・*・ etoile ・*・

🎬映画 🎨美術展 ⛸フィギュアスケート 🎵ミュージカル 🐈猫

【art】「皇室の名宝1 日本美の華」鑑賞@東京国立博物館 平成館

2009-11-04 01:45:14 | art
'09.10.23 「皇室の名宝1 日本美の華」@東京国立博物館平成館

これは見たかった! 何と言っても大好きな伊藤若冲の「動植綵絵」30点一挙公開! これは見に行かないわけにはいかない。天皇陛下の即位20周年特別展は会期を前半と後半に分けての公開となっているため、若冲や狩野永徳の「唐獅子図屏風」も11月3日まで。土日は混んでいるだろうと思い、20時まで開いてる金曜日に行く。ホントに毎日20時まで開館してくれると、とってもありがたいんだけど・・・

*長文です!*

【第一章 近世絵画の名品】何度も書いているけど、平成館は入口入って真ん中にあるエスカレーターを上がると左右に展示会場がある。上がって左が第一会場。イヤフォンガイドを借りて突入。会場に入ると屏風が3点。内2点が伝狩野永徳。「源氏物語図屏風」がおもしろい。六曲一双の屏風で、桂宮家に伝わったもの。元は八条宮邸の障壁画であったと思われるのだそうで、左隻は「若紫」、右隻左は「蜻蛉」、右隻中央下部に「少女」、右隻右上部に「常夏」が描かれているのだそう。源氏物語は田辺聖子版を読んだし、「あさきゆめみし」は全巻持っているけど、ちょっと章の名前だけで内容までは思いつかない。描かれた場面を見てピンとくるのは、源氏がまだ少女だった紫の上を見初める場面「若紫」ぐらい。この屏風の何がおもしろかったかといえば、その人物達の顔立ち。源氏物語とえいば瓜実顔と呼ばれる、下膨れでそら豆みたいな顔に、線のような目という印象だけど、この絵の人々は卵型でやや面長。男性はわりと男っぽい顔。雅な感じに描いているけど、ちょっと武将っぽい顔立ち。狩野永徳は安土桃山時代の絵師で、織田信長や豊臣秀吉に仕えた。そういう影響もあるのかな。それとも単に当時の作風なのか・・・

この会場の突き当たりに今回の目玉の1つでもある「唐獅子図屏風」が! 六曲一双となっているけど右隻と左隻では作者が違う。右隻が狩野派のスーパースター狩野永徳。そして左隻はそのひ孫となる狩野常信。作風もだいぶ違う。永徳の作品を見て描いたことは間違いないと思うので、金で描かれた雲や岩など背景は似ているけど、迫力ある右隻の永徳作に比べ、舌を出し跳ぶように走る獅子はコミカルでちょっとかわいい。筋肉の隆起や流れのある鬣や足毛も躍動感というよりは様式化して見えるところや、派手な感じはさすが狩野派という感じ。でも、やっぱりここは右隻でしょう。狩野永徳のことも作品名も知らなくても、多分ほとんどの人がどこかで見たことあると思う。2匹の獅子が並んで歩く姿を描いた作品。これは豊臣秀吉が毛利輝元に贈ったと言われているけれど、左端の木が不自然に切れていることから、諸将との謁見の間に描かれたものだというのが最近の見方とのこと。ちなみに右下の"狩野永徳法印筆"とあるのは、こちらも狩野派ビッグネーム狩野探幽が書いたものだそう。そういうのもおもしろい。本物を見るのは初めてだけど、思っていたより大きい。こんなに大きいと思わなかった。獅子はほぼ実物大なんじゃ? もちろん永徳はライオンを見たことないに決まっているし、ここに描かれているのは架空の動物なんだと思うけれど・・・ 最初はその大きさにビックリするけれど、すごいのはやっぱりその存在感。左前足を一歩前に踏み出し、右前足を少し上げ、足を真っ直ぐ前に向けて歩く茶色っぽい獅子と、それを見守るかのように寄り添って歩く緑色っぽい獅子。これは親子? この2頭の感じが圧倒的な迫力の中にも、どこか穏やかな空気が感じられて、何度もしつこいけどかなり大きな作品なので、一双の展示となると壁一面という感じなのに、圧迫感がなくゆったりと見れる。一通り見た後、閉館ギリギリに戻ってきて見直したけれど、人も少なかったのでゆっくり見ることができた。獅子の顔がだんだん人の顔のように見えてきて、とっても不思議な体験。力強い線とか、渦を巻いた鬣を描くその技術もそうだけど、本当に力のある絵というのは、その空間をも支配しちゃうんだなと改めて実感。素晴らしい体験だった。

