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【cinema】『50/50』(試写会)

2011-12-10 18:32:00 | cinema
'11.11.24 『50/50』(試写会)@なかのZEROホール

migちゃんのお誘い♪ バレエのお稽古の日だったけど、まだ咳が出て体調がいまひとつだったし、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット大好きだから行ってきたー☆

*ネバタレありです!

「ラジオ局に勤める27歳のアダム。腰痛の検査に行った病院でガンの告知を受ける。5年後の生存率は50%・・・ 彼自身は変わらないのに、周囲の自分に対する態度が変化していき・・・」という話。このあらすじだと何だが重い感動ドラマみたいだけど、そうではない。笑を混ぜつつ、押し付けがましくない語り口で、重いテーマをサラリと描いているので、見ていて辛くない。でも、伝えたいこと、伝えるべきことはきちんと伝わってくる。大感動! という感じではないけど、じんわり感動して泣いてしまった。

と、前フリだけでほぼ言いたいことを言ってしまったような・・・(笑) イヤ、中身がないというわけではなくて、描きたいことのほとんどの部分は"普通の日常"であって、劇的な展開はなく、まさにじんわりとした部分だから。ガンになってしまっても人生は続くわけで、即入院とかいう緊急性なのでなければ、闘病しながら"日常の生活"を送るわけだよね・・・ その辺りはリアリティがあったし、でも適度にリアリティがなく・・・ 上手く言えないけど・・・

よく出来ているなと思ったのは、恋人レイチェルと親友カイルの描き方。女好きで調子のいいカイルは、酒もタバコもやらず、女性にも奥手で真面目なアダムとは正反対。レイチェルのことをよく思っていない様子。確かにレイチェルは甘え上手で、自分の都合のいいようにアダムを振り回しているように見える。彼女がアダムの病気を知り、別れてもかまわないと言われても、看病すると言い出したのには確かにビックリした。でも、アダムの病気をネタにナンパを繰り返すカイルのことも、見ている側としては信用できないものがある。どっちもどっちだなぁと思っていると、レイチェルの浮気が発覚! それを見つけたのはカイル。カイルの態度もアダムのためのようでもあり、親友を取られた嫉妬のようでもあり、ふざけているだけのようでもあり・・・ この辺りの描き方が絶妙。2人ともアダムのことを思っているのかいないのか・・・ もちろん2人ともアダムのことを思ってはいるんだけど、結局は"自分"にとってアダムがどういう存在なのかということの違いなんだと思う。分かりやすく親友と恋人にしているけれど、これは誰にでもあてはまることで、どちらが間違っていて、どちらが正しいということでもないように思ったりする。要するにレイチェルにとってアダムは真の意味で大切な存在ではなかったということ。今後、彼女が大切な存在に出会えるのかは謎だけど(笑)

カイルは相変わらず女の子と遊ぶことしか頭にない様子。頻繁にナンパに誘うのもアダムに気晴らしをさせたいのか、彼の病気をネタにしたいのか、見ている側はカイルのおちゃらけぶりの真意が分からず、ちょっとイライラする仕組み。この辺りセス・ローゲンが絶妙なバランスで演じているので、うんざりすることはない。そして、とうとうアダムの怒りが爆発した日、酔いつぶれたカイルを送った彼の家で、カイルの本当の思いをアダムとともに知ることになる。これは感動的 でも、ちゃんと気づいていた気もする。見ている側にも伝わっていた。カイルはアダムが自分の行動の真意に気づいたことを知らないので、彼の態度は変わらないはずなのに、見ている側の視点が定まったので、その行動の一つ一つの意味が変わってくる。それが上手い。病院の外で佇む姿なんて泣ける・・・

アダムは抗ガン剤の治療を続けながら、セラピスト研修生キャサリンのカウンセリングを受ける。キャサリンはマニュアルどおりにカウンセリングをする。そんな彼女にイラ立つアダム。自分は大丈夫だと信じたいのだと思う。患者さんが安心するからしていると言われても、腕に触れることは拒否。真面目で人との間に少し距離を取りがちなアダム。この感じはすごく分かる。でも、カウンセリングは必要ないと言いつつもきちんと通ってくる。まごつく彼女のカウンセリングを否定しているのは、実は抑えている不安とか恐怖とか、そういうストレスを吐き出しているのだと思う。このキャサリンが几帳面なアダムとは逆に片付けられない人で、いつもテーブルの上がぐちゃぐちゃ。アダムにここに座りたくないと言われてしまう始末。見ている側としても、非常に頼りなく見えるけれど、彼女の一生懸命さと健康的な明るさが、アダムを救っているのが分かる。失敗だらけに見えるので、プロとしてはどうかと思うけれど、アダムには実は合っているんだと思う。アダムを車で送る途中、我慢できないから車を止めてと言われ、気分が悪いのかと思ったら、車内のゴミを捨てられちゃうシーンが好き。アダムは車内のゴミは我慢できなくても、彼女のことは受け入れているし、キャサリンもそれを嫌がってはいない。まだ恋愛には至っていないけど、すごくいい関係なのが分かる。

