気ままに

大船での気ままな生活日誌

松ヶ岡暑気払い(完)

2006-08-24 15:23:38 | Weblog
急に鈴木大拙が座禅をはじめました。ちょっと前まで、となりの西田幾多郎と哲学の問題で討論(口論?)していました。生前、西田は、鈴木のことを無名時代から高く評価し、「君は最もえらそうでなくて、最もえらい人かも知れない。私は思想上、君に負ふ所が多い」と有名な言葉を残しています。お互いに尊敬しあう仲ですが、今日は珍しく、自己主張が多く、討論がかみ合いませんでした。禅の研究と善の研究のがっぷりよつです。ゼンとゼン、同じゼンなら座らにや、そんそん、と阿波踊りみたいなせりふを残して、大拙が座禅を始めてしまったというわけです。

うしろにすわっている、財界人、安宅と出光は、隠しもってきたロマネコンティーをちびりちびりとやりながら、これまでの哲学者の話をにこにこしながら、聞いていました。ゼンゼンわからんなー、われわれには。膳の研究くらいならなんとかなるかなー、大船駅前の飲食店における和食膳の満足度の比較研究とかね、フフフ、とのんきな会話を交わしておりました。

となりには、和辻哲郎、安部能成、それと歌人の太田水穂が輪をつくっています。現世では、芭蕉研究会で一緒でしたが、天国にきましたら、わびとか、さびを感じる能力が消滅してしまいましたので、今は水芭蕉研究会で仲良くしています。天国の沼地はほとんど大賀はすのような古代蓮ばかりですので、水芭蕉を増やし、もう少し豊かな自然をと、研究会を立ち上げました。65才以上は無料というので、大船フラワーセンターにも、よく勉強に行っているようです。大拙が沈黙の行を始めてしまつたので、さみしくなった、西田が和辻のところに寄ってきて、共通の話題、京都奈良の古寺巡礼の昔話を始めました。

時はゆったり流れていきました。なんだか、みな、口調がおだやかになってきたようです。どうも、天国総督府が、マインドコントロールを徐々に元に戻しているようです。高見も元の席に戻り、前田の「洞窟の大拙」は、すばらしい出来だとほめています。今年の天国院展の金賞は間違いないと言っています。座禅が始まって、いいモデルになってくれたからだ、と謙遜しています。小林も「無私の精神」状態になってきたようです、目をつぶっています。

しばらくすると、ラストソングが流れてきました。例年、見上げてごらん夜の星を、月がとっても青いから、星のフラメンコ等、天に関係する曲なのですが、今年は、ふたりの女文士の強い要望により、島倉千代子の「人生いろいろ」になったようです。たしかに、現世では、涙あり、笑いあり、懸命に生きてこられた、個性豊かな天才たちを送るにはぴったりの歌のように思います。

ねぇ滑稽(こっけい)でしょ 若いころ、笑いばなしに 涙がいっぱい、涙の中に 若さがいっぱい、人生いろいろ 男もいろいろ、女だっていろいろ 咲き乱れるの
 (完)






コメント
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