そういう意味では次の展示会場で一挙公開された伊藤若冲の「動植綵絵」もそう。でも、これは後ほどゆっくり(笑) 夢のような若冲ワールドを抜けると、円山応挙の「牡丹孔雀図」がある。画面中央に描かれた岩の上に止まり、右の方を振り向くように画面いっぱいに描かれた孔雀が美しい。その美しい尾は閉じられて画面右下に向かって左上孔雀の頭から続く流れを作っている。その尾のすぐ左脇、画面中央辺りに配された牡丹の赤とピンク、岩に点々と描かれた苔の緑青が美しく効果的。とっても写実的でありながらも、これはやっぱり若冲とは違う。若冲大好きだけど30点一挙に見た衝撃でくらくらしていたので、この絵の静かな美しさに少しホッとする。応挙はもう一枚「旭日猛虎図」も印象的。応挙と言えば虎ですもの(笑) 墨で描かれた作品で、丘のようなところに登ってきた感じ。もしくは今まさに目覚めたのか、前足をそろえて背中を山なりにしている。この背中のラインがとっても美しい! そして毛並みの一本一本が細かい。でも全体的な丸みや顔のかわいさは、相変わらず猫ですが(笑) この会場にはもう1匹スゴイ虎がいた。数枚美しいけれど、そんなにグッとこない作品が続いた後、遠目でイイ!と思った作品。ハッキリ見えなかったけど虎。近づいてみたら谷文晁。なるほど(笑) 1匹の虎が今まさに水を飲もうとした瞬間、何かの気配を感じたのか、警戒したのか周りをうかがうように鋭く顔を上げたという感じ。山なりの背中のラインの美しさと、そこから伸び逆"?"の形に曲がった長い尻尾までの曲線は美しいけど、優美な感じはではない。ビッシリと描かれた毛並みもスゴイ。そしてこれも実際の虎とは違う気はするけど、でもやっぱり猫ではなく虎だと思う。谷文晁も実際虎を見てはいないと思うけれど・・・ これはスゴイ迫力! 眼光の鋭さがスゴイ。水面に写った顔の目線が、また別の方向を見ているのも狙いなのかな。これはいい。

葛飾北斎の「西瓜図」が印象的。半分に切ったスイカの上に白い透けた布もしくは紙をかぶせてあり、その上に包丁が置かれている。包丁の刃の青が印象的。画面上に張られた縄に掛けられた薄い赤と白のスイカの皮。裏書に「求めに応ず」とあることから依頼を受けて描かれたと思われるこの作品は、右下に"画狂老人卍筆 齢八十"と書かれているとおり北斎80歳の作品。とっても不思議な絵だけど、実はこれ七夕に行われていた中国の「乞巧奠」になぞらえていると考えられているのだそう。「乞巧奠」とは縄に紅白の糸を掛け、その下に水を張った盥を置き星明りをうつす。その星明りで針に糸を通して吉凶を占うというもの。スイカはこの盥を表し、スイカの皮が糸を表しているのだそう。さすが北斎シャレている。だけどこの会場で一番好きだったのは酒井抱一「花鳥十二ヶ月」 これは文字どおり1~12月まで、それぞれの月を表す花と鳥を描く12枚からなる作品。それぞれが繊細で優雅。春はもちろん、雪景色の12月でさえ心穏やかになるような静かで美しい作品。さすが抱一。どれも素晴らしかったけど、好きだったのは「一月 梅椿に鶯図」「五月 燕子花に鷭図」「十月 柿に小禽図」かな。右中央やや下辺りから画面中央、そして左下に描かれた紅白の菊が繊細で美しく、ちょこんと枝に止まった小鳥がかわいい「九月 菊に小禽図」もいい。「一月 梅椿に鶯図」は右やや中央より下あたりに描かれた椿の赤が美しい。その椿を遮るように伸びる梅の太い枝に、さり気なく配される緑青がきいている。細くしなやかに伸びる枝に咲く梅は控えめでかわいらしい。画面下に伸びた枝に止まった鶯は今まさに鳴いているように小さく口を開けている。かわいい。「五月 燕子花に鷭図」 燕子花というのは杜若のこと。抱一といえば琳派、琳派といえば杜若。画面中央に2株の杜若。そのスッと伸びた形と藍のなんともいえない美しさ、その間から顔を出し、花を仰ぎ見るように顔を上げた鷭がかわいい。鷭とは水鳥の一種だそう。「十月 柿に小禽図」これが一番好きだった。左下から右斜め上に向かって伸びる柿の枝。右中央辺りで一度画面から消え、そこから伸びて細い枝が画面中央に戻ってくる流れのある構図。真っ赤に色づいた柿は左下と、この中央に戻ってきた枝の先に実る。その少し寂しい秋の風景に柿の朱が美しい。そしてなんとも奥ゆかしい。その柿を愛でるように見上げる3羽の小鳥の緑と、中央に1つだけ描かれたまだ青い柿が印象的。このシリーズは良かった。なんとも清々しい気持ちになった。

