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【cinema】『栄光のランナー/1936ベルリン』(試写会)

2016-08-11 01:37:04 | cinema

2016.08.05 『栄光のランナー/1936ベルリン』(試写会)@新宿明治安田生命ホール

 

MovieWalkerで当選。いつもありがとうございます 予告を見て見たいと思って応募。とっても楽しみに行ってきたー

 

  

ネタバレありです! 結末にも触れています!

 

「陸上で実力を認められていたジェシー・オーエンスはオハイオ州立大学に入学する。コーチのラリー・スナイダーと時に衝突しながらも信頼関係を築き、世界新記録を次々更新し、1936年ベルリンオリンピックの代表に選出される。しかし、ジェシーは黒人として、人種差別政策を行うナチス政権下のオリンピックに出場すべきか悩むが・・・」という話で、これは実話。実話なので先が読めてしまう部分はあるし、ビックリするような大事件も起きないけれど、ジェシーがオリンピックに出場するまでの2年間を、丁寧に描いていて2時間超飽きずに見ることが出来た。感動って感じではないけれど、じんわりと心にしみてくる良作。

 

毎度のWikipediaはなく、公式サイトにも撮影秘話的な記載がないので、作品情報が書けない その代りというわけではないけれど、ここはやっぱりジェシー・オーエンスについて書いておきたい。毎度のWikipediaによりますと、ジェシー・オーエンス(James Cleveland "Jesse" Owens、1913年9月12日- 1980年3月31日)は、アメリカの男子陸上競技選手。1936年ベルリンオリンピック男子短距離・跳躍種目のそれぞれに優勝し4冠を達成したことで知られている。1935年5月25日に、わずか45分間に5つの世界記録と1つの世界タイ記録を樹立した。このうち走幅跳で記録した8m13の記録は、1960年にラルフ・ボストンに破られるまで25年間世界記録であった。

 

ベルリンオリンピックでは、100m予選でオリンピック新記録を樹立。決勝でも2位の選手を1m離して金メダルを獲得。走り幅跳は最初の2つがファールになり苦戦するも、ドイツのルッツ・ロング(Wikipedia)にアドバイスを受け予選突破。決勝では圧倒的は力を見せつけて2つ目の金メダル。銀メダルはロング、銅メダルは日本の田島直人(Wikipedia)であった。200mでは2位(『42 世界を変えた男』のジャッキー・ロビンソンの兄)に4mの差をつけて圧勝。3日間で3つの金メダルを獲得。4日後4×100mリレーの第1走者として出場。アメリカは世界新記録で金メダルを獲得し4冠を達成。ベルリンオリンピックはナチスがゲルマン民族の優越性を証明するための大会だったが、ベルリンの人々はオーエンスを「オリンピックのヒーロー」として迎えた。

 

オリンピック後、世界における陸上界の英雄的な人物となったものの、アメリカでは黒人差別の下に馬と競走させられたり(自伝でこれは屈辱であると批判)、賞金稼ぎの競技に参加したことからアマチュアの地位を取り消された上に、その後破産するなど波乱の人生を送ることとなった。しかし、その後慈善活動を行うなどしてその名声と地位を取り戻した。これらの功績により1976年に大統領自由勲章を受章した。とのこと

  

映画は、ジェシー・オーエンス(ステファン・ジェイムズ)が大学に入学するため準備をしているシーンから始まる。ジェシーのためにブレザーを新調した母親に、無理しなくてもいいのにというようなセリフがあるけれど、家の感じからすると極貧生活というわけではなさそう。むしろ、日本人の感覚からすれば中流家庭という印象。この辺りの住宅事情のズレはあると思うけれど・・・ ただ、ジェシーが大学に入る事情は、いわゆる白人家庭のそれとは違うのかなと思う。以前、『42 世界を変えた男』(感想はコチラ)のレビューを書くため、参考資料を調べた際、スポーツなどで有能な黒人選手を入学させたけれど、大学卒業後彼らに就職口があるわけではないというような記載があった気がした。『42 世界を変えた男』でも今作でもその辺りの事情についての描写はなかったけれど、おそらくそんな感じだったのだと思われる。ヒドイ話だけど、実際もっとヒドイ差別が行われていたわけだし・・・

