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【art】「没後50年 鏑木清方展」鑑賞 @ 東京国立近代美術館

2022-05-08 01:26:55 | art

【art】「没後50年 鏑木清方展」鑑賞 @ 東京国立近代美術館

 

 

美人画の巨匠鏑木清方の没後50年を記念した企画展。これは絶対見たいと思ってた。母親も見たいと言うのでGW後半初日にチケット取って行って来た!

 

ザックリした感想をツイートしておいたので、それに補足する形で記事として残しておく😌

 

 

 

鏑木清方(Wikipedia)は父親が発行人をしていた"やまと新聞"の挿絵を描き画家としての活動を始め、泉鏡花(Wikipedia)からも挿絵を依頼されたらしい。ちなみに、今回の目玉でもある「築地明石町」のモデルとなった江木ませ子も泉鏡花の紹介。

 

当時から東の清方、西の松園と呼ばれる美人画の巨匠。去年、東京ステーションギャラリーでコレクションが公開された福富太郎は、鏑木清方を大変好み、上村松園はあまり好きではなかったようだけれど、個人的にはどちらも好き。

 

松園の女性は凛とした強さ、清方の女性は芯の強い清々しさを感じる。それは描き手の個性はもちろん、女性と男性の違いかなとも思ったりする。

 

第1章 生活をえがく

「明治風俗十二ヶ月 四月 花見」

 

「明治風俗十二ヶ月 八月 氷店」

 

3つの章に分けて作品を展示。第1章の目玉的作品「明治風俗十二ヶ月」 一幅ずつ十二ヶ月をそれぞれ庶民の生活を中心に描く。勝川春章(Wikipedia)の「婦女風俗十二ヶ月」から着想を得たそうで、明治30~33年の風俗を描いている。清方は、今作が第二次世界大戦の戦火を逃れ、無事であったことを知り涙を流したのだそう。

 

最後の方にあったNHKのインタビュー映像展示で、清方本人が語っていたところによると、明治はとても幸せな時代だったらしい。人々にゆとりがあり、裏町もキレイに掃除されていたのだそう。

 

作品の説明文などにもあったけれど、特に明治30年代の風俗をとても愛していたそうで、その頃を描いた作品が多いとのこと。江戸時代が長く続き、激動の幕末から明治初期を経て、外国の文化も取り入れつつ、人々の生活にも余裕のあった時代なのかもしれない🤔

 

この「明治風俗十二ヶ月」からは、そういう豊かな暮らしが感じられ、描かれる人々に品がある。それは別に金銭的に裕福であるとか、高貴なそぶりであるということではなくて、清方が語ったようなゆとりなのだと思う。見ていて自然に笑みがこぼれ、こちらまで豊かな気持ちになる。

 

「雪紛々」

 

清方は雪を縁側で見る女性を好んで描いたのだそう。この作品は初めて見たと思うけど、この女性のつま先を揃えて少し膝を曲げているような立ち姿は、寒い時に身をすくめている様子だし、重ねた手の指や足の指の爪が赤くなっていることで、冬の寒さが伝わって来る。刺すような空気の冷たさも感じる。

 

特集1 東京

「浜町河岸」

 

第1章をさらに区切って"特集1 東京"として13の作品が展示されている。その中に今展の目玉「築地明石町」と、三部作的な「浜町河岸」「新富町」が並んで展示されている。

 

清方馴染みの土地を背景に年代の違う女性を描いた三作品。一番若いのが「浜町河岸」で10代。 浜町には二代目藤間勘右衛門(コトバンク)が暮らしていたそうで、この娘さんも踊りの稽古の帰りにおさらいをしているらしい。

 

薔薇の花の簪が若い娘さんらしさを感じさせる。この簪が流行っていたのかは分からないけれど、そういう"新しさ"のようなものが伝わって来る。

 

「新富町」

 

3人の中では一番年上で40代くらいではないかとのこと。新富町の芸者さんだそうだけれど、年齢だけでない落ち着きというか貫禄が感じられる。この女性が着ている羽織は小紋縮緬だそうで、この色は利休色というのだそう。お抹茶色ってことかな?🤔 

 

バックに描かれているのは新富座で、清方は足げく通っていたのだそう。よく見るとポスター的な物が掛かっていて、これは「忠臣蔵」の場面なんじゃなかったかな? 違ったかも😅

 

「築地明石町」

 

今展のポスターにもなっている「築地明石町」 今作で第8回帝国美術院賞を受賞している。2019年の企画展では44年ぶりに発見されたことも話題になったけれど、これは本当に素晴らしい。同じ着物姿でも上の2作とは明らかに違うハイカラさ。

 

この女性の髪形は夜会巻。明治時代に西洋文化を学ぶため建てられた鹿鳴館。その鹿鳴館にドレス姿で登場した女性たちが結った髪型。チラリとのぞく白い指には金の指輪。着物姿でありながらも西洋文化も取り入れているのかな。

 

この女性は20代~30代とのことだけど、現代の感覚からするともう少し上に見える。まさに臈長けた女性という感じ。足元に朝顔が配されていて、少し色がつけてあるけれど、背景の柵や帆船は極力色を抑えてあって、よりこの女性が浮き上がって見える。清々しい。

