2019.08.09 『ドッグマン』試写会@キノフィルムズ試写室
cocoで当選! いつもありがとうございます。久々の試写会! 下手したら今年初ではないか? 予備知識を一切なしでチラシのイメージのみで応募。キノフィルムズ試写室初めてでワクワクしながら行ってきた~
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「イタリアの海辺の貧しい町で、犬のトリミングサロン ドッグマンを経営しているマルチェロ。貧しいけれど、大好きな犬の世話をし、仲間とサッカーに興じ、離れて暮らす娘と過ごす時間を楽しみにしている。しかし、彼には町の厄介者シモーネとの腐れ縁が切れずにいた。ある日、シモーネが持ち掛けた話を断り切れず、事件が起きてしまう・・・」と、あらすじとしてはこんな感じかな。ホントにチラシのイメージだけで見に行ってしまったので、まさかの内容と展開にビックリ😲 イヤ、てっきり犬との心温まる話、もしくはコミカルな感じを想像していたので。実際に起きた殺人事件がベースになっているそうで、見ている間中イライラしっぱなしの不条理モノだった。その辺りは狙いだと思うので、そういう意味では監督の術中にはまっているということで、お見事と言えるのかもしれないけれど、好きかと聞かれると微妙ではある😅
マッテオ・ガローニ監督作品。代表作は『ゴモラ』ということだけど未見で、作品を見るのは初めて。作品について毎度のWikipeidaから引用。『ドッグマン』(Dogman)は、マッテオ・ガローネ監督による2018年のイタリアのクライム・ドラマ映画である。第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映されてパルム・ドールを争い、マルチェッロ・フォンテが男優賞を獲得した。第91回アカデミー賞外国語映画賞にはイタリア代表作として出品されたが、ノミネートには至らなかった。 とのことで、あとはキャストの記載があるくらい。俳優たちのWikipeidaも英語版もしくはイタリア語版のみで、知っている俳優はいなかった。
ほとんど説明のない映画で、見せられているシーンから人間関係とか主人公の現状を見る側が推測する感じ。例えば主人公の職業に関しても、冒頭犬を洗うシーンがあるので、これが職業だろうとは思うけれど、後のシーンで苦労して店を出したと言っているから、雇われているのではなくて経営していることが分かる。仲間とサッカーするシーンがチラリと入ることで、主人公の普段の生活とか楽しみが分かる仕組み。そしてサッカーシーンは後の伏線でもある。とにかくそういう作りなので、見ている側はいろいろ解釈しながら見るわけなので、特別ミスリードを誘うようなことはないけど、間違った解釈をしている可能性はある。要するに言い訳です😅
舞台となるのはイタリアの小さな町。詳しい説明がないので地名などは不明。主人公の店の前に何もない広場があって、反対側に団地的な建物があり、その奥に海が見える。とてもさびれていて、演出だと思うけれど常にどんより暗いイメージ。イタリアという言葉から連想する陽気なイメージはない。舞台となっている年代がハッキリと出た覚えがない。スマホとか出てきたかな? でもユーロという言葉が出て来たと思うので、少なくとも2002年以降ということなのかな🤔
主人公のマルチェロ(マルチェロ・フォンテ)は「ドッグマン」という犬のトリミング店を経営している。この店名が作品タイトルで原題も同じ。そしてこれはダブルミーニング。店はそれなりの広さはあるものの、暗くて清潔なイメージではない。後に娘とトリミングの大会的なものに出場し、優勝ではないものの3位くらいにはなったらしい描写が入るので、それなりに腕は良いと思われるけど、この店を見たら預けたくなる感じではないかも。でも、後におの場所が重要な意味を持つので、この辺りも伏線なのかも?
マルチェロはどうやら妻と離婚したらしく、一人娘のアリーダ(アリーダ・バルダリ・カラブリア)は元妻と暮らしているらしい。アリーダをとても愛していて訪問を楽しみにしている。2人で海外旅行に行こうという話をした後、海でシュノーケリングをしていたけれど、海から出た風景はリゾート地には見えなかったので、海外旅行は2人の夢であり、この思いがマルチェロにある行動をとらせたということだと思う。
マルチェロは小さくて痩せていて目がギョロギョロした貧弱な男性。演じるマルチェロ・フォンテには失礼だけど、この外見がとても効果的。前述どおり全編イライラさせる不条理モノなので、そのイライラ要素に一役買っている。ホメてます!