 

それでも、意気揚々と大学へ向かうジェシー。途中、美容院に立ち寄る。有色人種専用なのか従業員もお客さんも黒人ばかり。そこで働くルース(シャニース・バンタン)はジェシーの恋人で、2人の間には娘がいる。この時のジェシーの年齢が不明なのだけど、これはちょっとビックリした。後に、学校の帰りに2人で話し、その数日後ジェシーがプロポーズしたけど、まだ早すぎるとルースが断ったというセリフがあるので、きっとその通りだったのでしょう。娘ちゃんは5歳くらいかな? ジェシーは大学に通いながらアルバイトをして2人を養っているので、未婚ではあるけれど、その辺りはきちんとしている様子(笑)

 

ジェシーは大学に到着すると、早速グランドへ出てトレーニングを始める。同じ条件で入学したと思われる黒人の友人も一緒。この彼は何の競技の選手だったのか失念。実際のジェシーとの関係がどうだったのか不明だけど、今作ではコーチとの関係や、後に出てくる感動エピソードをメインで描いているため、ジェシーの心の支えとなるような親友的な位置づけの人は出てこない。でもまぁ、大学で一番近しい友人はこの選手ではあるらしい。

 

練習を終えるとロッカールームで早速人種差別の洗礼を浴びる。後から来たのにフットボール部が先にシャワーを使うというのだった。シャワーどころかロッカールームからも出て行けと言わんばかりの態度。ただ、不快ではあるけれど、見るに堪えない酷い差別というほどでもない。今作ではナチスのオリンピックと呼ばれた、ベルリンオリンピックがメインの舞台となるため、黒人だけでなくユダヤ人差別についても描かれているけれど、あまりあからさまではなく、目を背けたくなるような酷い差別は出てこなかった。

 

ジェシーはコーチのラリー・スナイダー(ジェイソン・サイダイキス)に呼び出される。自らも選手時代はオリンピック候補で、コーチとしても名声を得ていたが、最近ではライバル校に連敗し、地元紙などには進退を問うような記事を書かれてしまったりもする。そんな時に現れたのがジェシー。彼に才能を感じつつ、フォームが悪いなどと歯に衣着せずに言う感じは、ちょっとビックリしたりもするけど、人種差別することなく接してくれることが清々しい。

 

ジェシーのスタートフォームの修正をしたり、スタートラインに立ったら周囲の声をシャットアウトするようにアドバイスしたりと競技面はもちろん、娘たちを養うためにバイトしなくてはならず、思うように練習に出られないジェシーを雑用係として雇い、練習に専念させてくれるなどのバックアップもしてくれる。コーチというのがどこまで踏み込んで指導やバックアップしてくれるものなのか、帰宅部だった自分には分からないのだけど、これは手厚い良いコーチなのではないかと思う。

 

ジェシーはメキメキと上達し、競技会では3日前のアクシデントで負傷しつつも、5つの種目で世界新記録をたたき出す。この競技会で走り幅跳びを跳ぶ際、当時の世界新記録保持者のことを、スタッフに中国人と言い、南部選手は日本人だよと言われるシーンが、日本人としては印象的。これは走り幅跳びの元世界記録保持者で、ロサンゼルスオリンピック三段跳び金メダリストの南部忠平氏(Wikipedia)のことだよね? そして、このスタッフの人は白人だったけど、全く差別することなく笑顔で応対してくれて良い人だった。こういう人もいたのね。

 

