おはようございます。
先日、鎌倉・吉兆庵美術館の宮川香山展で、うつくしい濃青緑の琅玕釉(ろうかんゆう)花瓶をみて、香山作の琅玕釉の、ほかのやきものを見てみたいと思っていた。調べてみると、横浜の眞葛ミュージアムに琅玕釉蟹付花瓶というのがあり、それは、なんと香山の遺作であるという。
お盆の入りにお墓参りに行ったあと、横浜まで戻り、昨年同様、そごうの10階のレストラン街で家内と食事をした。そのとき、その美術館がこの近くであることを思い出し、食後、訪ねた。そごうに隣接するビルを抜けて、歩道橋に出て、下りて、5分も歩けばよい。小さな美術館で、土・日しか開館していないそうだ。
チケットを受け取ると、そこに琅玕釉蟹付花瓶の写真が載せてあり、このミュージアムご自慢の作品であることがわかる。本物は入口近くにあり、すぐ見つかった。鎌倉でみた濃青緑色が花瓶の外側を覆っているかと思っていたが、そうではなく、内側にうっとりするような、うつくしい青色が拡がっていた。まるで深海の青のよう。そして、花瓶の淵には沢蟹が一匹、よじ登っている。本物の蟹が今にも深い海の底に入ろうかとでもいうように。亡くなる年の、大正5年(1916年)の遺作で、うつくしい色彩はあり、彫刻はありの、まさに香山、集大成の作と言っていいのだろう。
琅玕釉蟹付花瓶
これを見ただけでも、大満足だが、高浮彫を中心とした79点ほどの作品も楽しんだ。畳の部屋もあり、そこにはペリー提督横浜上陸の図が中央に飾られ、その下には百合や菖蒲の絵柄のうつくしい花瓶が並んでいた。
宮川香山と同時代、横浜に住んでいたエリザ・シドモアの香山評が紹介されていた。存命中の作家で最も工夫に富み、天才的な陶工である、・・・コペンハーゲンの陶芸家たちも太田(横浜の地名、ここに眞葛窯があった)の魔術師の作品をこぞって真似しようとしたものである。
シドモアは桜好きでもあり、ポトマック河畔の桜並木にも一役買っている。横浜の外人墓地にお墓があり、その傍らにポトマックのお里帰りの桜、シドモア桜が植えられている。シドモアさんと香山さんの繋がりが垣間見え、うれしかった。
外人墓地のシドモア桜(2016年4月10日)
それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!