さて、早い段階で重要人物が登場する。町の厄介者シモーネ(エドアルド・ペッシェ)という男。説明があったか不明なのだけど、見終わった後何かの記事で元ボクサーという設定であることを知った。体が大きくて暴力的。絵に描いたような厄介者で、ゲーム機がたくさん置いてあるバー的なものをマルチェロのサッカー仲間が経営しているのだけど、ゲームが上手く出来ず損したからといってゲーム機を殴って壊してしまった挙句、損した分のお金を払えという始末。店主はもちろん断るけれど、ますますゲーム機を壊すので払わざる得ない。皆は腫れ物に触るという感じで、極力近づかないようにしているようだけれど、マルチェロは生きるすべとしてなのか、シモーネにドラッグを横流ししているらしい。代金を払わないばかりか娘が来ているからトイレで吸ってくれと懇願しても聞かない。もうホントに最悪な人物なわけです。
このシモーネには町中が困っていて、マルチェロたちも仲間で食事している際に、人を雇ってシモーネを始末してしまおうなどという話も出るくらい。イヤでもこういう人物がいるのは本当に困るわ😩 マルチェロもその際には仲間に賛同するようなことを言っているけれど、家の前でシモーネに待ち伏せされて、空き巣の手助けをしろと言われると、結局断り切れずいわゆるゲッタウェイドライバーをしてしまう。もう本当に聞く耳持たずに暴力的に脅してくるので、マルチェロの立場でキッパリ断れる人は少ないとは思うけれど、そもそもマルチェロならば言うことを聞くと思っているから目をつけられているわけで、その辺りが見ていてなんともイライラが募る😣
マルチェロは運転手をさせられただけなので、空き巣自体には関わらなかったのだけど、戻ってきたシモーネと仲間が犬に吠えられたので冷凍庫に入れてやったと話しているのを聞き、居ても立っても居られなくなる。結局、シモーネたちと別れた後、被害者宅に忍び込み犬を救出する。冷凍庫から出された犬はコチコチに凍っていたけれど、お湯をかけてマッサージしてあげたら息を吹き返した。犬が無事で見ている側もうれしかったし、マルチェロの犬好きエピソードとしてもほっこりで、コミカル要素でもありつつ、指紋をベタベタ残していくマルチェロに捕まってしまうぞとイライラしたりもする。マルチェロが忍び込んだ時、シモーネたちにより部屋が荒れ放題だったけれど、結局この件でマルチェロが逮捕されることはなかった。
しばらく、マルチェロとシモーネのエピソードが続く。順番が分からなくなってしまったのだけど、マルチェロはシモーネにストリップバー的なところに連れて行ってもらう。初めて来たのかキラキラしちゃって楽しそう。マルチェロはこういう時々優しくて、自分の知らない世界を見せてくれるシモーネに"友情"を感じてしまっているのかもしれない。それはいわゆるDV被害者の陥りがちな症状なのだと思う。
シモーネが何者かに撃たれた時も必死で助けてしまう。まぁ、自分の目の前で人が撃たれたら、誰でも同じ行動をするとは思うのだけど、その前に仲間が人を雇って始末するという話をしていたわけなのだから、放置してしまえば誰もが救われるわけで。と、こう考えてしまうのはやっぱりダメなのでしょうかね? 手の付けられない悪党は殺してしまえというのが乱暴な考えなのは分かるのだけど、必死に助けてしまうマルチェロののお人よしさ加減にイライラしてしまう。そして、それはたぶん狙い。
シモーネの実家に彼を運び込むと、彼の母親はシモーネがドラッグを使用していることに気づき、意識が戻ったシモーネを罵倒し、二度と家に来るなと追い出す。この期に及んでもマルチェロはシモーネをかばう。イライラ😤
この事件の後だったと思うけれど、シモーネにねだられて麻薬の売人の所に行くシーンがある。シモーネは彼らを怒らせてしまい、売人がシモーネを撃とうとしたんだっけ? 殴って来たんだっけ? とにかく襲われそうになったわけです。ここでもマルチェロは気をつけろと叫びシモーネを助けてしまう。結果、シモーネは売人を殺害してしまったと思うのだけど、これは単純に気を失ってただけだっけ? さすがに死人が出ていたら警察が動かないことはないか🤔 重症でも命に別条がなければ状況か状況だけに相手も通報できないかも。前述したストリップバーはこのお礼で連れて行ってくれた設定だったかもしれない。
いろいろ記憶が曖昧だけど、ここで大切なのはマルチェロには2度もシモーネを見殺しにする機会があったということ。そしてマルチェロはそれをしなかったということ。
ある夜、いい考えがあるとシモーネがドッグマンにやって来る。マルチェロの店の壁に穴を開けて、隣の店からお金を盗むというのだった。隣人はマルチェロの友人。当然ながらマルチェロはそんなことをしたら自分は全てを失ってしまうからやめて欲しいと懇願するけどシモーネは聞かない。ホントにこのシモーネの聞く耳を持たないというか、話が全く通じない感じがすごくて、ダメだと分かっていても根負けしてしまう感じはよく分かる。常に平行線という感じ。結局マルチェロは見て見ぬふりをすることを承知してしまう。