当初は観客からニグロと罵声を浴びせられるけれど、コーチの教え通り周囲の雑音はシャットアウト。無音でもニグロと叫ぶ老女の顔の醜さが印象的。生まれついての美醜ではなく、誰かを蔑み罵倒する心の醜さが、顔にも現れている。自分も気をつけないとと思ったりする。そんな罵声もジェシーが世界記録を次々更新すると歓声に変わる。実力で認めさせるのはスゴイ 

 

しかし、有名になるといろいろ誘惑も増えるわけで・・・ ジェシーは遠征先の黒人クラブ(?)で、ゴージャスな美女にダンスに誘われる。恋人がいるからと断るものの、相手は自信満々。一度だけのつもりがズルズルと(笑) よくあるパターン。この裕福そうな女性はジェシーの後をついて回るようになる。そんな2人の様子が新聞にスクープされてしまい、ルースとルースの父親が激怒。ジェシーは女性と別れる決断をする。2人がどこまで深い仲になっていたのか描写がないので不明だけど、女性の激怒ぶりから考えると、まぁそういう関係にはなっていたのでしょう。この後、ジェシーはルースの元に向かい、美容院の従業員や客の前で、今回のことを詫び、プロポーズする。でもルースの答えはNO。仕事のじゃまだからと追い帰されてしまう。諦めきれないジェシーは、雨の中ずっとルースの仕事が終わるのを待っている。まぁ、要するに紆余曲折あって2人は結婚することになるので、感動的というか、かわいらしいエピソードではあるものの、ジェシーの人柄も、ルースが心の支えであることも、別のシーンで伝わるので、2時間超という長さを考えれば、女性問題ごといらなかった気がしなくもない。まぁ、女性との会話でジェシーが本当はJCであることが分かったのは興味深かったけれど

 

一方、アメリカオリンピック委員会(USOC)(Wikipedia)は揺れていた。ヒトラーのオリンピックと呼ばれる、ナチス政権色の濃いオリンピックは人種差別的であるという理由で、ボイコットを求めるデモが行われるなど、国民の関心も高い。黒人や有色人種をあれだけ差別しておきながら、差別的とはよく言うよとも思うけど、まぁ主張自体は間違っていない。USOC内でも参加派とボイコット派と意見が分かれており、参加派代表は後の国際オリンピック委員会(IOC)会長アベリー・ブランデージ(Wikipedia)(ジェレミー・アイアンズ)。ボイコット派代表はエレミア・マホニー(ウィリアム・ハート)。 

 

激論を交わすも結論は出ない。結局、ベルリンの現状を視察しようということになり、会長のブランデージ自ら行くことになる。彼はベルリンでヨーゼフ・ゲッベルス(Wikipedia)に会うことになるのだけど、その際通訳として登場したのが『民族の祭典』のレニ・リーフェンシュタール(Wikipedia)(カリス・ファン・ハウテン)というのは映画好きとしては興味深い。これ実際もそうだったのかな? 彼女はゲッベルスにも一歩も引かず、終始かっこよかったのだけど、実際もそういう人だったのかな? ゲッベルスは冷たい表情を崩さず、自分たちの主張を繰り広げる。ブランデージも引かない。アメリカ抜きでオリンピックをやりたいですか?と切り出す感じは好きかっこよかった。自分たちの国に対する誇りを持てるのっていいな。時に自信過剰になり過ぎている部分もあるかもだけど(笑) 結局、ここはゲッベルスが折れて、街中にはためくナチスの旗を別のものに変えるなどの対策を取る。しかし、敵は一枚上手で、ブランデージの本業である建築業での談合を持ちかけてくる。初めは拒否するブランデージだが、結局これを受けてしまう。本人としては政治と仕事は別と考えて(言い訳して)いたようだけれど、もちろんそんな理屈が通るはずもなく、後にこれがある悲劇を生むことになる。

 

アメリカに戻り、USCOによる決選投票が行われることになる。結果は僅差で参加。これによりジェシーもオリンピック派遣が決まる。特に選考会なども行われず、参加すること前提で話が進んでいたように思うのだけど、そういう感じだったのかしら? まぁ世界記録保持者だし。

