【art】「松方コレクション展」@国立西洋美術館
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国立西洋美術館で開催中の「松方コレクション展」 先日、ぶらぶら美術博物館を見た時に記事(コチラ)にしておいたので、詳細はそちらにまとめてある。サラリと書いておくと、元内閣総理大臣の松方正義(Wikipedia)の三男で、川崎造船の社長だった松方幸次郎(Wikipedia)がヨーロッパで買い付けた美術品を展示する企画展。これは見たいと思っていたので、テレビでの予習後なるべく早めに行ってきた。
日本の画学生が本物の西洋画を見ずに勉強していることに心を痛めた松方は、日本に西洋美術を展示する美術館を建設する夢を抱き、ロンドン、パリ、ベルリンなどで美術品を買い集めた。その数は3000点を超えると言われているそうだけれど、関東大震災(
Wikipedia)と金融恐慌(
Wikipedia)で川崎造船が経営破綻し、コレクションを売却せざるを得なかった。
また、ロンドンで作品を保管していたパンテクニカン倉庫が火災にあい、約900点が焼失してしまった。長い間詳細がわからなかったけれど、2016年にアーサー・トゥース・アーカイブスからリストが発見され、松方のアドバイザーだったフランク・ブラングィンだけでなく、ギュスターヴ・クールベ(
Wikipedia)、ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(
Wikipedia)などの作品も含まれることが判明したのだそう。それはもったいなかった😢
また、第二次世界大戦(
Wikipedia)により作品を疎開させる際に、疎開資金として売却したり、保管を任せていた部下日置釭三郎の生活困窮により売却された。戦後は敵国人財産としてフランス政府に接収されてしまった。1959年フランス政府より、作品を展示保管するための美術館を建設することを条件に返却されるも、重要な作品とみなされた20点は戻らなかった😢
そんな憂き目を見た美術品たちだけれど、これらの作品が戻ったことにより、松方幸次郎念願の美術館が出来たことは、切ないけれども良かったと思う。きっと松方幸次郎も喜んでいると思う😌
プロローグとエピローグを含むと10個の章に分けて展示。全て見応えがあって、紹介したい作品やエピソードもたくさんあるのだけど、全部は無理😣💦 一応、ぶらぶら美術博物館の記事である程度章ごとに記載しておいたので、今回は思いつくまにしておいたTweetに追記する形で感想としたい。
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ジョン・エヴァレット・ミレイ「アヒルの子」
ジョン・エヴァレット・ミレイ(
Wikipedia)の「アヒルの子」は"Ⅰ.ロンドン 1916-1918"の部屋に展示されている。ここは当時のロンドンの美術館と同じく、絵を前後左右に重ねて展示されている。たしかに、例えばヨーロッパのお城などに来たような感覚にはなるけれど、ガラスの額に入っているので上の方は見ずらかったかも😅 しかし、この子ホントにカワイイ。今にも喋り出しそう。この作品は以前、常設展で見たことがある。
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ピエール=オーギュスト・ルノワール「帽子の女」
ピエール=オーギュスト・ルノワール(
Wikipedia)は「アルジェリア風のパリの女たち」が今回の目玉の一つだけれど、今作もとってもかわいい。これ「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ ーピュリスムへの時代」(感想は
コチラ) を見に行った時に、常設展で見て写真も撮っているけど、こうして見てみると感慨深いものがある。
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クロード・モネ「睡蓮」
こちらも今回の目玉の1つ。クロード・モネ(
Wikipedia)の「睡蓮」 今回は2つの「睡蓮」がプロローグとエピローグに展示されている。この企画展の導入部に保存状態の良い「睡蓮」があり、最後の展示として「睡蓮、柳の反映」が展示されている。この「睡蓮、柳の反映」が辿った運命こそが、松方コレクションを象徴していると思うので、この展示方法はとっても理解できる。
今作も常設展で見ているけれど、やっぱり美しい。誰もが思い浮かべるモネの「睡蓮」のイメージってこんな感じじゃないかな? とても幸せな気持ちになる。この大きさや構図には日本の屏風の影響があるのではとのことだったけれど、たしかに何となく親しみがあるのはそういう理由なのかもしれない。