【第二章 近代の宮廷装飾と帝室技芸員】 第2会場へ移って作品も明治から昭和へかけてとなる。帝室技芸員というのは今で言う人間国宝のことだそう。ここでも横山大観などのビッグネームが並ぶ。上村松園などお目当てもあったのだけど、若冲がやっぱり人気で全部見るのに時間がかかってしまったし、最後にもう一度見たかったので、第2会場は時間的余裕がなくて駆け足になってしまったのが残念。第一章が絵画のみだったのに対して、こちらはガラス、焼物、彫刻など様々。旭玉山の「官女置物」が素晴らしい。十二単を身に着けた官女が、右手の檜扇で左手に持った鏡を少し隠すようにして立っている。わずかにうつむき鏡を覗く官女のふくよかな顔が美しいこの作品は、なんと象牙を彫ったものだそう。ビックリ! そのやわらかな着物のドレープの表現からは固い素材は想像できない。袖の衣の表現が素晴らしい。そして何と鏡の中には官女の顔が! 細かい。後ろに回らないと気づかない、そんな所まで手を抜かない。というよりむしろ、だからこそのこだわりなのかも。素晴らしい。川之邊一朝ほか「菊蒔絵螺鈿棚」がかわいい。明治天皇の御下命により制作されたこの違い棚は、全体的に金蒔絵と螺鈿で八重菊と小鳥が描き出されている。これは全面どの部分も図柄がつながるように配置されているのだそう。気が遠くなる(笑) これはホントに美しかった。螺鈿が薄い青とピンクでカワイイ。これはウットリ。

七宝焼で有名な有線七宝の並河靖之と無線七宝の濤川惣助。いつか見たいと思っていた2人の作品を、同じ会場内で見ることが出来るなんて幸せ! 七宝っていうのは金属などに細かいガラスの粉で絵付けして焼き付けたもの。有線七宝というのは模様の輪郭に針金を使っているもので、無線は文字どおり輪郭線の無いものを言う。いわゆるエナメルで、エマーユ、ホーローなどとも呼ばれる。2人は明治時代のほぼ同じ頃に活躍し、字こそ違うけど名前も同じナミカワ。並河靖之はパリ万博で絶賛され顧客のほとんどが外国人であった。濤川惣助は迎賓館の「七宝花鳥三十額」が有名。どちらも超絶技巧。ただ、明治宮殿を飾ったという濤川惣助「七宝唐花文花盛器」は無線ではなく有線作品。2対の大きな花盛器。これはデカイ(笑) 他の作家達の作った花盛器もかなり大きかったので、明治宮殿はだいぶ大きかったらしい。エメラルドグリーンの地に装飾化された唐花と鳥や蝶を描く。この唐花の感じはちょっとモリスとかのパターン化されたデザインにも感じるし、四方に広がる感じは曼荼羅を思わせたりもする。下の唐草模様が描かれた青地のラインと、器の縁の青のラインが引き締めている。これもよかったけれど、彼の真骨頂、無線七宝は「七宝月夜深林図額」でその素晴らしさを堪能。これはまるで水墨画。針金の輪郭を用いない無線七宝は彼が考案したもので、ぼかしが表現できるということだけど、これはスゴイ。絵画としても素晴らしいけど、七宝焼きだからね。ちなみに、中央に川か池の水面を配し、右側に高い木を写実的に描き、左奥の岸にはぼかして木を描き遠近を表現、中央に明るく光る月明かりという美しい構図は、図録によると迎賓館花鳥の間の「七宝花鳥三十額」の下絵を担当した日本画家渡辺省亭によるものだそう。素晴らしい!

