ぼくは鏑木清方のフアンだが、清方の師匠が水野年方で、年方が師事したのが、この展覧会の主役、月岡芳年である。清方は、たしか子供の頃から芳年に可愛がられていて、後年、肖像画「大蘇芳年」を描いている。この絵は何度かみているので、芳年さんは以前から顔見知りである(笑)。りっぱな顔立ちで、あの血みどろの作品となかなか結びつかなかった。
たしかに、芳年といえば、”無惨絵”だが、東京では17年ぶりに開催されるという今回の回顧展をみると、それは一時期のものであって、武者絵や歴史画、美人画、と実に幅広い分野で、”国芳を継ぐ最後の浮世絵師”として活躍しているのがよくわかる。
第1章の”国芳一門としての若き日々”から始まり、ほぼ年代順の展示構成なので、まさに芳年の人生を辿るようだ。はじめの作品が、なんと、15歳のとき。”文治元年平家一門亡海中落入る図”、あまりの巧みさにびっくり。栴檀は双葉より芳し。二十代前半の作品に、わが地元、”東海道名所之内 由比ヶ浜”や横浜も現れる。京都四条夜討之図では、ちらりと”血みどろ”の萌芽が(笑)。”通俗西遊記”シリーズや”和漢百物語”の英雄たちがつづく。ぼくらの子供の頃の英雄だった、岩見重太郎の獅子退治もみせてくれる。
そして、27歳になった芳年、いよいよ血みどろの世界へ(爆)。第二章”幕末の混迷と血みどろ絵の流行”。代表作、”英名二十八衆句”シリーズ。歌舞伎の残酷シーンを集めたものだ。今回展示の中では、稲田九蔵新助が一番スゴイ。そして、東錦浮世絵談シリーズ。幡随院長兵衛が登場、右脚に刀が突き抜けている血まみれ状態で風呂桶の水を飲んでいる。”魁題百撰相”、”膳之城裸責之図”と無惨絵がつづく。若い女性がうす笑いを浮かべてみていた。まあ、芳年さんたら、こんな絵を描いたりしてばかね、といったところだろうか(笑)。現実ではめったに目をしない残酷な光景、恐いものみたさは誰の心の中にもあるもの。江戸、明治の人のように、画中の登場人物の物語を知っていれば、よりよく鑑賞できたと思う。
ぼくらは、たまに観るから、おしるこに塩みたいなものだけれど、毎日、こういう絵を描いたり、構想を練ったりしていたら、おかしくなってしまいそう。事実、芳年さんは神経を病んでいる。そして、第3章、”新たな活路/新聞と西南戦争”、第4章、”新時代の歴史観/リアリズムと国民教化”へと進むのだ。
浮世絵太田記念美術館で開催中の、没後120年記念”月岡芳年”展、初日に観てきた。後期(11月1日~11月25日)は、ほぼ全とっかえみたいだから、見逃さずに行こうと思う。
たしかに、芳年といえば、”無惨絵”だが、東京では17年ぶりに開催されるという今回の回顧展をみると、それは一時期のものであって、武者絵や歴史画、美人画、と実に幅広い分野で、”国芳を継ぐ最後の浮世絵師”として活躍しているのがよくわかる。
第1章の”国芳一門としての若き日々”から始まり、ほぼ年代順の展示構成なので、まさに芳年の人生を辿るようだ。はじめの作品が、なんと、15歳のとき。”文治元年平家一門亡海中落入る図”、あまりの巧みさにびっくり。栴檀は双葉より芳し。二十代前半の作品に、わが地元、”東海道名所之内 由比ヶ浜”や横浜も現れる。京都四条夜討之図では、ちらりと”血みどろ”の萌芽が(笑)。”通俗西遊記”シリーズや”和漢百物語”の英雄たちがつづく。ぼくらの子供の頃の英雄だった、岩見重太郎の獅子退治もみせてくれる。
そして、27歳になった芳年、いよいよ血みどろの世界へ(爆)。第二章”幕末の混迷と血みどろ絵の流行”。代表作、”英名二十八衆句”シリーズ。歌舞伎の残酷シーンを集めたものだ。今回展示の中では、稲田九蔵新助が一番スゴイ。そして、東錦浮世絵談シリーズ。幡随院長兵衛が登場、右脚に刀が突き抜けている血まみれ状態で風呂桶の水を飲んでいる。”魁題百撰相”、”膳之城裸責之図”と無惨絵がつづく。若い女性がうす笑いを浮かべてみていた。まあ、芳年さんたら、こんな絵を描いたりしてばかね、といったところだろうか(笑)。現実ではめったに目をしない残酷な光景、恐いものみたさは誰の心の中にもあるもの。江戸、明治の人のように、画中の登場人物の物語を知っていれば、よりよく鑑賞できたと思う。
ぼくらは、たまに観るから、おしるこに塩みたいなものだけれど、毎日、こういう絵を描いたり、構想を練ったりしていたら、おかしくなってしまいそう。事実、芳年さんは神経を病んでいる。そして、第3章、”新たな活路/新聞と西南戦争”、第4章、”新時代の歴史観/リアリズムと国民教化”へと進むのだ。
浮世絵太田記念美術館で開催中の、没後120年記念”月岡芳年”展、初日に観てきた。後期(11月1日~11月25日)は、ほぼ全とっかえみたいだから、見逃さずに行こうと思う。