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ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「アルルの寝室」
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ(
Wikipedia)の「アルルの寝室」はフランス政府から返還されなかった20点のうちの1つ。ゴッホはアルルの寝室の絵を3枚描いていて、これは3枚目。ポール・ゴーギャン(
Wikipedia)との別れがあって精神療養院に入院していた時に描いたそうで、なんと母親のために描いたのだそう。切ない😢
この作品は"V.パリ 1921-1922"に展示されているので、その間に入手したわけなのだけど、この当時パリには部下の日置釭三郎、姪の黒木竹子と夫の黒木三次、洋画家の和田英作(
Wikipedia)、仏文学者の成瀬直一夫妻、そして美術史家の矢代幸雄(
Wikipedia)が滞在していたそうで、この矢代も作品購入のアドバイスをしていたらしい。そして、矢代が今作に惚れこみ、どうしても日本へと松方を口説いたのだとか。矢代と松方の思いを考えると返還されなかったのは切ない😢
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アンリ・マティス「長椅子に座る女」
アンリ・マティス(
Wikipedia)はあまり得意ではない。フォーヴィスム(
Wikipedia)を代表する画家ということだけど、フォーヴィスムがどういうものなのかは分かっていない。ただ、この頃の流れであろうキュビズム(
Wikipedia)も苦手だし、マルク・シャガール(
Wikipedia)とかも苦手。理由はよく理解できないから。理解できないからダメだということではなく、どう判断してよいのかよく分からないということ。好きではないけど、嫌いでもないという感じ。ただ、この絵は好きだった。でも、どこが好きかは説明できない😅
今作は、疎開時代に生活に困窮した日置が売却したうちの1枚。この女性はアンリエット・ダリクレールとのこと。すみません💦どなたでしょう? 調べたけどよく分からず。
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エドガー・ドガ「マネとマネ夫人」
エドガー・ドガ(
Wikipedia)とエドゥアール・マネ(
Wikipedia)は近代パリ市民生活をモティーフとした先鋭的作品を描く共通点があったとのことだったけれど、ぶらぶら美術博物館ではブルジョワ出身どうしでもあり仲が良かったそう。ドガはポーズをとらせず自然な姿を描く画家として知られているそうだけれど、このマネの姿は本当にリラックスしている。マネが描いた「自画像」も展示されていたけど、この絵とあまり似ていなかったように思う。マネは自画像を2点しか残していないそうで、この絵は都会的で無頓着な雰囲気を出そうとしているように見えるということだったので、これはドガが描いた方が本人に近いのかもしれない。
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ピーエル=オーギュスト・ルノワール「アルジェリア風のパリの女」
今回の目玉の1つ。フランス政府としては今作も返還しない意向だったようだけれど、矢代幸雄ら日本側の粘りで返還がかなったのだそう。ありがとうございます! 1959年に返還され国立西洋美術館の創設コレクションとなった。中央の女性は恋人のリーズルだそうだけれど、本当にこの女性を愛していたんだな。とっても美しくかわいらしく描いているもの。ルノワールといえばムチムチボディだけど、今作はまだそこまでムチムチでもない。イヤ、十分ムチムチだけど晩年のムチムチ具合と比べるとねぇ😅
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エドヴァルド・ムンク「雪の中の労働者たち」
Tweetするの忘れてしまったのだけど、エドヴァルド・ムンク(
Wikipedia)の「雪の中の労働者たち」もよかった! 小さな画像しか見つけられなかったのだけど、実際はかなり大きな作品。まさかムンクまで購入しているとは驚いたけど、これも松方コレクションの特徴かなと思う。個人が楽しむために集めたのではなく、日本の画学生のために集めたのだから、ジャンルにとらわれず本物を集めたいという思い。そして、実際この作品とっても力強くてよかった!
