'09.09.28 「ウィーン世紀末展」@日本橋高島屋8Fホール
日本橋高島屋で開催中の「ウィーン世紀末展」を見に行く。決算期に入る前に行ってきた。予定より少し遅れて到着したのが18:30頃。一般1,200円だけど、18:00以降は半額。ちょっとうれしい。
お目当てはクリムトだけど、エゴン・シーレや世紀末ウィーンの退廃的な感じは好き。まだ海外に行ったことのなかった中学、高校時代パリとウィーンに憧れたものだった。ウィーンには2回行ったけど、東欧周遊ツアーだと何故か中継ポイントみたいな位置づけで、意外にフリータイムなどがなく、じっくり見る事ができなかった。有名なマジョリカ・ハウスも車窓からだし、あの『第三の男』の観覧車も遠景。クリムトの「接吻」があるヴェルヴェデーレ宮殿の美術館も庭園のみを駆け足で観光
なので、憧れの地だったはずのウィーンの印象は意外に薄い(涙) まぁ、余談ですが・・・
クリムトのシーレを中心として、それ以前、後というような展示。クリムト以前で気になった作品はライムント・フォン・シュティルフリートの「ザンクト・シュテファン大聖堂」 大聖堂内部を描いた作品で、画面中央の十字になっている辺りで右側から日の光が差し込んでいる。床のモザイク柄もやわらかい色調で、なんとも穏やかで神々しい時間が感じられる。フェルディナンド・シュムッツァの「愛」はわりと小さな作品だけど、とっても官能的。なまめかしく横たわる裸婦はあまりハッキリとは描かれていない。胸元に蔓のある花が配されていて、画面左上に蝶が舞っている。これは何か意味がありそうだけどイヤフォン・ガイドを借りなかったので不明。蝶と花で受粉的なことから性的ニュアンスなんじゃないかと思うけど考えすぎかな(笑) とても美しい絵だった。
クリムトの作品は思ったよりも点数がない。「寓話」は中央に裸身の女性が立ち、左下に眠る雄ライオン、右下に2羽の鶴とキツネ。これは2つのイソップ童話を基にした作品とのこと。油彩で描かれたこの作品は美しいけれど、いわゆるクリムトらしさはなし。裸婦もあくまで芸術的な描き方で、いやらしさはなくむしろ清らか。「牧歌」は中央の円の中に2人の幼い子供と裸婦を描き、その円を見守るように両脇に若い裸身の男性が描かれている。まるでギリシャ彫刻のよう。これは好き。この2作品は"アレゴリーとエンブレム"用に制作されたとのこと。"アレゴリーとエンブレム"が何なのかイマヒトツ理解できなかったけれど、出版物らしい。
クリムトの弟エルンスト・クリムトの「宝石商」という作品があって、これはドアの上にある円形の飾り窓のような形。向かって左に若い女性、右に彼女に宝石を差し出す若い宝石商。目をふせる娘も美しいけれど、宝石商がリアルで美しい。この2人も何か秘め事のようなものを暗示している気もするけど、こちらも不明。エルンストは若くして亡くなってしまったようだけど、彼もまた才能のある人だったんだなと思う。弟がいたことも知らなかったのでビックリ。
そして「愛」 コレを見に行った! 転換期の作品とのことだけど、とっても良く分かる。画面を3分割し、両脇を黄金色に塗り、三連祭壇を思わせる構成となっているとのこと。その左右上方に描かれた薄いピンクのバラが可憐で美しい。中央に描かれたメインの絵はダークな色調。抱き合う男女はその中で薄い光のようにぼんやりと描かれている。浮かび上がった横顔が美しい。特に女性の横顔が清楚で可憐。この男女はまだ正統派(?)なタッチで描かれている。女性も清らかで、むしろ官能的ではない。2人の頭上には様々な年齢の女性が描かれている。2人を見守るようでもあり、戒めているようでもある。そして、この女性たちは彼女の生涯を表しているかもしれない。ポストカードを買おうと思ったけれど、頭上の人達がハッキリしすぎて心霊写真っぽくて怖かったのでやめた(笑)