アダムは一人っ子のようで、離れて暮らす母親は彼が心配で仕方がない。かなり強烈な母親はたしかに少しウザイ(笑) 父親はアルツハイマーを患っている。抗ガン剤の影響もあり、母親の心配も煩わしく邪険に扱ってしまう。母親のことをカウンセリングでキャサリンに話すと、アルツハイマーの夫と2人きりで暮らし、ガン闘病中の息子を心配しても邪険にされて、お母さんの話は誰が聞いてくれるのかと言われてしまう。ちょっと胸に突き刺さった。これは母親に対する甘え。自分の必要な時にはいて欲しいけど、それ以外の時は放っておいて欲しいというのは、こうして改めて文字にしてみると自分勝手だと思うけれど、普段無意識にしてしまっているかも。とっても思い当たるふしがある・・・ こんなことを言えるキャサリンはすごい。こういう女性にならなきゃダメだね(笑) この言葉を受けて両親とともに経過報告を受けに行くアダム。ここでも母の強烈な個性が発揮されるけど、母は強しとも言える。この母親はアンジェリカ・ヒューストン。さすがの演技。

カイルの真意が分かるシーンとか、とにかくさりげなく映像や音楽で伝えるのが上手い。例えば冒頭のシーン。ジョギング中のアダム。赤信号ではその場で足踏み。車は全然通らないので、後から来た女性は信号無視して渡ってしまう。やれやれという顔で見ながら、アダムは渡らない。きちんと青に変わってから進む。このシーンだけで彼の真面目で、保守的な性格が分かる。そういうのが上手い。ガンの宣告を受けた時、医師の声が遠くなりキーンという耳鳴りのような音が響く。ガンの宣告を受けたことはないけど分かる。こうなると思う。去年、父親の病名と余命を聞かされた時のことを思い出す。呆然とした後、涙が止まらなくなって母親に叱られた。母は強い・・・ 初めての抗ガン剤投与の直後は、まるでドラッグでハイになっているかのような映像と音楽。これも上手い。でも、その夜激しく嘔吐してしまうシーンがあるから、このシーンの意味がちゃんと伝わる。カイルのおふざけ満載だった時にも、要所要所で締めているから、軽くなり過ぎずに伝わってくる。劇的変化はしないけど、アダムの顔色も表情も徐々に変わっていく。でも、それを過剰にアピールはしない。その感じがいい。

手術のシーンは気づけばボロボロ泣いていた。前述したけど、病院の外で佇むカイルの姿や、手術室へ向かう直前「Mom!」と母親を呼び、抱き合う姿とか見てたら泣いてた。号泣とは違うけど、自然にボロボロ泣いてて、着用していたマスクが濡れてしまった(笑) でも、この自然と泣いてしまう感じが、この映画を表しているのかなと思う。さり気ないけど、じんわり感動できる。伝えたいことがちゃんと伝わってくる。

キャストは皆良かった。アナ・ケンドリックは、明るく健康的でいい子という、ちょっと鼻につきそうなキャラを嫌味なく演じていた。天然で一見ダメっぽいのに、お母さんについてのセリフとか、頭のいい感じを自然に演じていた。ちょっと損な役レイチェルのブライス・ダラス・ハワードも良かった。身勝手な人ギリギリ。でも、共感を持たせる感じはブライス・ダラス・ハワードの演技のおかげ。母親役のアンジェリカ・ヒューストンが貫禄の演技。このお母さんにはかなわない(笑) 息子を愛するあまり口うるさくなってしまう感じや、いざとなると誰よりも気丈。それは息子が助かると信じているから。むしろ助ける!と思っているから(笑) そういうのが伝わってくる。

カイルのセス・ローゲンが良かった! お笑い担当でもあるけど、実は・・・ってこところが感動的なので、そこまでの伏線として、見ている側をイライラさせないといけない。でも、イライラさせ過ぎてもいけない。もしかしてこれは、あえておちゃらけているのかなと思わせないと。その辺り絶妙。まぁ、ちょっとおいしい役だった気もするけれど(笑) セス・ローゲンの演技には説得力があった。何度も書くけど病院の外で佇んでる姿が好き。ジョゼフ・ゴードン=レヴィットはやっぱり上手い! アダムはかなり地味な人。真面目で保守的、そしてあまりイケてない(笑) 『インセプション』のアーサーではあんなにかっこよかったのに・・・ 『(500)日のサマー』といい、イケてない役似合う。闘病生活の辛いところはあまり描かれないけど、どんどん顔つきが変わってくる。むくんだような感じで目もどんよりして辛そう。その辺りさり気なく演じていて上手い。ガン患者を重過ぎず、軽くなり過ぎず演じていて絶妙。彼が受けた衝撃や、平静を保とうとしている感じが伝わってくる。この演技は良かった。

アダムの家の感じとか、キャサリンのカウンセリングルーム(汚いけど{涙})とか好きだった。患者仲間の家でのBBQとかも良かった。この後、切ないシーンがあるけれど・・・ この時の患者仲間のおじいさんのセリフも良かった。さり気ないセリフが重過ぎず、でも的確に真理を伝えてくるのがいい。全体的に好きだったけど、レイチェルの絵を思い出消去として燃やすのはいいとしても、卵をぶつけたりするのは、ちょっとかわいそうだったかな・・・ 絵に罪はない

映像、音楽、セリフ、それらの見せ方が絶妙。何度も書くけど、重いテーマをさらりと描いてるのに、きちんと伝えるべきことが伝わってくる。そして、じんわり感動できる。上映時間も100分と短め。オススメ!

『50/50』Official site

ずっと感想書きたかったけど、『オペラ座の怪人25周年記念公演』に心奪われ過ぎてて、なかなか書けなかった・・・ やっと書けてよかった ヤタv(-∀-)v♪


コメント (2)
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