個人的にこの第二章で一番心打たれたのは並河靖之の「七宝四季花鳥図花瓶」 とにかくこれ素晴らしかった! 美しい曲線の花瓶の漆黒というにふさわしい真っ黒なその地に、無数の桜をほぼ中央に描く。下部には白、青、黄色やピンクなどの、これまた無数の花が描かれている。上部には緑の葉。そして軽やかに舞う鳥。この図案自体は中原哲泉によるものだそうだけど、それを見事に七宝で表現しているのがスゴイ! 有線というからには細かい花びら1枚1枚に針金の輪郭線が入っているわけで、下絵にそって針金を置いていくみたいだけど、その作業だけで気が遠くなりそう。キィーってなったりしないのかな(笑) その1つ1つの細かさにビックリするけど、ちょっと引いて全体的に眺めると、桜の薄いピンクや緑の葉のグラデーションが見事で、その漆黒の美しさも際立って、なんだか3Dのように図柄が浮き上がって見える。素晴らしい! 若冲を見に行ったので、ノーマークだったけど、ずっと見たかった並河靖之の作品が見れて幸せ。

他にもかわいかった高村光雲の「矮鶏置物」、河井寛次郎「紫紅壺」、大好きな川合玉堂「雨後」、こちらも大好きな鏑木清方「讃春」など、ホントに素晴らしい作品ばかりなのだけど、ちょっと紹介しきれない(涙) この章の最後として大好きな上村松園の「雪月花」について。タイトルの雪:枕草子、月:源氏物語、花:伊勢物語にそれぞれ題材を取り、3幅の掛軸に描いている。花は舞い落ちる桜を幼い男の子が袖を広げて受け止めようとするのを、黄色い花を手にした少女が見守るかわいらしい作品。少女のピンクの着物と、下ぶくれの横顔がかわいい。女房と女主人(?)が月を眺める月も、その顔の美しさや着物の柄の細かさや繊細な色使いもさることながら、くつろいだ女性たちの姿がなまめかしい。でも、一番好きだったのは雪。朝目覚めたら雪景色。身支度を整えた女房(清少納言?)が、御簾を静かに巻き上げている。その顔の美しさ! これは月のなまめかしさとは違うキリッとした美しさ。それは右下にわずかに描かれた枝に積もった雪が冬の朝の寒さを表現しているからだし、美しいけれど淡い色合いの着物の間からのぞく袴の膝の赤がキリリと引き締めているから。これはいい。

さて、長々書いてきたけどいよいよ伊藤若冲「動植綵絵」について。これを見に行ったし、一度目はきちんと並んで間近でイヤフォンガイドを繰り返し聞きながらじっくり鑑賞、一とおり見た後、閉館間際の人が少なくなった頃に戻って、少しは離れて眺めたりと正に至福の時を過ごしたので、もう満足という感じで、最後に語ろうと取っておいたわりには感想が書きにくい。なにしろ30点もあるし(笑) これはもともとは相国寺に寄進したもので、自ら描いた釈迦三尊像とともに展示することを目的に描かれたもの。その名のとおり様々な動物や植物が描かれている。平成11年から6年かけて修復されたそうで、その際に裏彩色など若冲の様々な技法があきらかになったとのこと。そちらも楽しみだった。「唐獅子図屏風」の部屋を向けると、次の会場は若冲コーナー。入口すぐに「旭日鳳凰図」がある。画面中央に2羽のつがいの鳳凰を描いたこの作品は「動植綵絵」ではないけど、あえてこの作品の感想から書いたのにはワケがある。とにかくスゴイ色鮮やか! 何という色。手前の岩に止まった鳳凰の尾羽根はハート型の先端は緑と赤で描かれ、その奥に立っている方の尾羽根は赤と青で描かれているけど、その尾羽根の色が強烈。旭日をバックに顔を上げて鳴く鳳凰の表現も、ビッシリ描かれた羽根模様も、彼らが佇む岩の周りの波の感じも、何となく中国っぽい。とにかく尾羽根の赤が強烈でドキドキする。そして、ずっとドキドキしながら「動植綵絵」を見ていた。何枚目かを見ていた時、近くにいた男の人が、若冲の作品は画面の全部にピントが合っているから見ていて疲れると話していた。なるほどと思った。普通どこかにぼかしなどを入れて遠近感を表したり、絵に抜けを作ったりするものだけど、確かにどの部分もハッキリとしている。イヤもちろんぼかしも使っていると思うけど、これはフルハイビジョンという感じ。なるほど、だからドキドキしたんだと納得。

