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議政府軽電鉄~韓国では初登場のVAL

2012-08-09 | 鉄道[大韓民国・広域電鉄/地下鉄等]

先月MAKIKYUが福岡から高速船(未来高速KOBEE)に乗船し、釜山(Busan)へ向かった後は、更に列車でソウル近郊(首都圏)へ向かったのですが、その際にはまだ開業から日が浅い議政府(Uijeongbu)軽電鉄にも乗車したものでした。

議政府軽電鉄は名前の通り、ソウル近郊にある京畿道議政府市内で運行する都市鉄道で、「軽電鉄」という言葉は日本ではまず用いませんが、中国の「軽軌」とほぼ同義と言って過言ではなく、既存の地下鉄・広域電鉄よりも小型の車両を用い、小規模な設備で運行する鉄道を指します。

英訳すれば「Light-rail」にでもなるかと思いますが、現在韓国では営業用路面電車の類は存在しておらず、地方私鉄などもありませんので、専ら新交通システムや、これに準ずる路線を指す事になります。

この軽電鉄で営業を開始した路線自体が、最近開業した路線ばかりで数が少なく、議政府以外で現在営業運転を行っているのは、以前「MAKIKYUのページ」で取り上げた釜山交通公社4号線と、やはり釜山市内と近郊(慶尚南道金海(Gimhae)市)を結ぶ釜山-金海軽電鉄の2路線のみです。

あとは設備こそ完成しているものの、運営費用負担などを巡る交渉がまとまらずに開業が先延ばしになっており、何時になったら営業運転開始の報が聞けるのか…というソウル郊外・京畿道龍仁(Yongin)市の軽電鉄程度です。

その中でも釜山交通公社4号線は、日本の新交通システムに酷似した路線(AGT)で、一応地下鉄と同種の扱いで案内(半分程度の区間は地下ですので、一応地下鉄にも該当するのですが…)され、運賃も地下鉄と同一体系ですので、大阪市のニュートラムに近い路線と言えます。

残る釜山-金海軽電鉄と龍仁の軽電鉄は、2本のレール上を、新交通システムより一回り大きな小型車両が走っており、日本では見られない韓国独特の都市鉄道と言えます。

議政府の軽電鉄は両者のどちらに属すのかというと、2本のレール上を走るのではなく、コンクリート製軌道を、ゴムタイヤを履いた車両が走るという点では、日本の新交通システムに近いのですが、日本で運行している路線は存在せず、フランスなどで用いられているVALと呼ばれるシステムを採用しているのが特徴です。


VALという事も影響しているのか、日本国内の新交通システムや、釜山交通公社4号線とは雰囲気が異なり、高架の軌道を最初見た時は、日本の新交通システムに比べると、簡素な印象を受けたものでした。


駅構内に足を踏み入れると、まだ開業したばかりの路線と言う事もあってか、開業を告知する列車イラスト入り垂れ幕も見られる状況でした。


駅ホームは開業したばかりの新路線で、無人自動運転を行う路線という事もあってか、ホームドアの普及率が高い韓国では当然であるかの如く、各駅ホームにはスクリーンタイプのホームドアも設置されています。


2両編成で運行している車両も、TGVをカスタマイズした車両として有名な高速列車KTXの如く、ヨーロッパで使用しているVAL車両を、少しだけカスタマイズしたのではという雰囲気があります。



暖かみを感じる車内の照明色や、急加速している様に感じられた走りをはじめ、1両の片側に両開き式の客扉が3箇所もあり、1両当りの客扉は両開きドア1箇所か、片開き扉2箇所の車両ばかりと言う印象がある日本の新交通システムとは、随分異なる印象を受けるものです。


座席はオールロングシートとなっており、無人自動運転車両ならではの最前部特等席などは左右両側に座席が設けられているものの、車幅が狭い事もあってか、ドア間は座席が片方にしか設けられていないのも大きな特徴で、そのお陰で着席定員は随分少なくなっています。

内装も韓国の地下鉄車両各種などと同様に、比較的簡素な雰囲気に仕上がっていますが、車内側が金属地剥き出しとなった客ドアは、下方向にガラス部分が大きく拡大され、丸みを帯びた車体断面と共に、車両デザインにも大きな影響を与えています。

客ドアは金属地剥き出しの場合、社紋などが描かれている事が多い韓国の都市鉄道車両にしては珍しく、綺麗な無地となっており、窓ガラスの取り付け方法などを見ると、何処となく「某社レンズ付きフィルムによく似た名称で呼ばれる事が多い電車」や、この車両のパーツを多用した車両などを連想させられたものです。


この議政府軽電鉄は現在、議政府市内の鉢谷(Balgok)~塔石(Tapseok)間10km強を運行しており、既存鉄道とはKORAIL広域電鉄1号線(京元線)の回龍(Hoeryong)・議政府両駅で接続しており、コンクリートの塊とも言える巨大アパートが続く車窓は、如何にも韓国の大都市圏を走る都市鉄道と言った雰囲気があります。

始発の鉢谷駅は、回龍駅から徒歩でも10分程度でアクセスできるかと思いますし、議政府駅前からも市内バスの便が複数存在し、MAKIKYUは議政府駅の西口側から出るマウルバスでアクセスしたものでした。

終点の塔石駅も、駅のすぐ近くから議政府駅へ向かう市内バスの姿を目撃しており、少し歩いた所からは、地下鉄車庫設置のために設けられ、運行本数が減少する盲腸線区間としても知られるソウル都市鉄道公社7号線の長岩(Changam)駅へ抜ける市内バスなども走っており、MAKIKYUは議政府軽電鉄を完乗した後、このバスで長岩駅へ向かったものでした。

議政府軽電鉄は一応T-moneyでの乗車も可能なものの、運賃が広域電鉄や市内バスなどとの統合料金制になっておらず、おまけに1乗車1300Wと、日本の交通機関に比べれば安いとは言えども、他公共交通機関の運賃が低額に押さえられている韓国では、やや割高感もあります。

そのため韓国では初登場、日本国内には存在しないVAL試乗を目当てに足を運ぶ場合、単純に往復乗車するよりも、個人的には市内バスと組み合わせての訪問がおススメと感じたものでした。

韓国では今後も各地で軽電鉄導入計画があるものの、議政府に続いてVALを導入する都市が続くのかも気になる所で、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方も議政府へ足を運ぶ機会がありましたら、是非議政府軽電鉄に乗車してみては如何でしょうか?