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【cinema】『洋菓子店コアンドル』(試写会)

2011-02-03 22:56:07 | cinema
'11.1.26 『洋菓子店コアンドル』(試写会)@一ツ橋ホール

yaplog!で当選。いつもありがとうございます。

*ネタバレありです! ごめんなさい辛口です…

「パティシエ修業で東京に行ったきりの恋人を連れ戻すため、上京したなつめ。彼が働いていた洋菓子店コアンドルを辞めてしまったと聞き、代わりに働き始める。ある日、晩餐会のデザートを担当することが決まった直後、店主の依子が過労で倒れてしまう。なつめはかつて依子とパリで一緒に学んだ、伝説のパティシエ十村に助けを求めるが…」という話。うーん。このあらすじでも分かるとおり王道。田舎から出てきた世間知らずの主人公が、先輩に揉まれ、店主に時に厳しく時に暖かく見守られ、伝説のパティシエに鍛えられて成長するという話。なんだけど、想像してたのとちょっと違ったかなぁ…

主人公のなつめが、いまどきビックリするくらい世間知らずだったり、伝説のパティシエがヒーロー・タッチだったりと、あまりにキャラが立っていたので、てっきりマンガが原作なのかと思ったら、オリジナルだった(笑)でも、少女マンガの世界だなという印象。何度も書いてるけど、少女マンガで育っているので、決して嫌いではない。でも正直、それ以上でも以下でもなかったかなという感じ。王道少女マンガが好きな方は好きだと思う。

とにかく主人公のなつめのキャラがスゴ過ぎる。一言で言えば"世間知らず"ってことなのでしょうが、これはちょっと…(笑) 冒頭ガイドブック片手に、スーツケースを抱えてコアンドルにやって来る。店主依子のフランス人のダンナさんが、全く理解できない鹿児島弁でまくし立てたのは、ここに婚約者の海くんという人がいるはずだということ。確かに彼は来たけど、2日で辞めてしまったし、どこに行ったのか分からないと答えると、依子や先輩マリコが海くんをいじめて追い出したんじゃないかと言い出し、行き先くらい教えてくれたっていいでしょうと詰め寄る始末。確かに依子の対応は、お世辞にも温かいものではなかったけれど、これすごくないですか?(笑)

相手にされず行くところのないなつめは、コアンドルで働かせてくれと懇願。あれだけ言っておいて、それは…(笑) で、素人を雇う余裕はないと断られれば、実家はケーキ屋で店に出すケーキは自分が作っていたと言う。では作ってみなさいということで、チョコレート・ケーキを作る。一口食べてみな無言。どこがダメなのかと食ってかかるなつめに、たまたま来ていていた伝説のパティシエ十村が冷静に答える。クリームがゆる過ぎる、手際が悪く時間がかかり過ぎている。見兼ねた依子がテラス席へ呼び出し、自ら作ったチョコレート・ケーキを差し出し、諦めて田舎に帰るように諭す。なつめが作ったものとは比べものにならない洗練された味と見た目… 感動したなつめはさらに懇願! 住み込みで働くことになる。

ここまでつらつら書いただけで、たった数時間(上映時間的には10分くらい)の出来事だけど、以後もこのまさに猪突猛進と言いたくなる勢いで突き進む。実力もないのに自信満々ななつめを、よく思わない先輩マリコとは事あるごとにケンカ。真剣にパティシエを目指すマリコにすれば、うっとうしい存在であることは間違いない。だからといってバカにした態度を取るのはダメだと思うけど、満足に下ごしらえもできないのに、マリコの分を手伝うと言い出し、あなたにはムリだと言われると、やらせてくれたっていいでしょう! そうやって海くんを追い出したんでしょうと食ってかかる始末。コレはどう? 例え理不尽であっても、先輩なのですが…(笑)

結果、怒ったマリコから、海くんが現在働いているお店を聞き出すことに成功。公園に海くんを呼び出す。上京当日なつめが読んでた海くんの手紙の内容からすると、どう考えてもフラれてるのだけど、なつめは気づかない。海外留学も視野に入れて頑張っているから、鹿児島には帰らないという、海くんの話は一切聞かず、海くんには有名パティシエなんて絶対ムリだから、私と一緒に鹿児島に帰ろうと言うわけです。うーん。どうですか?(笑)