もう、とにかく全部素晴らしくて、ドキドキしながら見たのだけど、「梅花皓月図」「桃花小禽図」「牡丹小禽図」のように画面にビッシリと花などを描き込んだ作品よりも、「芦雁図」や「芦鵞図」のように主題がドーンといて、少し余白がある方が見ている側としては楽(笑) 「芦鵞図」は嘴の上の黄色いぷるぷるしたところがちょっとキモイけど、ユーモラス。「群鶏図」や「南天雄鶏図」は以前見たことがある気がするけど、若冲といえば鶏。題材としてもやっぱり多くて30点中8点。どれも写実的だけど、よく見ると羽根の模様がまるで図柄のようにデザイン化されているのが分かっておもしろい。8点ある鶏全部素晴らしいけど、好きだったのは「向日葵雄鶏図」 画面左下から右上にかけて描かれたヒマワリは枝分かれしたりと、正しくない気もするけれど、その落ち着いた黄色と、若冲お得意の穴の開いた葉の少し枯れたような緑が、その下を歩く鶏を引き立てている。なんとも美しい姿。普段、生きている鶏を見ても美しいとは思わないけど、こうして見るとその造形の美しさに驚く。茶色の羽根に混ざる白と黒の羽根。そして、しなるような白と黒の尾羽根。真っ赤な鶏冠。素晴らしい。

今回の修復で判明した若冲の技法がパネルで紹介されていたけど、ちょっと覚えきれず 覚えているのは、笑っているかのような表情を浮かべた白い鳳凰が描かれた「老松白鳳図」 先っぽが赤と緑のハート型をしている尾羽根にばかり目が行ってしまうけれど、図録によると白鳳の白い羽根の下には、画絹裏面に黄土の裏彩色がされていて、それが透けて見え、表面の胡粉表現と、墨色の肌裏紙と重なって、輝くような美しさとなっているのだそう。その技法もさることながら、美を生み出すためには努力を惜しまない若冲の探究心が素晴らしい。そしてもう一つ新発見は「群魚図」の左下に描かれたルリハタのほぼ全面からプルシアンブルーの成分である鉄が検出されたこと。プルシアンブルーは1704年にドイツで発見された人工顔料。当時、日本に入ったばかりと思われる顔料を使用していたとさすが若冲と思ったら、この発見以前はむしろ西洋画に関心を持たない絵師だと思われていたのだそう。ビックリ。

さて、いよいよ本日の一枚「蓮池遊魚図」について。長かった(笑) これ蓮池を小さな魚たちが泳ぐところを描いているんだけど、よく考えると変な構図。蓮が水中に咲いているようにも見えるし、魚が空中を浮遊しているようにも見える。左下から左上、そして右上、右下から右上へと繋がる蓮は、額縁のようでもある。なんとも言えないゆったりとした空気が流れる。閉館間際、戻ってきて一とおり見直し、中央に座って「動植綵絵」に囲まれる至福の時を過ごした後、最後にもう一度見直した。なんだか最近、モヤモヤしていた嫌な事なんて、何でもない事のように思えてくる。やっぱり素晴らしい。

長々書いてきたけど、とにかく素晴らしい! さすが皇室のコレクションだけあって作品自体も素晴らしいけど、とにかく保存状態が素晴らしい。これは本当に素晴らしかった! 残念なことに長文になってしまって、書くのに時間がかかり過ぎて、公開期間中に記事UPできなかったけれど・・・(涙) ホントに見れて幸せだった!


★皇室の名宝 Ⅰ期:2009年10月6日~11月3日
★皇室の名宝 Ⅱ期:2009年11月12日~29日

「皇室の名宝」Official site

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする