おはようございます。
上野の東京都美術館でドレスデン国立古典絵画館(アルテ・マイスター)所蔵展(フェルメールと17世紀オランダ絵画展)が1月22日から始まった。これはどうしても見逃すわけにはいかないと思っていた。というのは、2013年晩秋にドレスデンを訪れ、この美術館にも行っている。フェルメールにも再会したいしとわくわくして待っていた。ところが、これが始まる頃から体調が悪くなり、なんと二月初めから3週間も入院してしまった。退院しても都内に出かける体力が戻らないだろうとほとんど諦めていたが、何とか回復して、終幕(4月3日)の前々日の日時指定チケットを手に入れることが出来た。よくぞチケットが残っていてくれた、まさに滑り込みセーフ。きっと、お近づきになったドレスデンの街の神々のおかげに違いない。
ということで、まず、御礼を兼ねて、8年半ほど前、訪ねたドレスデンの街を追憶してみよう。
旧東ドイツ地区の旅行はこのときが初めてだった。フランクフルトから1時間も飛ぶと、最初の訪問地、ドレスデンに着く。ザクセン州の州都であるこの地は、かってザクセン王国の都であり、とくに18世紀前半のアウグスト2世(強王)と3世の時代に繁栄し、バロック建築の宮殿や教会がつくられ、また、類を見ない宝物が蒐集された。そのうつくしい街並みは、”エルベ河のフィレンツエ”とまで讃えられた。しかし、第二次世界大戦で連合軍の大空襲により街のほとんどが破壊されてしまった。戦後、徐々に建物の復元などが進み、現在では往時のうつくしい街並みを取り戻しつつある。
一番、感動したのはこのフラウエン教会(聖母教会)。
ドレスデン大空襲により、この教会も破壊され、東側と北西部の壁を残して瓦礫の山となった。戦後、そのままの状態が続いたが、東西ドイツ統一後、復元の機運が高まり、1996年に工事が始まった。それは、瓦礫の一つひとつのサイズを測り、パズルのように元の位置にはめるという気の遠くなるような作業だった。ツアーメンバーの夫婦が以前ここに来たときには、ホテルの前の空き地に、番号のついた瓦礫が、うず高く積まれていたという。10年以上をかけて完成。現在のうつくしい姿になった。
破壊された当時の教会の写真
瓦礫由来のタイルは黒い部分。60%が元のタイルだという。
瓦礫だけのモニュメントも教会前に。
何もしない政府に頼らず、市民による自主的な廃墟からの再建運動は、東ドイツの体制に対する抗議行動と結びついた平和運動の場となった。それが、ライプツィヒ、ベルリンへと拡がり、ベルリンの壁の崩壊につながったという。その頃、若き日のプーチンはKGB諜報員としてドレスデンに在住し、東ドイツ崩壊までの一部始終を見ていたはず。これがトラウマになったのか。
一方、”君主の行列”の壁画は、空襲の被害から奇跡的に逃れ、往時の姿を今に観ることができる。当初は1874-76年に画家ヴィルヘルム・ヴァルターがズグラッフィートという手法で描いたものだが、損傷が激しく、1906年、25000枚のマイセン磁器タイルに転写されたものだ。100メートルもつづく壁に、ヴィッテン家出身の35人の大公、選帝侯、王たちの騎馬姿が描かれている。
その中の、アウグスト2世(強王)と3世。強王はあだ名の通りに、怪力でかつ精力も強く、100名を超えるお妾さんを従え、100人以上の子供をつくったという(笑)。一方、正妻の子、3世は逆で、まじめで気がやさしく、子供もひとりしかつくらなかったというから面白い。でも、王国も弱体化した。絵画コレクションにも力を入れた。
さて、国立古典絵画館(アルテ・マイスター)は、このツヴィンガー宮殿の一画にある。宮殿はアウグスト強王が建設したもので、戦災でだいぶ破損したが、補修、再建されている。アートの宮殿でノイエ・マイスター(新巨匠美術館)や有田焼のギャラリー等もある。
国立古典絵画館(アルテ・マイスター)ここの所蔵品が大挙して来日している。
絵画のコレクションは、16世紀にザクセン選帝候から始まったが、絵画を系統立てて収集し始めたのはアウグスト1世と2世(強王)によるものである。
この美術館を代表する作品は、ラファエロの名作”システィーナ(サンシスト)の聖母、ジョルジョーネの”眠れるビーナス”、そして、フェルメール2点、”窓辺で手紙を読む女”と”取り持ち女”だろうか。
ラファエロの”システィーナの聖母” 今回は来日していない。
ジョルジョーネの”眠れるビーナス” これも、来日してない。
フェルメールの”窓辺で手紙を読む女”。 これが今回のメインゲストとして来日している。このときは修復前の壁のキューピッドがないもの。
フェルメールの”取り持ち女”。今回は来日していないが、2019年、フェルメールが9点も集結するという空前絶後のフェルメール展(上野の森美術館)には来ていた。
リオタールの”チョコレート娘”。今回、是非、お招きしていただきたかった絵。地元ドレスデンでは大変、人気がある。ぼくも大好き。
なかなか、本題に入らず、小三治師匠のように”まくら”ばかりが長くなってしまった。今日はここまでにして、次回から本題、展覧会紹介に入ることとしよう。(つづく)
おわびに、エルベ河のフィレンツエとまで讃えらえた、ドレスデンのうつくしい街並みをいくつか。
劇場広場とゼンバー歌劇場
大聖堂(左)とレジデンス城(右)
エルベ河沿いのブリュールのテラス
テラスから観た街側の風景。ブラウエン教会を向こうに、街は11月なのにクリスマス風景。
それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!