 

「浜町河岸」「新富町」「築地明石町」は44年振りに発見された直後の企画展(記事はコチラ)で見ていて、描かれた背景などは既に書いているので、NHKの『日曜美術館』で今展が紹介された際、メモを取っておいた内容を引用しておく。

 

「築地明石町」について

・江木ませ子が夫婦でファンであった泉鏡花の紹介でモデルに

・ませ子をそのまま描くのではなく明治30年代のイメージに

・夜会巻は鹿鳴館で流行

・当時の風情を忠実に再現

・袂を押さえる様子から秋風が吹いていることが分かる

・緊張感(顔、表情)と開放感(手指を描き込んでいない)

・着物、鼻緒、草履は畳表

・頬など絵具を薄く重ねて少しずつ色を加える

・背景に胡粉

・縁蓋(胡粉を塗りたくない部分に和紙で蓋をする)

・現中央区明石町(当時は外国人居留地)幼少期を過ごす

・洋館大震災で倒壊 少年時代の憧れ

 

「浜町河岸」について

・明治時代に浜町に住んでいた

・10代の娘 少女のあどけなさ

・火の見櫓

 

「新富町」について

・新富町は花街

・40代の女性?

・新富町は小学校の通学路だった

・新富座

・白点で描く羽織の花模様

・女性三代の構想? 

 

三部作以外について

・明治40年 文部省美術展覧会に落選しショックを受け自分の作風を模索

・鳥居清長(Wikipedia)、鈴木晴信(Wikipedia)、勝川春章の様式美や型の美しさを参考

・写生を欠かさない

・江戸の様式美と写実主義

・昭和20年 東京大空襲で自宅が焼ける

・嫌いなものは描けない

・明治時代という感受性に富んだ時代を生きて幸せ

・明治時代には季節感があった

 

特集2 歌舞伎

「薄雪」

 

第1章の2つめの特集は歌舞伎ということで、歌舞伎の演目を題材とした作品を展示。「コレクター福富太郎の眼展」(記事はコチラ)でも見た「薄雪」は近松門左衛門の「冥途の飛脚」を題材としたもの。

 

Wikipediaによると、飛脚問屋の養子となった忠兵衛が遊女梅川に入れあげて、彼女を身請けするために店のお金を使い込んでしまい、2人は手に手を取って逃げるも、ついには捕まってしまい大阪へ引き渡されるという話らしい。

 

心中してしまうわけではないらしいけど、そう感じてしまうのは忠兵衛の腰?に刀のようなものが見えるからかな🤔 あとは梅川の表情。切羽詰まったこの表情は哀しく切ないけれど色っぽい。とても好き。

 

第2章 物語をえがく

 

「たけくらべの美登利」

 

第2章は物語をえがくということで、物語の場面を描く作品を展示。「たけくらべの美登利」は今企画展で一番好きだった作品。

 

ツイートでは美登里って書いちゃってるけど、本当は美登利。樋口一葉(Wikipedia)の「たけくらべ」(Wikipedia)は未読だけど、話はなんとなく知っている。下町の幼馴染みの美登利と寺の息子信如の初恋のもどかしさと、やがて姉と同じく遊女になる美登利の運命の切なさややるせなさを描いた小説ではなかったかな? 

 

この作品は信如が僧侶になるための学校に入った朝、誰かが家の門に差し入れた水仙の造花を懐かしく思うラストシーンを描いているらしい。美登利が結っているのは島田で、この髪型になってから美登利は幼馴染みたちによそよそしい態度を取るようになる。

 

それは美登利が大人になったからで、水仙の造花を懐かしく思うのは、彼女の子ども時代の終わり、そして初恋の終わりを表しているのかな?

 

この作品では一見美登利は無表情に見えるけれど、それが逆に彼女の自分の中で整理のつかない思いのようなものを感じて切ない。ほつれた髪には既に大人の色香が感じられて、その辺りの危さも切ない。これはとても好き。

 

清方は少年時代から樋口一葉を愛読していたそうで、一葉の肖像画も展示されていた。

 

 

3月18日から既に4回くらい展示替えをしている。なので「ためさるゝ日」などテレビで紹介されていた作品が見れなかったの残念😢 

 

とはいえ、思ったよりも点数があり見応えあり! 最終週でもあり、GWでもあり、『ぶらぶら美術・博物館』や『日曜美術館』で取り上げられたこともあり、まぁまぁの混み具合。夜間の方が空いてるかもしれない。

 

 

てぬぐい(1,980円) 絵はがき(165円)

 

物販も充実。事前情報で狙っていた手ぬぐいは3種類。1種類が売切れていたけど、これは「新富町」の利休色の羽織イメージのもの。個人的にはこの「築地明石町」イメージのが欲しかったのでよかった😊

 

とにかく見応えあり! 毎回書いてるけど本物を見れる機会があるなら、絶対に本物を見るべき! 

 

没後50年 鏑木清方展:2022年3月18日ー5月8日 @東京国立近代美術館

没後50年鏑木清方展|東京国立近代美術館


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