前半部分はほぼこんな感じ。上記内容を鹿児島弁でまくし立てるので、これはやっぱり田舎から出てきた世間知らずの子ってことにしたいのかなと思うと、鹿児島の祖母に、また相手の都合も考えずに、自分の考えを押し付けてるんじゃないかと言われてしまう。なるほど、この性格は家族でも厄介だったのか(笑)それなりにショックを受けたなつめだけど、性格が簡単に変わるはずもなく、この猪突猛進型で突き進む。まぁ、ヘタにいい子に変わってしまうのも違うと思うので、その辺りを貫いたのはいいかなとは思うけど、とにかくなつめのキャラが厄介過ぎでつらい(笑)

多分、考えが甘い若者が本物のパティシエ達に会って、成長していく話にしたいのだろうけれど、それにしてもキャラが強過ぎて、ついて行けない。ケーキの味に感動して、働くことになったわりに、海くんを見つけたら、普通のケーキ屋やろうと言うのは矛盾してるし(笑) それも未熟ってことで、迷走してるってことなのかもしれないけど。試食した十村が無言で去ると、追いかけて食ってかかるし(笑)上から目線を指摘されれば、あなたは逃げてるだけだと、事情も知らずに反論するし… それをきっかけに、話を廻してるのは分かるんだけど…

十村がパティシエを辞めた理由は、簡単に言ってしまうと幼い娘を亡くしたから。忙しさを理由に家庭を顧みず、娘をかまってあげられなかった。その日、幼稚園に娘を迎えに行く約束をした十村は、仕事のトラブルで忘れてしまい、一人で十村の店にやって来た娘は、彼の目の前でトラックにひかれてしまう。娘より大切なものって何ということで、以来スィーツは作れなくなった。映画のエピソードとしてありがちではあるけど、やっぱりそれはムリだとホントに思う。悲劇的な理由で引退してしまった伝説のパティシエから、新米パティシエが才能を見出だされるという話だと思っていたし、かなり曖昧な感じになってしまったけど、着地点としてはそうなので、十村が辞めてしまった理由は必要だし、説得力はある。

洋菓子店コアンドルは人気店で、当然、常連さんもいる。元女優の芳川さん。いつも毅然として品があるけど、それだけに厳しい。依子はなつめのケーキを試食してもらう。売り物としてはどうだろうかとキビシイ意見。でも、実は(私はおいしいと思うけど)という括弧書きがあるわけで、それを言えないところが、彼女の寂しさでもあると思うけど、いつも着飾ってきちんとした身なりでやって来る芳川さんが、実は団地住まいであるという事実や、病みやつれた姿は絶対に見せないプライドは、哀れさではなく品格を感じる。だからこそ括弧書きを言えない部分もあるのだということ。そして、プライドを保つというのは、不等に扱われたと憤るのではなく、自らの意志を貫くことであって、それは孤独であるということ。芳川さんには素敵な旦那様がいらしたけれど、旅立つ時は一人だからね… このエピソードはベタだけど良かった。

黒っぽいスーツ姿の男性達と、晩餐会の契約を結ぶ依子。てっきり芳川さんのお葬式の晩餐会かと思った。お葬式で晩餐会っていうのも変だけど(笑) 唐突にこの場面だったし、何の晩餐会なのか最後まで説明がなかったので… 契約を済ませた帰り、疲れが溜まっていた依子は、階段から落ちて骨折。入院してしまう。自分がいなければお店はムリということで、晩餐会も断り、コアンドルは閉め、スタッフも解散ということになる。マリコは自分を認めてもらえず傷つく。

マリコには店を任せたいという話が来る。よい条件で、自分を認めてくれている。でも、失敗すれば即クビというような緊張感もある。すごく不安になってコアンドルに明かりが見えて、飛び込んで来てしまう気持ちは分かる。彼女にとってもコアンドルは居場所だったし、依子に頼る気持ちは大きかったのだと思う。いつもクールだからといって、強いとは限らない。突っ張っている人ほど、不器用で甘えたがりなのかも知れない。この辺りを江口のりこが好演。