「パラス・アテナ」のアテナは知恵・芸術・工芸・戦略の女神。画面向かってやや左寄りに黄金の兜を被ったアテナが描かれている。『ロード・オブ・ザ・リング』のオーディオ・コメンタリーで、セオデン王のバーナード・ヒルや、エオウィンのミランダ・オットーが、自分には似合っていないと嘆いていた。頭をすっぽりと覆い、特に装飾もない。額の真ん中から鼻の先まで伸びた鼻カバーは、誰が被っても似合わないと語っていたけれど、アテナお似合いです! 肩から胸を覆う黄金のうろこを思わせる鎧の胸の中央には、メデューサの首ゴルゴネイオンが舌を出している。これは頭の堅い批評家達へ向けてのメッセージなのだそう。左手で黄金の槍(?)を高くかかげ、胸の辺りでやわらかく広げた手の中に裸婦をささげている。この裸婦は「真実」を擬人化したヌーダ・ヴェリタス。今回は来ていないけどクリムトの代表作の一つ「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」は黄金色の髪をした裸身の女性が、右手で水晶のようなモノをまるで風船でも持つかのように持ち、ポーズらしいポーズもとらず立っている。ルノアールなどの芸術的な裸婦に比べて、ぐっとリアルで生々しい。上半身などはむしろ細過ぎる印象だけど、ウェストのくびれからヒップ、そして太ももまでの桃のようなラインがリアルでエロイ! このヌーダ・ヴェリタスを小さくアテナの左手の中に描いている。真横に広げた左手に光を捧げている。これはスゴイ!
次のコーナーはエゴン・シーレ。まずはアントン・ペシュカが描いた「エゴン・シーレの肖像」で始まるけれど、これは水谷豊似。似ている気はするけれど、実際のシーレは別に水谷豊似ではなかったハズ(笑) アントン・ペシュカはシーレの妹ゲルトレーテの夫で、シーレと共にノイクンスト・グルッペを結成した人物。次にあったのが「オットー・ワグナーの肖像」 オットー・ワグナーといえば世紀末ウィーンを彩った名建築家! マジョリカ・ハウスを初めウットリするような建築物を残した。彼から依頼を受けて描き始めたものの、時間がかかりすぎて中止になったのだそう。その後、完成させたこの作品はとってもマンガ的。肩幅せまッ(笑) オットー・ワグナーがどんな顔の人なのかこの肖像画では分からず(笑) 好きだったのが妹ゲルトルーテをモデルにした「意地悪女」 これはスゴイ迫力。大きな帽子を被った半裸の女性が腰掛けたヒザの上で、腕を組むようにして上体を前かがみにし、右方向を覗き込むような姿が画面いっぱいに描かれている。口を尖らせて目を細め、眉をつり上げた表情は、自分に向けられたらビックリするけれど、見ている分にはおかしい。そしてちょっと松田優作似(笑) コメントでは「ざまあみやがれ!」と言っているようだとあったけれど、個人的には「やってらんないよ!」という印象。まぁ、それだと別に意地悪じゃないけど(笑)
「ヒマワリ」はかなり縦長の作品。このサイズは日本の掛軸の影響だそうだけど、枯れたヒマワリを描き、花の部分を真っ黒に塗ったり、葉の形をデフォルメしたりとシーレ節ではあるけれど、構図的には日本画の影響なのかなと思ったりする。いつものまるで江頭2:50のように体をイライラとくねらせているかのような印象とは違い。ヒマワリの軸のほんのわずかなカーブは浮世絵の美人のなまめかしい立ち姿を思わせる。ヒマワリ自体は枯れているのに、その根元では花が咲き乱れているのも印象的。
