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肥薩おれんじ鉄道の観光列車「おれんじ食堂」(1)~車両編

2015-01-21 | 鉄道[九州・私鉄等]

先日「MAKIKYUのページ」では、福岡~鹿児島間を運行する高速バス「桜島号」に関して取り上げましたが、MAKIKYUが先月両都市間を移動する際には、片道は桜島号を利用したものの、もう片道は「旅名人の九州満喫きっぷ」を利用し、ローカル列車乗り継ぎで両都市間を移動したものでした。

九州新幹線にほぼ並行するメインルート(JR鹿児島本線)を辿るとなると、途中の八代~川内間は九州新幹線開業時に経営分離され、現在は第3セクターの肥薩おれんじ鉄道が運行する区間を経由する事になり、先月MAKIKYUが鹿児島(鹿児島中央)→福岡(博多)を移動する際にも、川内→八代で肥薩おれんじ鉄道を利用したものでした。

肥薩おれんじ鉄道は定期運行のワンマン列車以外に、近年では不定期運転の観光列車「おれんじ食堂」も運行しており、MAKIKYUが川内→八代を移動する日は丁度運行日、それも丁度良い時間帯を走っていました。


全席指定制で空席がないと乗車できない列車ですが、MAKIKYUの乗車日はオフシーズンの平日だけあって当日でも空席ありでしたので、座席指定券を購入して「おれんじ食堂」に初乗車、指定席券は手書き発券でした。

第3セクター鉄道をはじめとする地方私鉄では、車内でコース料理を味わう特別列車設定を幾つかの事業者で実施しており、中にはこの車両を「食堂車」と称して、時刻表でも今や見る機会が少なくなった食堂車マークが見られる鉄道もある程です。

これらは大抵、通常の定期列車にも用いている車両にテーブルなどを設置して対応しているのですが、「おれんじ食堂」は定期列車で使用していたワンマン運転対応の軽快気動車2両を、定期列車での使用を前提としない観光向けに特化した改造を施し、「おれんじ食堂」専用車としているのが大きな特徴となっています。

「おれんじ食堂」専用車は、おれんじと名乗る位ですのでオレンジ色…と言いたい所ですが、オレンジ色ではなくブルートレインを連想させる濃いブルーを基調とした装いに改められています。


塗装は既存車両と随分異なるものの、それ以外の車両形状は、外観を見た限りでは第3セクター鉄道の標準車両そのもの、また肥薩おれんじ鉄道では標準塗装車両以外に、くまモンラッピング車など様々な装いの車両が活躍していますので、見た目だけなら意外と平凡な車両に映るかもしれません。

しかしながら車内に足を踏み入れると、JR九州や両備グループをはじめ、近年それ以外でも各地の観光列車を手がけている事でも知られる某有名デザイナーが手がけた「食堂」を名乗る車両だけに、既存車両とは大きく様変わりしています。

木をふんだんに用いた内装や、様々な柄の座席モケット、至る所に見受けられるロゴや英文字などは、某デザイナーが手がけた列車なら
ではの雰囲気が漂い、JR九州の観光列車などに近い雰囲気を感じます。

座席も鉄道車両用ではなく、建物内にある物をそのまま持ち込んだと言っても過言ではないものが多数あり、座席の種類が幾つもある辺りも、最近の某デザイナーが手がけた列車ではよくある事です。

2両編成の新八代方と川内方では、座席配置なども異なっており、新八代方の車両は主に個人客向け、川内方は主に団体客向けとなっており、MAKIKYUが乗車したのは新八代方の車両でした。


トイレは新八代方車両前方に1箇所のみとなっており、海側は1+1配列の向い合わせ配置、山側は海を見渡せる方向に座席を配置した2人がけとなっており、1人での利用なら海側の進行方向座席が最も当たりなのでは…と感じます。
(MAKIKYUの乗車時は海側の進行方向座席に当りましたが、利用が多い週末などは、狙ってもなかなか確保できないかもしれません)

夕暮れ時のカップル利用などであれば、2人がけの方はカーテンも設置され、半個室感覚で利用できますので、こちらも悪くないかもしれませんが、見知らぬ乗客と相席の場合などには、やや分が悪いかもしれません。

川内方車両は、トイレ設置区画が「食堂」を名乗る列車だけに、キッチンに改められているのが特徴で、食事は基本的に車外で調製されたものが運び込まれるものの、盛り付けなどを行っている様子を見る事もできました。


こちらの客室は座席モケットが交換され、某デザイナーが手がけた車両ならではの雰囲気に改められているものの、山側のロングシートが既置、もしくは移設(元々ボックス席が設置されていた箇所)されており、新八代方車両と比べると、こちらの方が鉄道車両らしく、また種車の雰囲気がよく残っていると感じたものです。

建物内にある座席を思わせる椅子も数脚設置されていますが、ロングシートは既存車両と大差ないもので、建物内にある座席を思わせる椅子も、ロングシートと向き合う箇所は海側を見渡せませんので、新八代方車両に比べると、個人的にはイマイチと感じたものでした。
(この車両もオーシャンビューの座席数脚は当たり席と感じるのですが…)


運転席部分を見渡すと、観光列車専用車への転用で、ワンマン運賃収受時に必須の自動両替器付運賃箱は不要になったものの、両先頭側乗務員室脇の運賃箱は、色を塗り替えてそのまま設置されているのが特徴的と感じたものでした。

さすがに整理券発行機や運賃表示器などは撤去され、半室運転台構造だけに進行方向右側からの前面展望が良好な種車の特徴も維持されていますが、SL人吉号展望席の如く、子供用の小さな椅子が設置されているのも某デザイナーらしい所です。
(ただ「おれんじ食堂」は余り子供向けではなく、乗客の年齢層も割合高めかと思いますので、賛否両論が出そうですが…)


元々単行運転を前提とした両運転台車両を、2両編成で運行する観光列車に仕立て直した事もあり、2両の車両が向き合う箇所は、運転台が不要となり、その気になれば乗務員室撤去→片運転台車化も考えられなくないのですが、こちらも工場入場時などを考慮してか、一応運転台は残存している状況でした。


しかしながらこの運転台はカバーをした上で、倉庫として活用しており、新八代方車両の川内方乗務員室対面は、フリードリンク(コーヒー)の設置箇所として活用するなど、2両と言う限られた空間を有効に活用するために結構苦心している様にも感じたものでした。

また「おれんじ食堂」は観光列車だけに、車両だけに留まらず食事や様々なイベント等もウリとしているのですが、こちらに関しては近日中に別記事で追って取り上げたいと思います。