で、いよいよ伝説のパティシエ登場。この辺りは王道パターンなので、サラリと流しますが、要するになつめが説得に行く。そして、マリコのところにも。相変わらず、力を貸して欲しいと頼みに行くにわりは、十村にはもう逃げるなとか、マリコには大嫌いだとか言ってしまうのだけど(笑) 最終的には、自分では力不足だから助けて欲しいという熱意が伝わるから、2人は来てくれるのだし、それを言えるようになったというのは、なつめの成長ということだから、ここは良かったと思う。上記やりとりを、マンションとアパートのドア越しにするのは近所迷惑では?というツッコミはなしで(笑)

結局、何の晩餐会なのか不明だけど、フランス人の要人一家をもてなすってことなのかな。伝説のパティシエ十村の作るスィーツは、食べた人を幸せにするそうで、食事中ずっとうつむいて、何も手をつけなかった少女が、十村のスィーツで笑顔になるエピソードは、ベタでも入れなきゃと思うけど、何度も書くけど何の晩餐会で、この少女が誰で、何故食事に手をつけないのか説明が一切ないので、唐突で取ってつけたようになってしまっていたのが残念。この晩餐会が山場なのだと思うのだけど…

この晩餐会のシーンで、十村はなつめにニューヨークで修業して来いと言い出す。これも唐突。パリ修業時代、依子と共にニューヨークに引き抜いてくれた恩人に、なつめのことを頼んだらしい。ならば、私の頼みを聞いてくださいと交換条件をつけるなつめ。見ている側としては、なつめがそんなスゴイ人物の下で修業できるレベルなのかがピンと来ない。なつめのケーキがある程度上達したのが分かるのは、芳川さんのエピソードくらいだし。まぁ、十村は何度か食べているので、潜在能力を見極めたってことかもしれないけど、常にダメ出しされてたし… (笑)

で、ラスト。閑静な住宅街に止めた車に乗る十村となつめ。箱に詰めたスィーツを手に、ある家を訪ねる十村。そこは別れた妻の実家で、出てきた妻にスィーツを差し出し、やっと最近スィーツを作れるようになったと話す姿をバックに、助手席から降りて歩き出すなつめ。これがなつめの交換条件。うーん。全てハッピー方向エンドなのはいいのですが、十村の奥さんの登場シーンってホント少しで、彼がまだ別れた奥さんを愛してるって描写が全くなかったのに、これは唐突な気がした。しかも、コアンドルは? マリコは結局あの話を引き受けるのか? それぞれ笑顔のシーンをカット割りで見せるけど、その後のことは謎のまま。

いろいろ盛り込みすぎて、一番重要であろう十村との晩餐会の準備とかがサラリとしてしまって、後半は駆け足状態で、感動エピソードもこちらが脳内補完しなくてはならない感じ。なんだか読み切りの少女マンガを読んだという印象。役者さんは豪華で良かっただけに残念…

なつめが厄介な子であるのは、あえての設定だと思うけど、これは蒼井優ちゃんじゃないと辛かったと思う。後半、真っ直ぐ過ぎて不器用だけど、その真っ直ぐさが人の心を動かすという部分は描かれていたので、そこに繋がるまでの前半が見ていて辛かったけど、呆れてしまわなかったのは、蒼井優ちゃんのおかげ。先輩マリコの江口のりこも、時に厳しく見守る依子の戸田恵子も良かった。芳川さんの加賀まりこも良かった。お菓子作りはほとんどしないので、キャスト達の腕前がどうなのか分からないけど、良かったと思う。ただ、蒼井優ちゃんは髪を束ねるだけじゃなく、まとめて欲しかったかな。かなり長いので、毛先が入りそうで心配だった。

コアンドルの内装やテラス席が素敵! 内装は素朴だけどパリっぽく、テラス席は南仏風。なつめが暮らす2階の事務所も日本家屋をフランス風にしたっぽくてかわいかった。そしてケーキが全部おいしそう!

素材は良かったのに、いろんなこと詰め込みすぎて散漫な印象になってしまったのが残念… スィーツ好き、少女マンガ好きの方はいいかも。


『洋菓子店コアンドル』Official site


コメント (8)
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