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クロード・モネ「睡蓮、柳の反映」
そして、今回の最大の目玉。クロード・モネの「睡蓮、柳の反映」 モネはジヴェルニーの自邸の池のほとりにガラス張りのアトリエを設置し、睡蓮と池の景色の移り変わりを観察し描いていたのだそう。松方が訪ねた時はオランジュリー美術館に展示されている「大装飾画」に取り掛かっていたそうで、今作もその一部になるはずだったのではないかとのこと。モネから直接購入し、ロダン美術館の礼拝堂に保管されていたが、第二次世界大戦勃発によりアボンダン村に疎開。その際におそらく上下逆にして置かれ、さらに水に浸かってしまったらしい。2016年にパリで発見された時には上半分は失われていた。フランスより返還され、松方幸次郎の遺族の方から国立西洋美術館へ寄贈された。
絵層にワニスがほどこされていないそうでオリジナルの状態なのだそう。それだけに筆のタッチなどがよく分かる。絵の具を分析したところ、白=鉛白、紫=コバルトヴァイオレット、緑=ビリジアン、青=ウルトラマリンとコバルトブルーが使われているのだそう。
国立西洋美術館では1年以上かけて修復を行った。現在の修復は失われた部分を補うことはせず、失われたものは失われたものとして修復するそうで、上半分は何もないまま展示さている。その姿が痛々しく、松方幸次郎とモネの思いを考えると切なくなった。思っていたより大きな作品で、完品だったらさぞやという作品だった。
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クロード・モネ「睡蓮、柳の反映」(デジタル復元)
今回、AIを使ってデジタル復元された。作品自体の修復と、このデジタル復元の様子はNHKの番組を見て記事(
コチラ)にしておいた。パリで発見されたガラス乾板により絵自体は分かったので、残された部分やモネの他の作品たちをAIが学習し使われたであろう色を復元する。さらに、画家の方の協力を得て筆のタッチも学習。それらをもとに復元されたのが上の画像。なるほど。これは明るく美しい「睡蓮」とはまた違った睡蓮の表情。
この作品は入口の手前、おトイレの横に展示されている。ちょっと分かりにくい展示だからか見ている人全くいなかったけど、撮影OKだし是非見て欲しい。かなり苦労して復元されていたので😌
また、入口横では映像展示があって、松方コレクションについて説明されている。とっても分かりやすかったし、鑑賞する上での参考になったので見てからの鑑賞をオススメする。後から鑑賞することも可能だけど、また戻ってこないとダメなので面倒なこともある😅
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フランク・ブラングィン「共楽美術館構想俯瞰図、東京」
ロンドンで作品購入のアドバイザーだったフランク・ブラングィンに依頼した共楽美術館の構想図。どうやら麻布に建設予定だったそうで、松方正義邸で石橋和訓(
Wikipedia)、バーナード・リーチ(
Wikipedia)、黒田清輝(
Wikipedia)らと美術館構想を語っていたのだそう。実用的で周囲と適合する建築を依頼していたそうで、この中庭に噴水があることもこだわりだったらしい。これ実現してたらホントに素敵だったなと思う。
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お土産のポストカードは厳選して3枚。「睡蓮、柳の反映」はなかったと思う。
思ったよりも混んでいたけどストレスになるほどではなかった。点数も豊富で見応えあり! 美術史の流れとか、一人の画家に焦点を当てるのではなく、コレクターに焦点を当てるというのも興味深い。そして、本人はもとより作品たちが辿った運命の過酷さを思うと、とても感慨深い企画展だった。もう二度と戦争で美術品が失われることがありませにんように🙏
かなり疲れていたので常設展は見ないで帰るつもりだったのだけど、1Fのトイレが故障中で常設展内のトイレを使ったので、せっかくなのでチラ見。
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ヴィルヘルム・ハンマースホイ「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」
来年1月開催予定の「ハマスホイとデンマーク絵画」を楽しみにしている。ヴィルヘルム・ハンマースホイ(
Wikipedia)の作品は見るの初めてかも。なんだか静かで淡いタッチながら暗くて好き。
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クロトード・モネ「セーヌ河の朝」
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ピエール=オーギュスト・ルノワール「木かげ」
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ポール・セザンヌ「ポントワーズの橋と堰」
ちょっと面倒になってきたのでまとめて😅 同じような風景画を撮ってきてしまったけれど、この3作はとても好きだった。ルノワールは女性を描いた作品が有名だけど、風景画もとてもいいね。モネの「セーヌ河の朝」は緑のみで描いているのがとても好き。ポール・セザンヌ(
Wikipedia)はあまり好きな画家ではないのだけど、この絵はとってもいいと思った。何故か画像が小さくて見づらいけど、セザンヌ独特のタッチが控えめな気がして、そこが好きな理由でもあったり😅
ということで、常設展も含めて見どころたくさん! 国立西洋美術館といえば庭にあるオーギュスト・ロダン(
Wikipedia)の「地獄の門」だけど、これはロダンの生前もブロンズ鋳造されたことがなかったそうで、松方幸次郎が最初の注文主だったのだそう。残念ながら他に急いでいた客がいたため、松方が入手したのは3番目に鋳造されたものだそうだけれど、これもまたすごいエピソード。
とにかく何度も書いてるけど、見れる機会があるなら絶対本物を見るべき! 本物はパワーが違う! 迷っている方是非!!
🎨松方コレクション展:2019年6月11日~9月23日 @国立新美術館
松方コレクション展|開催中の展覧会|国立西洋美術館