 

そんな中、市長がジェシーに会いに実家を訪れる。この場合の市長とは黒人居住区の市長。なので市長ももちろん黒人。市長はジェシーに人種差別的なオリンピックをボイコットして欲しいと言うのだった。自らも黒人であり、影響力のあるジェシーがボイコットすることで、当時盛り上がりを見せていた公民権運動に拍車をかけようという狙い。私自身としてはスポーツと政治は切り離すべきだと考えていて、ある時期まではオリンピックを神聖化していた。でも、結局オリンピックは政治なのだと気付いてからは、あまり幻想を抱かないようにしている。こと採点競技に関しては。ただまぁ、やっぱりこういう話を聞くと暗い気持ちになる。ナチス政権下のオリンピックであるという点で、ベルリンオリンピックは特別だった部分もあると思うけれど、選手にそういう選択を迫るというのは残酷。

 

ジェシーは悩み決断する。壮行会が行われている学校で、コーチに向かってオリンピック不参加を告げる。当然、コーチは説得するけれど、ジェシーの意思は固い。そして、コーチは白人だから気持ちは分からない的な言葉を言い放ち出て行ってしまう。まぁそうだよね・・・

 

コーチが一人夜のグランドで走り幅跳びを跳ぶシーンがある。着地で脚を痛めてしまうけど、これは今痛めたというより古傷的な感じ。後に、コーチは1924年のパリオリンピックの代表に選出されていたのに、出発の数日前に自ら操縦した飛行機で事故を起こし、オリンピックを断念したことが語られる。ジェシーのオリンピック出場は、コーチにとっても自分の夢を託す思いがあったということ。とはいえ、出場を決めるのはあくまでジェシー。コーチは好きにしていいと告げる。

 

ちょっと記憶が曖昧になってしまったのだけど、オリンピック代表記者会見でジェシーは辞退するって言ったんだっけ? 会場内でジェシーを見つめるライバル選手が、会見後声を掛けてくる。ライバル校の短距離の黒人選手で、ジェシーは何度か彼に負けている。代わりに出場したいか的な会話の後、この選手が脚を負傷し、選手生命が断たれたことを告げる。自分の代わりにヒトラーに一泡吹かせてやれと言う。このやり取りが実際にあったことのなのか、そしてこの言葉がジェシーを動かしたのかは不明だけど、映画ではこれがきっかけとなって、オリンピック出場を決意する形となっている。まぁ、行ってくれないと話にならないし、実際出場しているし(笑)

 

ジェシーはスナイダーコーチの同行を希望するけれど認められない。するとコーチは自費で付き添ってくれることになった。ジェシーと同じ三等船室。コーチら役員は一等船室なのに、選手は三等かよと思うけど、これはジェシーたちが黒人だからかな? 後に、正式なオリンピックコーチと衝突する場面があるので、スナイダーコーチの同行はありがたい。公式コーチはライバル校のコーチで、別に悪い人というわけではないのだけど、自らの考えを押し付けるタイプなので、ジェシーには合わないという描写になっている。手違いで靴が届かないジェシーのため、警官?SS?に咎められて危ない目に遭いながら、自ら工場に出向いてオーダーしてくれたりもする。本当に来てくれて良かった。これも実話なのかな?

