気ままに

大船での気ままな生活日誌

まだ夏が終わらない 燈台へ行く道

2013-08-28 22:59:22 | Weblog
まだ夏が終わらないこの季節、燈台へ行く道を歩いた。
何で? この詩碑を見つけたから。
どこで? 観音崎でごわす。




燈台へ行く道  西脇順三郎

まだ夏が終わらない
燈台へ行く道
岩の上に椎の木の黒ずんだ枝や
いろいろの人間や
小鳥の国を考えたり
「海の老人」が人の肩車にのつて
木の実の酒を飲んでいる話や
キリストの伝記を書いたルナンという学者が
少年の時みた「麻たたき」の話など
いろいろな人間がいつたことを
考えながら歩いた


燈台へ行く道


岩の上に椎の木の黒ずんだ枝 それらしき風景


実はこの詩はまだ先がある。

やぶの中を「たしかにあるにちがいない」と思つて
のぞいてみると
あの毒々しいつゆくさの青い色もまだあつた
あかのまんまの力も弱つていた
岩山をつきぬけたトンネルの道へはいる前
「とべら」という木が枝を崖からたらしていたのを
実のついた小枝の先を折つて
そのみどり色の梅のような固い実を割つてみた
ペルシャのじゅうたんのように赤い
種子(たね)がたくさん、心(しん)のところにひそんでいた
暗いところに幸福に住んでいた
かわいゝ生命をおどろかしたことは
たいへん気の毒に思つた
そんなさびしい自然の秘密をあばくものでない
その暗いところにいつまでも
かくれていたかつたのだろう
人間や岩や植物のことを考えながら
また燈台への道を歩きだした


燈台への道


現れた燈台


燈台の傍らに二つの句碑が。


ひとつは虚子の句
霧いかに深くとも嵐強くとも


ひとつは橙青の句
汽笛吹けば霧笛答える別れかな


日本最初の洋式灯台として明治元年に完成した観音崎燈台を登った。てっぺんから見える景色。




おいらが思い浮かぶ燈台の詩といえば、喜びも悲しみも幾歳月(作詞・作曲:木下忠司、唄:若山 彰)

おいら岬の 灯台守は 妻と二人で 沖行く船の 無事を祈って 灯をかざす 灯を かざす
冬が来たぞと 海鳥なけば 北は雪国 吹雪の夜の 沖に霧笛が 呼びかける 呼びかける
朝に夕(ゆうべ)に入船出船 妻よがんばれ涙をぬぐえ もえてきらめく夏の海夏の海
星を数えて 波の音きいて共に過ごした 幾歳月のよろこび悲しみ 目に浮かぶ目に浮かぶ



ここの帰りに寄っただ。おばけシリーズ三冠(館)達成祝いにな。うふふ


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注文の多い散歩道

2013-08-28 07:58:11 | Weblog
今日も、そんなに暑くない日で、午後、散歩に出ることにした。でも、もう一人のぼくから、注文の多い散歩道の要望が出された。こんな注文だ。

1)昨日は乃木坂辺りの美術館に、さきおとといは、原宿のスーパーよさこい祭りに行った。だから今日の散歩は遠出はしないように。
2)散歩中に2時間程度の読書タイムをとるように。一週間ほど前に頂いた友人の著書を今日中に読み切り、明日には読後感想を入れたお礼の手紙を出すつもりだから。
3)読書タイムは、緑陰の公園や庭園でとること。車中の読書タイムを含めてトータル2時間は欲しい。
4)散歩道は、日本の道百選に入るような、気持ちにいいコースにすること。
5)めったに見られない光景に出くわさなければならない。
6)散歩の〆は展覧会が望ましい。

こんな注文の多い散歩道なんてあるわけないよと、ぼくはふてくされて、家を出た。大船駅について、まあ、根岸線でも乗れば、なんとかなるだろうとホームに降りて行ったら、いきなりめずらしい風景に出会った。試運転の電車が入っていた(行先のところに試運転の文字が)。新車っていうことだ、ほんとうにぴかぴかの一年生の電車だった。これで5)の要求がまず、果たせて、ぼくは急に気分が楽になった。


そして、ぼくは、向かいのホームに来ていた大宮行の電車にのった。クーラーの効いた車内で、早速、本を開いて読み始めた。頼朝が主人公なので、面白くて、ずんずん読んで、区切りの良いところで、ふと顔を上げると、そこは石川町の駅だった。はっ!無意識に降りてしまった。それ以上、先まで乗って、横浜、川崎を通り越して、都内に入ってしまうと1)に違反してしまう。

そうだ、ここなら注文に応えられそうな、いい散歩道もあるし、と歩き始めた。まず、イタリヤ山の外交官の家まで歩いた。ぼくの好きなメタセコイヤの並木が深い緑の葉をいっぱいつけていた。その近くに絶好の木陰があって、涼しい風も吹いている。そうだ、ここでと、30分ほどの読書タイムをとった。車中で30分。合わせて、1時間にもなる。よし、順調だ、ますます機嫌がよくなった。




そして、ぼくは、みなとのみえる丘公園に向かう道を歩いて行く。たしか百選に入っている道。4)の注文もOKだ。ルンルン気分で、そうだ、あそこで、もう30分の読書タイムをとろう、と向かった先は教会前の道を右に入ってすぐの山手公園。日本最初の洋式公園で、テニス発祥の地でもある。ここに王様の座るような椅子があって、おまけに木陰だった。うん、ここだ、とぼくは本を開いた。30分の緑陰読書。誰もいない、たった一人の贅沢時間。最高の気分。


ここでもめったにみられない枯葉の行列をみた。


これも、めったにみられないかもしれない。初期のご婦人のテニスウエアー。


さ、これで、帰りの電車の30分の読書タイムが確保されているので、3)の注文もOKとなった。残りは展覧会で〆なければならない。午後4時に近づいてきた、急がねば。みなとのみえる公園に行けば、二つの文学館がある。休みでなければいいが。いつもは一つ、二つは寄る、道沿いの洋館には目もくれず、公園に。ここで、また、珍しい光景に出会った。枯葉じゃなくて、雀の行列。


そして、その先には、神奈川近代文学館が。なななんと、”注文の多い展覧会”をやっている。注文の多い散歩の〆に相応しい展覧会で、”どうでえ、文句あっか”と、ぼくは、注文をいっぱいつけた、もう一人のぼくに対し、胸を張ったのだった。





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