「アルトゥール・レスラー」はシーレを高く評価してくれた批評家。なかなかオシャレでかっこいい人だったように感じる。腰掛けた上半身を描いている。肩越しに振り返るように身をくねらせているけれど、それは「裸の男」なんかに感じる窮屈でイライラしているようなくねらせ方とは違って優雅な身のこなし。この作品シーレの代表作と言われているそうだけど、驚いたのはレスラーの顔、服、そして背景にいたるまで様々なトーンの茶色のみで表現されていること。これは見事。チラシにもなっている「自画像」は自身の頭の後ろにゴーギャンの自画像のシルエットを描いている。一見すると分からないけれど、かすかに唇の辺りは赤い。これは自らの二面性を表現しているのだそう。シーレは好きなほうだけれど、そんなに詳しくないので彼が自分のどんな所を二面性と考えていたのかは不明。そしてマイケル似(笑)
クリムトとシーレの迫力がやはりスゴイので、この後の作品は正直そんなに心に響くものは少なかった。その中でも良いと思ったものを少しご紹介。オスカー・ココシュカがクリムトに捧げた「夢見る少年たち」は8枚のリトグラフからなる作品。様々な場面の少年達が描かれ右側に物語(?)が書かれている。題材としては間違いなく西洋のものだけど、どこか日本の昔話風な印象なのは気のせいかな。このオスカー・ココシュカは、あのグスタフ・マーラーの妻アルマ・マーラーと情熱的な恋をしたのだそうだけど、作品は穏やかというよりはむしろ暗い(笑) オットー・ワグナーが描いた「シュタインホーフの教会(草案)」は緻密。まるでCGのよう。教会だけでなく周囲の風景などもデザイン的に描かれていて、これはやっぱり建築家が描いた絵なんだなと思う。実際建てられた教会のステンドグラスを制作したのはコロ・モーザー。
このコロ・モーザーの「"フロメのカレンダー"のためのポスター」がいい。これはとってもミュシャっぽい。美しい女性の横顔や、大きな砂時計を持った手や指などは太い輪郭で描かれていて、長い髪も装飾的。自分の尾を飲み込むように輪になった蛇と、女性の前髪が蛇がかま首をもたげたようになっているのと呼応しているのかな。小さな丸い玉がいくつも束になった髪飾りは、ちょっとアール・デコっぽい。飾り文字も素敵。ほぼ黒と黄色で描かれているのもデコっぽいかも。モーザーは山を描いた油絵もあったけれど、どことなくセザンヌの「サン・ビクトワール山」を思わせる。イヤ! 別にパクリと言ってるわけじゃなくて、影響を受けたのかなと思った。
おもしろかったのは作者不詳の「第6回ウィーン分離派"日本特集"(1900年1月20日~2月15日)のためのポスター」 これは小姓と鷹を描いた浮世絵を使用したポスター。このポスター自体にそんなにグッときたわけじゃなくて、浮世絵にグッときた。鷹の凛とした美しさと、小姓の艶っぽさがいい。英山筆と銘が入っていたけど、思い当たらず・・・。調べてみたら菊川英山という絵師がいたようだけど、彼の作品なのかは不明。やっぱり浮世絵は奥深い。1900年1月20日~2月15日にウィーン分離派が日本特集の展覧会を開催していたことにもグッときた。
というわけで、なかなか良いイベントだった。仕事帰りならこのくらいのボリュームが見やすくていいかも。
日本橋高島屋 催しのご案内
日本橋高島屋で開催中の「ウィーン世紀末展」を見に行く。決算期に入る前に行ってきた。予定より少し遅れて到着したのが18:30頃。一般1,200円だけど、18:00以降は半額。ちょっとうれしい。


クリムトのシーレを中心として、それ以前、後というような展示。クリムト以前で気になった作品はライムント・フォン・シュティルフリートの「ザンクト・シュテファン大聖堂」 大聖堂内部を描いた作品で、画面中央の十字になっている辺りで右側から日の光が差し込んでいる。床のモザイク柄もやわらかい色調で、なんとも穏やかで神々しい時間が感じられる。フェルディナンド・シュムッツァの「愛」はわりと小さな作品だけど、とっても官能的。なまめかしく横たわる裸婦はあまりハッキリとは描かれていない。胸元に蔓のある花が配されていて、画面左上に蝶が舞っている。これは何か意味がありそうだけどイヤフォン・ガイドを借りなかったので不明。蝶と花で受粉的なことから性的ニュアンスなんじゃないかと思うけど考えすぎかな(笑) とても美しい絵だった。
クリムトの作品は思ったよりも点数がない。「寓話」は中央に裸身の女性が立ち、左下に眠る雄ライオン、右下に2羽の鶴とキツネ。これは2つのイソップ童話を基にした作品とのこと。油彩で描かれたこの作品は美しいけれど、いわゆるクリムトらしさはなし。裸婦もあくまで芸術的な描き方で、いやらしさはなくむしろ清らか。「牧歌」は中央の円の中に2人の幼い子供と裸婦を描き、その円を見守るように両脇に若い裸身の男性が描かれている。まるでギリシャ彫刻のよう。これは好き。この2作品は"アレゴリーとエンブレム"用に制作されたとのこと。"アレゴリーとエンブレム"が何なのかイマヒトツ理解できなかったけれど、出版物らしい。
クリムトの弟エルンスト・クリムトの「宝石商」という作品があって、これはドアの上にある円形の飾り窓のような形。向かって左に若い女性、右に彼女に宝石を差し出す若い宝石商。目をふせる娘も美しいけれど、宝石商がリアルで美しい。この2人も何か秘め事のようなものを暗示している気もするけど、こちらも不明。エルンストは若くして亡くなってしまったようだけど、彼もまた才能のある人だったんだなと思う。弟がいたことも知らなかったのでビックリ。
そして「愛」 コレを見に行った! 転換期の作品とのことだけど、とっても良く分かる。画面を3分割し、両脇を黄金色に塗り、三連祭壇を思わせる構成となっているとのこと。その左右上方に描かれた薄いピンクのバラが可憐で美しい。中央に描かれたメインの絵はダークな色調。抱き合う男女はその中で薄い光のようにぼんやりと描かれている。浮かび上がった横顔が美しい。特に女性の横顔が清楚で可憐。この男女はまだ正統派(?)なタッチで描かれている。女性も清らかで、むしろ官能的ではない。2人の頭上には様々な年齢の女性が描かれている。2人を見守るようでもあり、戒めているようでもある。そして、この女性たちは彼女の生涯を表しているかもしれない。ポストカードを買おうと思ったけれど、頭上の人達がハッキリしすぎて心霊写真っぽくて怖かったのでやめた(笑)
「パラス・アテナ」のアテナは知恵・芸術・工芸・戦略の女神。画面向かってやや左寄りに黄金の兜を被ったアテナが描かれている。『ロード・オブ・ザ・リング』のオーディオ・コメンタリーで、セオデン王のバーナード・ヒルや、エオウィンのミランダ・オットーが、自分には似合っていないと嘆いていた。頭をすっぽりと覆い、特に装飾もない。額の真ん中から鼻の先まで伸びた鼻カバーは、誰が被っても似合わないと語っていたけれど、アテナお似合いです! 肩から胸を覆う黄金のうろこを思わせる鎧の胸の中央には、メデューサの首ゴルゴネイオンが舌を出している。これは頭の堅い批評家達へ向けてのメッセージなのだそう。左手で黄金の槍(?)を高くかかげ、胸の辺りでやわらかく広げた手の中に裸婦をささげている。この裸婦は「真実」を擬人化したヌーダ・ヴェリタス。今回は来ていないけどクリムトの代表作の一つ「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」は黄金色の髪をした裸身の女性が、右手で水晶のようなモノをまるで風船でも持つかのように持ち、ポーズらしいポーズもとらず立っている。ルノアールなどの芸術的な裸婦に比べて、ぐっとリアルで生々しい。上半身などはむしろ細過ぎる印象だけど、ウェストのくびれからヒップ、そして太ももまでの桃のようなラインがリアルでエロイ! このヌーダ・ヴェリタスを小さくアテナの左手の中に描いている。真横に広げた左手に光を捧げている。これはスゴイ!
