先月MAKIKYUが鹿児島県内を訪問した際には、先日「MAKIKYUのページ」で取り上げた肥薩おれんじ鉄道の「おれんじ食堂」だけでなく、鹿児島市交通局が運行する市電(路面電車)でも、観光電車に乗車する機会がありました。
市電の観光電車は「かごでん」という愛称名が付けられ、市電運行100周年となる2012年末から運行開始、この事もあってか形式は「100形」、土日祝日の昼間に運行される観光電車として4便運行しています。
平日は貸切で稼動する事はあるものの、一般列車としての運用はないだけに、余所者にとってはなかなか乗り難い列車・車両の一つですが、先月MAKIKYUが鹿児島を訪問した際には、丁度土日で絶好の機会とばかりに、初めて「かごでん」にも乗車したものでした。
「かごでん」は始発の鹿児島中央駅のみで乗車可、当日中央駅電停付近に居る係員が配布する乗車整理券(無料)を所持した乗客のみが乗車可能な定員制となっており、鹿児島中央駅→鹿児島駅までの間は降車不可、その後鹿児島駅→郡元→鹿児島中央駅の間では、下車のみ可能な運行形態となっています。
運賃は1回乗車で市電2回乗車相当の設定(大人340円)もありますが、1日乗車券やCUTE(桜島観光も含めたフリー乗車券・1日用と2日用の2種類)も通用しますので、「かごでん」以外に市内各地を廻る予定もある場合は、これらを利用した方がお得です。
電車の運行は他の市電と同様のワンマンながら、観光ガイドが乗務して沿線の観光案内などを行い、音声合成による車内放送は流れないのですが、車内には次停留所名表示(LED)も設けられており、こちらでは次停留所名表示も行われます。
電車内はレトロ電車だけあり、新しい車両ながらも比較的重厚な雰囲気、近年登場した低床電車などとは随分趣が異なります。
ロングシート主体の座席配置ながらも、一部に路面電車では比較的少数派の転換式クロスシート(MAKIKYUは熊本市電や、廃止された名鉄の岐阜市内や近郊を走る路線でも遭遇した事があります)が設けられている点は、観光電車として充当する車両ならではと感じます。
ただせっかくの転換式クロスシートも、シートピッチが狭い事に加え、足元も狭くなっていますので、長時間乗車には余り向いていない雰囲気で、ピッチはともかく足元の狭さだけは何とかならなかったものか…とも感じたものでした。
また路面電車のレトロ調車両は、鹿児島以外でも幾つかの路線で導入・活躍事例がありますが、中には下回りに新造品を用いており、電車が動き出すととてもレトロとは言い難い雰囲気の車両も存在しています。
しかしながら「かごでん」は車体こそ新調したものの、一般車両でも車体更新車を多数走らせている鹿児島市交通局だけあり、既存旧型車両から転用した足回りを用いています。
そのため電車が動き出すと吊り掛け駆動の昔ながらの走行音と振動、そして運転席を見回すと旧式のマスコンも見受けられるなど、見た目だけでなくメカ的にレトロな電車という意味でも、レトロ電車としては高評価できると感じたものです。
転換式クロスシートは1人がけが数客程度で他はロングシート、中扉は1度に2人ずつ乗車可能な幅広の4枚折戸、各種ワンマン機器も装備されており、土休日の観光電車や貸切用として運用するだけでなく、その気になれば一般運用に充当しても差し支えなさそうな気がします。
また観光列車の乗車箇所が鹿児島中央駅のみという、現行の観光電車運行形態も多少不便な気がしますので、特装車両で市内主要観光地を巡る交通局運行の観光巡回バス「カゴシマシティビュー」の如く、どの停留所でも自由に乗降できる運行形態になれば…とも感じたものでした。
車両の雰囲気は悪くないだけに、今後乗車機会を増やすためにも、観光電車としての運行ではなく、一般電車としての運行で特定ダイヤ充当に改めるのも一つの方法なのでは…と感じたものでした。