こんばんわ。
明治神宮御苑の花菖蒲を見に行ったとき、原宿の浮世絵美術館として名高い太田記念美術館へ寄った。今回は、フランスのポール・ジャクレーの新版画展が開催されていた。
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ポール・ジャクレーって?ぼくは新版画が好きで川瀬巴水をはじめ、深水、五葉、小原古邨等が好きだが、外国人になると、カペラリ、バートレットくらいしか名を知らない。念のため、ぼくの過去ブログから”ジャクレー”を検索してみたところ、2019年の横浜美術館のコレクション展に展示されていたようだ。その一つ、版画ではないが「嫁入り支度」という 絹本着色 二曲一隻の屏風を記事にしていた。その後、彼の名をすっかり忘れていたのだ(汗)。
ポール・ジャクレー(1896~1960)はフランス・パリに生まれ、お雇い外国人の父と共に、3歳の時に来日した。10代の前半から一橋(大学の前身)で父の同僚だった黒田清輝から油絵を学び、1907年には池田輝方・蕉園夫妻(月岡芳年の孫弟子に当たる)に師事し、日本画を学ぶ。(歌麿の模写作品も展示されている。)
ジャクレーは一時フランスに帰国した後、再び日本に戻り、38歳の頃から、南洋諸島やアジア(日本、中国、韓国、モンゴルなど)で暮らす人々を描いた木版画を制作する。昭和前期は、絵師、彫師、摺師の協同作業による”新版画”が盛んとなった時期だったが、さまざまな国の老若男女を鮮やかな色彩で描いたジャクレーの作品は、当時の新版画の中でも異彩を放っていたようだ。
これまであまり知られていなかったジャクレーの新版画の、ほぼすべて、前後期併せて162点が展示されている。首都圏では初めての試みだそうだ。
まるでマティスのような鮮やかな色彩に溢れる、あまり馴染みのない南洋美人等の新版画に魅了された。残念ながらここも撮影禁止だが、ちらしの写真等をいくつか記録しておこうと思う。以下、順不同で。
鮮やかな色彩
ポール・ジャクレー「打ち明け話の相手、連作「満州宮廷の王女たち」より」(個人蔵)、昭和17年(1942) 口元を隠して、なにかひそひそ話。223度刷りという細やかさ。ジャクレー自身が最も気に入っている作品だそうだ。
ポール・ジャクレー「愛妾、連作「満州宮廷の王女たち」より」(個人蔵)昭和17年(1942)
ポール・ジャクレー「真珠、満州」(個人蔵)、昭和25年(1950) 満州の高貴な婦人。指先には真珠をあしらった指甲套(しこうとう)と呼ばれる爪カバー。300度刷り。
ポール・ジャクレー「オロール島の少年、東カロリン」(個人蔵)、昭和15年(1940) 帽子の緑と黄色、背景の赤と印象的な色使い。少年の目つき。
南洋の人々
ポール・ジャクレー「貝を持つファララップの女」(個人蔵)、昭和10年(1935)
ポール・ジャクレー「太平洋の神秘、南洋」(個人蔵)昭和26年(1951) サイパン島の女性をモデルにした人魚。
ポール・ジャクレー「檳榔の実、ヤップ島」(個人蔵)、昭和15年(1940)
ポール・ジャクレー「オウム貝、ヤップ島」(個人蔵)、昭和33年(1958)
ポール・ジャクレー「チャモロの女ー緑、連作「虹」より」(個人蔵)、昭和9年(1934) 「虹」シリーズ7点が並んで展示されている。赤、橙、黄、緑、青、藍、菫を基調に描かれている。今後、揃いの展示はなかなかみられないだろう。
アジア(日本・韓国・モンゴル等)の人々
ポール・ジャクレー 清馨さん(『世界風俗版画集 第二輯』昭和10年(1935) ジャクレーの新版画の最初の作品。月岡芳年の孫弟子からジャクレーへ、江戸の浮世絵の系譜に連なる絵画。芸者さんが観ている版画はジャクレー作の”サイパンの娘とハイビスカスの花”(この作品も展示されている)。
ポール・ジャクレー「北風、韓国」(個人蔵)、昭和28年(1953)
以上のように、フランス人、ジャクレーの新版画は、サイパン島やヤップ島といったミクロネシアの人々、そして、日本、アイヌ、朝鮮、中国、満州といったアジアの人々を、赤や水色、黄色や紫といった華やかな色彩をぶつけ合って描いたものが多い。どちらかというと地味な色彩の新版画に慣れ親しんできた者にはとても新鮮に感じる。これを機会にぼくもジャクレーの新版画に注目したい。
今日の大谷
対マリナーズ戦で19号はお預けだったが、3安打の固め打ちでチームの勝利に貢献した。今季最長の8試合連続安打となり、打率は・287まで上昇し、3割も目前。明日から同地区1位のレンジャーズと4連戦。エンゼルス4連勝、一試合一本、計4本の本塁打、最終戦では二刀流出場で6勝目を挙げたい。
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では、おやすみなさい。
いい夢を。
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あの日の明治神宮御苑の花菖蒲。ちょうど見頃だった。