次のコーナーはエゴン・シーレ。まずはアントン・ペシュカが描いた「エゴン・シーレの肖像」で始まるけれど、これは水谷豊似。似ている気はするけれど、実際のシーレは別に水谷豊似ではなかったハズ(笑) アントン・ペシュカはシーレの妹ゲルトレーテの夫で、シーレと共にノイクンスト・グルッペを結成した人物。次にあったのが「オットー・ワグナーの肖像」 オットー・ワグナーといえば世紀末ウィーンを彩った名建築家! マジョリカ・ハウスを初めウットリするような建築物を残した。彼から依頼を受けて描き始めたものの、時間がかかりすぎて中止になったのだそう。その後、完成させたこの作品はとってもマンガ的。肩幅せまッ(笑) オットー・ワグナーがどんな顔の人なのかこの肖像画では分からず(笑) 好きだったのが妹ゲルトルーテをモデルにした「意地悪女」 これはスゴイ迫力。大きな帽子を被った半裸の女性が腰掛けたヒザの上で、腕を組むようにして上体を前かがみにし、右方向を覗き込むような姿が画面いっぱいに描かれている。口を尖らせて目を細め、眉をつり上げた表情は、自分に向けられたらビックリするけれど、見ている分にはおかしい。そしてちょっと松田優作似(笑) コメントでは「ざまあみやがれ!」と言っているようだとあったけれど、個人的には「やってらんないよ!」という印象。まぁ、それだと別に意地悪じゃないけど(笑)
「ヒマワリ」はかなり縦長の作品。このサイズは日本の掛軸の影響だそうだけど、枯れたヒマワリを描き、花の部分を真っ黒に塗ったり、葉の形をデフォルメしたりとシーレ節ではあるけれど、構図的には日本画の影響なのかなと思ったりする。いつものまるで江頭2:50のように体をイライラとくねらせているかのような印象とは違い。ヒマワリの軸のほんのわずかなカーブは浮世絵の美人のなまめかしい立ち姿を思わせる。ヒマワリ自体は枯れているのに、その根元では花が咲き乱れているのも印象的。
「アルトゥール・レスラー」はシーレを高く評価してくれた批評家。なかなかオシャレでかっこいい人だったように感じる。腰掛けた上半身を描いている。肩越しに振り返るように身をくねらせているけれど、それは「裸の男」なんかに感じる窮屈でイライラしているようなくねらせ方とは違って優雅な身のこなし。この作品シーレの代表作と言われているそうだけど、驚いたのはレスラーの顔、服、そして背景にいたるまで様々なトーンの茶色のみで表現されていること。これは見事。チラシにもなっている「自画像」は自身の頭の後ろにゴーギャンの自画像のシルエットを描いている。一見すると分からないけれど、かすかに唇の辺りは赤い。これは自らの二面性を表現しているのだそう。シーレは好きなほうだけれど、そんなに詳しくないので彼が自分のどんな所を二面性と考えていたのかは不明。そしてマイケル似(笑)
クリムトとシーレの迫力がやはりスゴイので、この後の作品は正直そんなに心に響くものは少なかった。その中でも良いと思ったものを少しご紹介。オスカー・ココシュカがクリムトに捧げた「夢見る少年たち」は8枚のリトグラフからなる作品。様々な場面の少年達が描かれ右側に物語(?)が書かれている。題材としては間違いなく西洋のものだけど、どこか日本の昔話風な印象なのは気のせいかな。このオスカー・ココシュカは、あのグスタフ・マーラーの妻アルマ・マーラーと情熱的な恋をしたのだそうだけど、作品は穏やかというよりはむしろ暗い(笑) オットー・ワグナーが描いた「シュタインホーフの教会(草案)」は緻密。まるでCGのよう。教会だけでなく周囲の風景などもデザイン的に描かれていて、これはやっぱり建築家が描いた絵なんだなと思う。実際建てられた教会のステンドグラスを制作したのはコロ・モーザー。
このコロ・モーザーの「"フロメのカレンダー"のためのポスター」がいい。これはとってもミュシャっぽい。美しい女性の横顔や、大きな砂時計を持った手や指などは太い輪郭で描かれていて、長い髪も装飾的。自分の尾を飲み込むように輪になった蛇と、女性の前髪が蛇がかま首をもたげたようになっているのと呼応しているのかな。小さな丸い玉がいくつも束になった髪飾りは、ちょっとアール・デコっぽい。飾り文字も素敵。ほぼ黒と黄色で描かれているのもデコっぽいかも。モーザーは山を描いた油絵もあったけれど、どことなくセザンヌの「サン・ビクトワール山」を思わせる。イヤ! 別にパクリと言ってるわけじゃなくて、影響を受けたのかなと思った。
おもしろかったのは作者不詳の「第6回ウィーン分離派"日本特集"(1900年1月20日~2月15日)のためのポスター」 これは小姓と鷹を描いた浮世絵を使用したポスター。このポスター自体にそんなにグッときたわけじゃなくて、浮世絵にグッときた。鷹の凛とした美しさと、小姓の艶っぽさがいい。英山筆と銘が入っていたけど、思い当たらず・・・。調べてみたら菊川英山という絵師がいたようだけど、彼の作品なのかは不明。やっぱり浮世絵は奥深い。1900年1月20日~2月15日にウィーン分離派が日本特集の展覧会を開催していたことにもグッときた。
というわけで、なかなか良いイベントだった。仕事帰りならこのくらいのボリュームが見やすくていいかも。