 

さて、ジェシーの競技当日。通路を通って競技場内に出て行くと、ものすごい観客数、そして歓声。CGだと思うけど、これは圧巻。ジェシーとともに息を飲む。ヒトラーが席に着くと、まるでウェーブのように、右手を前に出すあのポーズをとって立ち上がる人々。ちょっと恐怖を覚える。仮に、この人たちの全てが自分を応援してくれているのだとしても、この観衆の中で競技をするなんて自分には絶対ムリだ(笑) 大好きなフィギュアスケートを見ていても思うけど、観客が多いほど燃えるタイプの人じゃないと辛いだろうと思う。でも、おそらくオリンピックに出場するような選手は前者のタイプなのでしょう。

 

ジェシーの最初の競技は走り幅跳び。いつものように距離を測ったり、イメージをしていると、踏切板を踏み越えてしまったということでファールを取られてしまう。実質1本分のジャンプをミスしたことに。慌てて跳ぶもこれもファール。すると、今大会最大のライバル、ヨーロッパチャンピオンのルッツ・ロングが踏切位置にタオルを置いてくれる。実況では、ロング選手がアシストしてくれたと言っていたけど、てっきり実は足を引っ張っているのだと思っていたら、次にジェシーは手前で踏み切れて決勝に進むことが出来たので、これはやっぱりアシストだったらしい。なにぶん、ひねくれているもので(笑)

 

競技は白熱したものとなるけれど、結果はジェシーの金メダル、ロングの銀メダルに終わる。表彰台が映った時、3位の位置に日本人が映っていたけど、これは田島直人さん。同オリンピックの三段跳びで金メダルを獲得したのだそう。ロングはジェシーを祝福し、2人でウイニングランをしようと言う。肩を抱き合って競技場内を一周する2人。日本人としては田島さんも混ぜてあげてよと思うけれど、これは2人の友情を強調するものなのでしょうし、実際も行われたことなのかもしれない。ただ、自分はこの感動的な場面でさえ、ロングにはなにか思惑があるのでは?と思ってしまったり。だって、ナチス政権下だし、映画ってそういうものだし(笑) でも、そうではなかった。

 

その夜、ロングの部屋を訪ねるジェシー。ロングにタオルのお礼を言うと、実力を発揮してもらったうえで戦いたかったと言われる。ロングは真のアスリートだった。疑ったりして悪かった(笑) ロングは、ナチス政権に対して批判的というか、やり過ぎだと感じているらしい。いくら愛国心から出た言葉でも、そんな話をジェシーにしてしまって大丈夫なのか?と見ている側がドキドキしてしまう。でも、こういうドイツ人もやっぱりいたんだよね・・・ エンディングで主要人物たちのその後が紹介されたけれど、ロングはナチスに批判的であったとして、第二次大戦中に前線に送られ、戦死してしまったのだそう。ジェシーとロングは、ロングが亡くなるまで親交を続けたのだそう。スポーツっていいなと感じる感動エピソード。

 

アーリア人が優秀であることを内外に示したいナチスとしては、ジェシーのこの勝利は受け入れがたいものだった。ヒトラーは金メダリストと会い、共に写真を撮ったらしいけれど、ブランデージが連れて行くと、ヒトラーの姿はなかった。ゲッベルスが「あれと会うと思ったのか?」と言うけれど、まぁ会えるはずないわな。もちろん肯定しているわけではないです! 言い方もムカツクし(笑)

 

さて、そんな中ある事件が起きる。アメリカのリレーチームには2人のユダヤ人選手が出場する予定だった。ところが直前になって、ゲッベルスからストップがかかる。そんなことは受け入れられないと言うブランデージだが、例の談合のことを持ち出されてしまう。仕事上の取引だったはずだと主張しても、この状況で信じてもらうのは無理。ということで、この申し入れを受けざるを得ない。この選手交代を正当化するためか、最強の布陣で行くということで、急遽ジェシーが出場することになる。バトンの受渡も知らないからと断るけれど、受け入れられない。これはヒドイ。でも、ナチスがユダヤ人の出場を認められないのは分かる。もちろん、これも肯定しているわけではない。このエピソードは実際にあったことなのかな? 実際のジェシーは第1走者として出場している。

 