翌朝、店にやって来たマルチェロが見たのは、警察官と野次馬たち。店入ると壁には大きな穴。シモーネはバレないように上手くやると言っていたのに、隠す気すらない。初めからマルチェロのことなど考えてもいない。マルチェロは連行されてしまう。場面変わって警察署内。取調室ではなく、署長と思われる人物の部屋。シモーネの犯行だと見ている署長は、マルチェロに本当のことを言うように促すけれど、マルチェロは頑なに拒否。ならば刑務所に入ることになると言われても言わない。もう何故なの?😟 マルチェロのようなタイプが刑務所に入るとどうなるか分かるかと脅されても、結局シモーネが主犯だと認めることなく収監されることになる。友人を裏切らなかったと言えばそうなのだけど、そういう清々しさが一切感じられないのは、やはりイライラさせる演出になっているからだと思う。なのできっとイライラして正解。
刑務所に入る際には屈強で悪そうな男たちがマルチェロを見ているシーンがあったけれど、実際マルチェロがどんな目に遭ったかは描かれないので不明。場面は1年後に切り替わる。マルチェロが出所して戻って来る。被害者となった隣の店の友人には裏切者と罵られる。住むところも失ったマルチェロはドッグマンで寝泊まりする。夜に別の友人のゲームバーに行けば、やはり裏切り者と罵られて店から追い出される。こうなることはマルチェロ自身が分かっていたことだと思うけれど、そうまでして何故シモーネを庇うのか。そこが本当に分からない。イヤ、分かるけど分からない。
マルチェロはシモーネに何度も無視されるけれど、やっとの思いで話す機会を得て分け前をくれと言う。でも、シモーネがくれるはずもない。シモーネは完全にマルチェロをバカにしていて、マルチェロのことなど利用するだけの存在だと思っている。おそらく誰のこともそうだけれど、特にマルチェロに対してはそう思っている。マルチェロにはサッカーや食事をする仲間がいたけれど、その仲間よりもシモーネに惹かれてしまう部分があったのかもしれない。憧れとかそういうことではなくて。上手く言えないけれど。この離れられない感覚は分からなくもない。とはいえ、とうとうマルチェロは怒りを爆発させて、シモーネのバイクを棒でボコボコにしてしまう。見ている側も少し胸がすく思いがするけれど、直ぐにシモーネにボコボコにされてしまう。見ているのが辛過ぎる😩
書き忘れていたけど、マルチェロは店をドッグホテルとして再開していて、それなりにお客がついている。マルチェロはシモーネをドラッグをエサに言葉巧みに店に誘導し、檻の中に監禁してしまう。この後の展開により、マルチェロがシモーネをどうしようと思っていたのか分からなくなってしまったのだけど、どうしうとしてたのかな🧐 それがちょっと気にかかる。シモーネは檻から脱出することに成功し、マルチェロともみ合いになるのだけど、マルチェロは機転をきかせてシモーネを鎖で絞め殺す。このシーンの緊迫感は凄かった。
マルチェロはしばし呆然となってしまうけれど、シモーネの遺体をなんとかしなくてはと苦労して車の荷台に乗せる。てっきり遠くに運ぶのかと思ったら、わりと近場の草むらでシモーネを燃やし始める。なかなかスゴイなと思っていると、マルチェロは遠くで仲間がサッカーをしていることに気づく。大声で仲間を呼ぶけれど誰も気づかない。ふと気づくとそれはマルチェロの幻想だった。我に返ったマルチェロはシモーネの火を必死で消す。何故 そして、焼けただれた遺体を運び出す。何故 そして、公園のような所でシモーネを下ろし、自分も腰かけて何とも言えない表情を見せて映画は終わる。何故
うーん。とにかくマルチェロの行動がいろいろ謎。謎なのだけど非力で小心者のマルチェロが、シモーネのような人物に目をつけられてしまった場合、こんな風に生きるしかないのかなと思ったりもする。それは地獄のように思うけど、でも時にはストリップバーに連れて行ってもらったりと優しくされると、とても楽しくてうれしかったりするのかもしれない。DV被害者の心理なんだよね。そして、そこから抜け出すためには相手を殺すしかなかったということなのかな。その後の行動は謎過ぎるけれど。でも、何故かマルチェロならばこんな感じになってしまうの納得してしまう。最後までイライラさせられるけれど、なんだかスッキリしていなくもない。爽快感は全くないけれど😅
キャストは全員知らない俳優さんだったので、そのまま役柄として見れたという利点はあったかもしれない。とはいえ、シモーネのあの常識の全く通じない粗野な人物を演技でやっているのだとしたら、エドアルド・ペッシェはスゴイ! もうホントに話通じないって絶望しかない。そして、マルチェロのマルチェロ・フォンテが容姿を含めてスゴイ。よくこの人見つけたねと言いたくなるくらい。小さくてガリガリに痩せていて猫背。頬はコケて目がギョロギョロしている。全体的にオドオドしていて、でも意外に大胆なところがあったりする。もう見ていてイライラしてしまうのだけど、それが狙いなのでお見事!
町全体のさびれ具合がスゴイ。これどこでロケしたんだろう? イタリアのイメージはどこにもない。マルチェロの男所帯の家は真っ暗だし、ドッグマン店内も薄暗い。犬のトリミングとかホテルという言葉からイメージするかわいらしさとか清潔感もない。全体的にどんよりしていて、結構暴力的。マルチェロの理不尽な状況や、彼の謎行動にイライラしっぱなしだけど、不思議と目が離せない。時々クスッと笑わせる部分もあったりする。
うーん。これはどの層にオススメすればいいんだろう? カンヌ映画祭っぽい作品好きな方オススメって感じかな🤔