編記事も公開したいと思いますので、興味のある方はこちらもあわせてご覧頂ければと思います。