ジェシーが走ることになり、またもやアメリカ(しかも有色人種)の前に屈するところを記録するわけにはいかないと、レニたちの撮影は禁止されてしまう。ところがレニはこれを強行突破! レニにとってこれは単なる記録映像ではなく、作品であり芸術なのだから、この態度は当然。でも、それが許される社会ではなかったハズ。実際にあったことなのかは不明だけど、ゲッベルスといえばプロパガンダだから、ありうることではある。このレニの行動はホントにかっこよかった。芸術を否定した社会に未来はないと思う。まぁ、後に映像を見たゲッベルスは大絶賛していたけども・・・

 

レースの結果はアメリカの金メダル。もちろんその場面もバッチリ記録された。といっても『民族の祭典』は見ていないので分からないけど、きっとされているのでしょう! ちょっと『民族の祭典』が見たくなってきた(笑) オリンピックの場面は、ジェシーの幅跳びが上手く撮影できなかったということで、撮り直しすることになり、ジェシーが大きくジャンプしたところで静止。このモノクロの映像は美しかった。

 

場面切り替わり、祝勝会が開かれるホテル前。正装したジェシーが、ドレス姿のルースをエスコートして、スナイダーコーチと共に正面玄関から入ろうとする。すると裏口から入るように言われてしまう。これは彼のためのパーティーだと抗議するコーチに、そうだけれど規則なのだというホテルマン。コーチをなだめてルースと2人裏口へ向かう。厨房を通り抜け、従業員用のエレベーターに乗ろうとすると、白人の少年がサインを求めてくる。この子ちゃんとMr.Owensって言ってて、敬意が感じられる。2人が誇らしげにエレベーターに乗り、上がって行くシーンで終わる。この終わりは良かったと思う。バカな差別と、小さな子供の無垢な心。ホテルマンが老人なのもきっと狙い。古い考えは捨てて、新しい価値観を持つべきだということかと勝手に解釈。

 

キャストはみな良かった。ゲッベルス役の人が気持ち悪くて良かった(ホメてます!)のだけど、役者さんの名前が分からず 見たことある気もするのだけど・・・ ブランデージのジェレミー・アイアンズが、有能で決断力があり、頼れる存在ながら、ちょっとキナ臭い人物を好演。映画内ではそうでもなかったけれど、実際は親ナチ的な人物と言われていたそうなので・・・ ブランデージと対立する、マホニー役のウィリアム・ハートもわずかな出演シーンながら印象を残す。久しぶりに見たので、最初は名前が思い出せなかったけど(笑) レニ・リーフェンシュタールのカリス・ファン・ハウテンが良かった。いつも白いシャツにパンツ姿のマニッシュないでたちで、ゲッベルスにも一歩も引かない強さと、ゲッベルスの失礼な発言を、和らげて通訳する気遣いが出来る賢い女性を好演していた。


ラリー・スナイダーのジェイソン・サダイキスも良かった。『モンスター上司』(感想はコチラ)の人だよね? 全然別人でビックリ。最初は自分の考えを押し付けるタイプのコーチなのかと思ったら、情が厚くきめ細やかなバックアップをしてくれる人だった。その辺りのさじ加減が絶妙で良かった。ジェシー・オーエンスのステファン・ジェイムスは目の美しさが印象的。かわいらしい顔立ちもあり、ジェシーの真面目で誠実な人柄に、かわいらしさが加わって、とっても魅力的だった。走る姿が美しかったけど、陸上経験者なのかしら? 訓練したのかしら?

 

原題の『RACE』というのは、競技のレースと人種のダブルミーニングなのでしょう。黒人アスリートが主役ということで、人種差別問題もテーマの一つではあるけれど、その辺りはしっかり描きつつ、あまりやり過ぎていないので、重くなり過ぎずに見ることが出来た。映像も良かった。前述したとおり、オリンピックのスタジアムの場面は圧巻だったし、1930年代の街並みも良かった。大学の職員室(?)のアールデコっぽい内装も素敵だった。

 

スポーツもの好きな方オススメ。ジェシー・オーエンスに興味のある方是非!

 

『栄光のランナー/1936ベルリン』Official site


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